「株式会社おてつたび」
“お手伝い”と“旅”を掛け合わせた「おてつたび」は、お手伝いを通して地域と若者を繋ぎ、地域の農家や施設の人手不足の解消と地域の新たな“ファン”(関係人口)創出を目指すサービス。日本各地の魅力的な地域へ訪れる人が増えて欲しいという想いが込められており、大学生をはじめ、地方に興味のある若者から多くの注目を集めている。

※「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指す。(出典:総務省「関係人口ポータルサイト」)

・東京本社
【所在地】〒151-0053
東京都渋谷区代々木3丁目31−12
・静岡オフィス
【所在地】〒430-0907 静岡県浜松市中区高林1丁目8-43(The Garage内)

株式会社おてつたび代表取締役CEO 永岡 里菜(ながおか りな)さん

1990年生まれ。三重県尾鷲市(おわせし)出身。千葉大学卒業後、PR・プロモーションイベント企画制作会社勤務、農林水産省との和食推進事業の立ち上げを経て、独立。
自分の出身地のような一見何もなさそうに見えてしまう地域に人がくる仕組みを創りたいと思い、2018年7月に株式会社おてつたびを創業。「誰かにとっての“特別な地域"を創出する」をミッションに、短期的・季節的な人手不足で困る地域の農家や旅館と、「色々な地域へ行きたい!」と思う若者が出会えるweb上のマッチングプラットフォーム“おてつたび(お手伝い×旅)”を運営中。

【株式会社おてつたびの詳細はこちら】

多方面からスタートアップ支援に取り組む浜松市

まずは浜松市について、浜松市産業部 スタートアップ推進課 中田主任にお話を伺いました。

--浜松市について教えていただけますか?

浜松市は首都圏と関西圏のほぼ中間に位置し、都市部、平野部、沿岸部、中山間地域を有する国土縮図型の都市です。人口約80万人を擁する本市は2007年4月に政令指定都市へ移行。「市民協働で築く『未来へかがやく創造都市・浜松』」を都市の将来像に掲げ持続的に発展するまちづくりを目指しています。

本市およびその周辺地域は世界で活躍する大企業であるスズキ、ヤマハ、ホンダ、浜松ホトニクスの創業の地でもあり製造業が盛んです。現在では輸送用機器器具や光・電子技術関連等の高度な技術が集積しています。また、第二次産業に従事する市民の割合も政令都市の中で一位(33.5%、全国平均25%)です。

このように、首都圏と関西圏の中間に位置する地理的な利便性と、産業的な優位性、そして実証実験における利便性(国土縮図型都市であるため、過疎地や繁華街など様々なフィールドでの実証実験、全国展開できるようなテーマでの実証実験ができる環境)、そしてスタートアップの成長にとって魅力的な環境が備わっています。

近年は「浜松バレー構想」を掲げ、地域の高度なものづくり技術とスタートアップの革新的なアイデアによるイノベーションの創出に力を入れています。2020年には内閣府から世界で活躍するスタートアップを生み出すスタートアップ・エコシステムの拠点都市「グローバル拠点」に選定されました。


--サテライトオフィスの開設に関する支援制度やサポート体制はどのようなものがありますか?

2つご紹介させていただきます。
1つ目が「サテライトオフィス整備・運営事業」です。
こちらは浜松市内でスタートアップをはじめとする企業が利用できるオフィス「はままつトライアルオフィス」「舞坂サテライトオフィス」「天竜トライアルオフィス」を運営するものです。はままつトライアルオフィスでは、ピッチ大会(Night PITCH)や勉強会、交流会を開催しています。

2つ目が「浜松市ベンチャー企業等進出支援事業費補助金」です。
浜松市に新しく進出するスタートアップを対象に、浜松市でオフィスを開設する際の建物賃借料、コワーキング利用料を最大36ヵ月間補助します。(補助率2分の1、補助上限額5万円/月)
その他にも、浜松市の都心で新たに事務所等を開設する企業に対し、オフィスを開設する際の建物賃借料等の補助(最大36ヵ月間補助、補助率2分の1、補助上限額360万円)や、試作開発、新製品開発等に取り組むスタートアップを対象に浜松イノベーションキューブの入居賃料を最大5年間補助(補助率3分の2、入居4年目以降は、2分の1)する制度もあります。

【浜松市のスタートアップ支援情報】
HAMACT!!

はままつトライアルオフィスはこちら
舞浜サテライトオフィスはこちら
天竜トライアルオフィスはこちら


【その他浜松市にサテライトオフィスを開設した事例記事はコチラ】
IPdash東京特許事務所
株式会社I’m beside you
株式会社トラジェクトリー

【浜松市の紹介ページはこちら】

サテライトオフィス開設の決め手は、浜松市のベンチャーファーストな目線と熱量

▲浜松市にあるサテライトオフィス「The Garage」の内観
▲浜松市にあるサテライトオフィス「The Garage」の内観

続いて、浜松市にサテライトオフィスを設置した株式会社おてつたび代表取締役CEO 永岡 里菜さんにお話しを伺いました。

--「おてつたび」のサービスについて教えて下さい。
「おてつたび」は、“お手伝い”と“旅”を掛け合わせた造語で、日本各地の魅力的な地域へ訪れる人が増えて欲しい想いから生まれたサービスです。「短期的・季節的な人手不足で困る地域の方」と「知らない地域へ行きたい地域外の若者」をマッチングするweb上のプラットフォームを運営しています。

