株式会社トラジェクトリー
https://www.trajectory.jp/

ドローンなどの無人航空機の完全無人自律飛行を遠隔操作で実現するAI管制システム「トラジェクトリーエックス/TRJX」を開発するIT企業。
「誰もが空の恩恵を享受できる世界を実現する」というミッションを掲げ、特別な技術を持たない一般の方でもドローンを安全に効率的に飛ばせる社会の実現を目指している。

・東京本社
東京都中央区銀座2-4-1 銀楽ビルディング5階

・浜松オフィス
静岡県浜松市中区高林1丁目8-43(The Garage内)

株式会社トラジェクトリー 代表取締役社長 小関賢次(こせきけんじ)さん

1975年生まれ。新潟県出身。
1998年にNTTデータクリエイション株式会社(後に株式会社NTTデータアイに社名変更)に入社し、国土交通省の航空管制システム開発に18年間従事。航空機の軌道推定アルゴリズムを開発し、航空管制業務の自動化を大きく前進した実績を持つ。
ドローンやエアモビリティの社会実装を推進するため、2018年3月に株式会社トラジェクトリーを創業。

浜松市ってどんなところ?

▲「出世城」とも呼ばれる浜松市のシンボル「浜松城」。浜松市はスタートアップの成長にとって魅力的な環境を創出し、企業の「出世」を後押ししている。
▲「出世城」とも呼ばれる浜松市のシンボル「浜松城」。浜松市はスタートアップの成長にとって魅力的な環境を創出し、企業の「出世」を後押ししている。

まずは浜松市について、浜松市産業部 スタートアップ推進課 中田主任にお話を伺いました。


――浜松市について教えていただけますか。

浜松市は首都圏と関西圏のほぼ中間に位置し、都市部、平野部、沿岸部、中山間地域を有する国土縮図型の都市です。
本市及びその周辺地域は、世界で活躍する大企業であるスズキ、ヤマハ、ホンダ、浜松ホトニクスの創業の地であり、製造業が盛んです。現在では、輸送用機械器具や光・電子技術関連等の高度な技術が集積しています。また、第二次産業に従事する市民の割合は、政令指定都市の中で一位(33.5%、全国平均25%)です。

このように、首都圏と関西圏の中間に位置する地理的な利便性と、産業的な優位性、そして実証実験における汎用性(国土縮図型都市であるため、過疎地や繁華街など様々なフィールドでの実証実験、全国展開できるようなテーマでの実証実験ができる環境)を有しており、スタートアップの成長にとって魅力的な環境が備わっています。

近年は「浜松バレー構想」を掲げ、地域の高度なものづくり技術とスタートアップの革新的なアイデアによるイノベーションの創出に力を入れています。2020年には内閣府から世界で活躍するスタートアップを生み出すスタートアップ・エコシステムの拠点都市「グローバル拠点」に選定されました。


――現在、浜松市が抱える課題などはありますか?

本市の製造品出荷額は、過去は3兆円規模を誇っていました。しかし、リーマンショックの影響を受け、市内製造業の受注量が低迷し、約2兆円にまで減少しました。現在もなおその減少分は回復していません。

そこで、製造業の再興を図るため、市内企業のオープンイノベーションの支援や、製造業の中小企業が下請け構造から脱却し、企業独自の武器となる技術開発を支援しています。

また、地域の新たな活力やイノベーションの源となるスタートアップには大きな期待を持っており、多方面から支援を行っています。


――スタートアップに対して、具体的にどのような支援を行っていますか?

スタートアップの創出・誘致から、資金・情報の提供、市内企業とのマッチングや実証環境の提供など、あらゆる成長ステージに対応した多くの支援を行っています。

その中の一つの「ファンドサポート事業」では、市が認定したベンチャーキャピタル(以下、「VC」)による市内スタートアップへの投資に協調して、市が資金を交付しています。「浜松市内のスタートアップ企業に対する首都圏VCの投資が進まない」という課題から2019年に始まった事業です。
VCが市内のスタートアップに投資しやすくなること、市内スタートアップの資金調達手段を増やすことを目的としています。
また、資金面の支援だけでなく、成長ステージに合わせたメンタリングやセミナー、キーパーソンの紹介など、ハンズオン支援を2年間行っています。

過去2年間で13社に対して交付した実績があり、認定VCは41社(2021年8月現在)まで増加しています。
今後より一層、市内スタートアップの資金調達が促進されることを期待しています。


その他の主なスタートアップ支援
浜松アクセラレーター(市内ものづくり企業と全国のスタートアップの協業を創出)
Next Innovator育成事業(ビジネスプラン募集と、日本を代表する経験豊富なメンター陣によるメンタリング等の支援)
ベンチャー経営塾(グロービス経営大学院大学との連携による経営戦略等の講義)
実証実験サポート事業(実証実験プロジェクトの募集と、実証フィールドの斡旋やプロジェクト経費の支援等)
はままつ起業家カフェ(創業希望者への総合窓口)
はままつ首都圏ビジネス情報センター(首都圏における情報発信・企業誘致等の拠点)

【浜松市のスタートアップ支援情報はこちら】
浜松市ベンチャー企業進出・成長応援サイト「HAMACT!!」

【浜松市にサテライトオフィスを設置した企業の記事はこちら】
IPdash東京特許事務所
(株)おてつたび
(株)I’m beside you

浜松市にサテライトオフィスを開設した理由は、群を抜くスタートアップ支援

▲浜松市で実施したドローン飛行の実証実験
▲浜松市で実施したドローン飛行の実証実験

――浜松市にサテライトオフィスを開設した理由を教えてください。

弊社は、東京に本社を置き、ドローンの社会実装に向けて、ドローン運行管理システムの開発を行っています。
弊社のシステムにより、ドローンを遠隔地からリモートで操作することができますが、管制拠点が一箇所に集中すると発災時等に機能しなくなるリスクがあるため、日本全国に複数の拠点を作る構想があります。
北陸地方の石川県加賀市の次に、東海地方の拠点として選んだのが浜松市でした。

東海地方の中で浜松市を選んだ2つの決め手は、他の自治体に比べてスタートアップの取組に深い理解があること、そして、他の市町に比べて圧倒的に支援制度が充実していることです。

また、ドローンは中山間地域や過疎地での実証試験・導入事例が多い一方で、人や建物が多い都市部での導入が進んでいないことが課題となっています。
中田さんの話にあったとおり、浜松市は都市部や中山間地域を有する国土縮図型の都市であり、実証フィールドとして最適な場所であったことも、選定の要因となりました。

以上が浜松オフィスを開設した理由ですが、実は、2020年11月の浜松オフィス開設より前から浜松市と関わりがありました。

浜松市天竜区春野町(てんりゅうくはるのちょう)で実施されている「春野医療MaaSプロジェクト」に、2020年4月から参画していたんです。
本プロジェクトでは、モビリティと医療分野の連携による持続可能な地域医療サービスの環境整備を目的に、移動診療車を用いたオンライン診療及びオンライン服薬指導、医薬品配送の実証実験が行われています。弊社は、医薬品配送においてドローン運行の役割を担っています。
全国的にはまだ取組が進んでいないオンライン診療の実証実験に参画している縁があったことも、浜松市に決めた理由の一つです。


――スタートアップへの支援以外にどんなことが浜松市の魅力だと思いますか?

浜松市には起業家のコミュニティがあり、その活動が活発です。外部の人間が入ると嫌がられそうだと心配していましたが、私たちのような県外の人間でも優しく迎え入れてくれることは、大きな魅力だと思います。
起業家や企業が一緒に浜松を盛り上げようという雰囲気があって、交流の輪に入れてもらえたことはとてもありがたかったです。
さらに、そうした起業家が活動しやすいように、市がスピード感をもって応援してくれています。

加えて、日本を代表する大企業や、テック系の大手企業などが多いことも魅力のひとつだと思います。

また、地方と言えど大都市で生活の利便性が高いことや、弊社の技術を理解してもらうためには実際にドローンが飛ぶところを見てもらうことが重要な中で、関東や関西からアクセスが良く、人を呼びやすいということも魅力だと考えています。

サテライトオフィスがビジネスパートナーとの出会いの場に

――オフィスはどのように探しましたか?

浜松市に在住してリモートワークをしている社員がいたので、その社員のネットワークを活かして自分たちでコワーキングスペース等から探しました。
浜松市内にコワーキングスペース等はたくさんありますが、元々一緒に仕事をしていた仲間がいて、大企業も出入りしている「The Garage」への入居を、他の施設とあまり比較をすることもなく決めました。


――浜松オフィスの活用方法を教えてください。

現在は、社員2名が常駐しています。浜松市天竜区春野町における実証実験の準備を進めており、東京本社の社員と地元企業の打ち合わせの場としても活用しています。

また、コワーキングスペース内でドローンを修理することもあります。
実証実験は長期間に渡るため、近くに落ち着いて作業ができる場所があることは、非常に大きなメリットと考えています。
プロジェクトが立ち上がるごとに一時的な作業場やホテルを探していると制約が多く、何より、拠点があることで安心感も生まれます。

将来的に浜松市でドローンを定期運行することになった場合には、浜松オフィスを運行管理の拠点にすることを構想中です。


――“The Garage”では、入居者同士のコミュニケーションはありますか?

入居者同士のコミュニケーションは活発で、コミュニケーションの中から仕事の依頼に至ったことがあります。
そのきっかけは、「The Garage」内で行った弊社の打ち上げに、入居者の方々も参加してもらったことでした。
ちょうどその頃、システム開発ができる人を探しており、何気なく話したところ、偶然にもその場にエンジニアがいることが分かり、すぐに協力を依頼したんです。

交流が活発なコワーキングスペースだからこそ実現したことだと感じています。

サテライトオフィス開設による様々なメリットを実感

▲スタートアップ企業とファンドサポート事業交付先企業の協業をテーマとしたイベント
▲スタートアップ企業とファンドサポート事業交付先企業の協業をテーマとしたイベント

――行政からはどのようなサポートがありましたか?

浜松市のファンドサポート事業により、資金面のみならず、コンサルティングチームによる財務チェックなど、弊社の取組を丸ごと支援してもらっています。

ファンドサポート事業を受けている企業を対象とした浜松市主催の研修では、事業計画の作成方法や広報活動の手法など、様々なことを学べます。
私自身が参加するだけでなく、社員も積極的に参加させてもらっています。スタートアップにとって、研修の場を自分たちで用意することは難しいので、そういった機会を与えてくれるのはとてもありがたいですね。

なお、ファンドサポート事業の資金面の支援は、VCによるスタートアップへの投資に浜松市が協調して資金を交付する仕組みです。このため、通常の補助金とは異なり、事業実施前に資金支援を受けることができます。
事業展開において資金調達がハードルとなるスタートアップにとって、大変ありがたい制度だと感じました。このような支援制度は、浜松市が全国で初めて作ったと聞いています。


――コンサルティングチームがサポートをしてくれるのは非常に手厚いですね!そのほかにサテライトオフィスを開設したメリットは感じていますか?

採用活動を積極的に進められるというメリットを感じています。
最近は、東京から地方に戻って仕事をする人が増えており、地方の中でも生活の利便性が高い浜松市は、優秀な人材が多く集まっています。そのような人材に積極的にアクセスできるのはメリットの一つだと思いますね。

また、採用活動に当たって大学等との連携の話が出ていますが、弊社の手が回っていないため、インターン採用はまだ行えていません。いずれは、官民学の連携等を行いたいと考えています。

ちなみに、採用面接の場としても「The Garage」を活用しています。拠点がないと毎回場所を探す手間が生じますし、面接を受ける方に「この場所にいる」という安心感を示すことができるメリットがあると思います。

その他には、自治体との関係性が地域貢献につながったことがありました。

2021年7月に静岡県熱海市で土砂災害が発生したことは、まだ記憶に新しいかと思います。
尊い命が失われただけでなく、住宅にも甚大な被害が出ましたが、現場に立ち入ることができる状況になく、被災状況の確認が遅れていました。
そのような中で、熱海市で災害対応のサポートにあたっていた浜松市職員が弊社のことを紹介したところ、「ドローンを活用して住宅の罹災証明を行ってほしい」と依頼を受けました。

被災した住民の生活再建に弊社が微力ながらお役に立てたと感じていますし、ドローンによる罹災証明は全国初の事例で、ドローン業界にとって大きな事例になったと感じています。

サテライトオフィス開設によってチャンスは5倍、10倍に!居場所作りの感覚で気構えずに踏み出してみよう!

▲入居する「The Garage」でのイベントの様子
▲入居する「The Garage」でのイベントの様子

――最後に、サテライトオフィス開設を検討している企業へのメッセージをお願いします

サテライトオフィスを作ると、事業拡大に伴ったやりづらさが生じてしまうのではと考える経営者がいるかもしれません。

しかし、サテライトオフィスをハブにして、新たなネットワークや研修・事業の機会を得られます。
私個人としては、サテライトオフィスを開設することで、一箇所に留まっているよりも5倍から10倍のチャンスが生まれるのではないかと考えています。

また、スタートアップは、会社の認知度を上げるために費用をかけた広告はできません。
サテライトオフィス開設自体が、結果的に会社の認知度向上にもつながります。

サテライトオフィス開設は、会社の本気度や覚悟を地域に示すメッセージになります。
一方で、浜松市のような地域では、よそ者だと身構えずに、温かく迎え入れてくれます。
コワーキングスペース等に入居するのであれば、それほど費用は掛かりません。
まずは、その地域における自分たちの居場所作りの感覚で、サテライトオフィス開設を検討してはいかかでしょうか。

今回サテライトオフィスを設置した“The Garage”はこちら

▲人数や用途に合わせて、さまざまな利用が可能なミーティングルーム
▲人数や用途に合わせて、さまざまな利用が可能なミーティングルーム

2019年7月にオープンした“The Garage”は、新しい社会を創るリーダーが集まるオフィスです。“地域のリーダーが集う、第三のコミュニティ”をコンセプトに掲げ、学生やスタートアップ企業をはじめ行政・専門家など幅広い世代と共に、それぞれの場所でイノベーションを起こすことを目指しています。

スタートアップ向けの支援制度も充実。ヒアリングを元にその企業に合ったメンターによるサポート制度があり、安心して入居することができます。

▲気分に合わせて作業をしたり、読書を楽しむことができる。
▲気分に合わせて作業をしたり、読書を楽しむことができる。

オフィスは、天井が高く2階建てのガレージ仕様です。1階はミーティングスペース、フリースペース、固定席があり、キャンピングテントも常設。高い天井による開放感と遊び心が詰まったリラックス空間は、利用者同士の会話やコミュニケーションを充実させます。

2階はプロジェクトルームやオープンスペースを完備。専有利用することもできるので、その日の気分や人数、イベントに合わせたアレンジが可能です。


所在地:〒430-0907 静岡県浜松市中区高林1丁目8-43
営業時間:8:00〜21:00 
定休日:不定休
アクセス:遠州鉄道「助信駅」から徒歩約9分(700m)
公式HP:https://the-garage-for-startups.jp/


《ライター・小町ヒロキ》