「おてつたび」は、もっと多くの人が日本各地に気軽に出かけて地域に入り込み、地域の魅力を知るキッカケを作ります。そしてお手伝いすることにより報酬を得られるため、リーズナブルに旅を楽しむができます。さらには、お手伝いを通じて、地域の方々と深い関係性ができるので再び同じ地域へ訪れる方も多いんです。このように地域と若者を繋ぎ、農家や施設の人手不足の解消と地域の新たな“ファン”(関係人口)を生み出すのが「おてつたび」の魅力です。


--以前から、サテライトオフィスの設置を検討していたのですか?

弊社は東京に本社を置いていますが、その狙いは、「地域での活動」を求めている多くの若者とつながり、コミュニティーを形成するためです。ただ、地域と関わる会社ですので、会社設立当初から「地方にも拠点を置きたい」と思っていましたので、浜松市にサテライトオフィス設置したことよって、より良いサービスが提供できると期待しています。


--サテライトオフィスを浜松市に設置した理由を教えて下さい。

「おてつたび」は、観光業・一次産業のみなさまとご一緒するサービスですので、浜松市はその両方が栄えている点と、私たちの「日本各地にある本当にいい人、いいもの、いい地域がしっかり評価される世界を創る」というビジョンが一致したからです。

特に1番の決め手は、浜松市の担当者の方々の熱量で、今後の進め方などを相談した際「同じ目線・熱量」で寄り添ってくださりました。私たちベンチャー企業の限られたリソースをご理解いただいたうえで、親身に提案していただけたので、「ベンチャーファーストな方々だな」と思いました。


--永岡さんが思う「浜松市の良さ」を教えていただけますか。

東京、名古屋へのアクセスがしやすいところや、農業が盛んなところです。
また、一次産業と観光業を中心に据えながら、ものづくりも有名で、様々な魅力が詰まった地域だと思います。

地域の協力があってはじまる「おてつたび」今後は地方人材の採用に期待

▲「おてつたび」を利用し、地域で農業体験をする様子
▲「おてつたび」を利用し、地域で農業体験をする様子

--サテライトオフィスはどのように活用していますか?

「おてつたび」は、地域の観光業・一次産業の事業者さんを直接ご利用いただくサービスですので、受入れ先があって初めて成り立ちます。

サテライトオフィスは事業者さんへの挨拶や、サービス説明を行う際の拠点として活用しています。

現状は地域の方々との信頼関係を構築するにあたり、担当者が1人で伺っています。コロナ禍でもあり、なかなか足を運べずもどかしい気持ちがあるのは事実ですが、サテライトオフィスを活用して担当以外の社員も現地に出向く機会を積極的に作っていきたいですね。

まだ弊社の規模だと難しいですが、優秀な人材は東京以外にもいらっしゃると思うので、今後は地方の優秀な方も採用できると良いなと考えています。

サテライトオフィスが地域との共創を生み出す「ハブ」に

▲サテライトオフィスのオープンスペースは、ビジネスの交流の場にもなっている
▲サテライトオフィスのオープンスペースは、ビジネスの交流の場にもなっている

--サテライトオフィスはどのように探しましたか?

浜松市からの紹介や、静岡や浜松にゆかりのある方々に相談したりしました。多くの方から「The Garage」の名前が挙がったこともあり、安心して入居を決めました。
「The Garage」は新型コロナウィルスの影響で現地へ行きづらい状況の中、クラウドサイン(※)等のオンライン契約に対応していたので助かりました。

(※)契約作業をインターネット上で行う電子契約サービスのこと。


--行政側からのサポートはあったのでしょうか。

浜松市には弊社の地域に根ざした事業内容を理解したうえで、地域との関係を構築しやすいオフィスを紹介していただけました。

地域の新規受け入れ先の開拓をするうえで、東京に本社を置く私たちにとっては、地域と繋がるための「ハブ」となる存在が重要です。
その点「The Garage」は地元の税理士法人が施設を運営しているので、地域との結びつきも強く、大変助かっています。

実は契約前に代表の方が「事業内容を知りたい」とわざわざ時間を作って、お互いに「何ができるか」を検討してくださったんです。
その中で「一緒に共創していきたい」との想いを聞いたときは本当に感動しました。
素敵なオフィスに入居できてよかったと感じています。

サテライトオフィスを通じてつながる「ご縁」

▲浜松市第1号のおてつたび先となった”365BASE outdoor hostel”さん
▲浜松市第1号のおてつたび先となった”365BASE outdoor hostel”さん

--サテライトオフィスを開設したメリットはありましたか?

サテライトオフィスがあることで、新たなご縁が生まれることです。
名刺やホームページにサテライトオフィスを記載すると、様々な場面で接点のある方をご紹介いただけます。

また、サテライトオフィスの入居者同士のつながりから新たな事業が生まれることもあります。例えば、浜松市で第1号のおてつたび先(受入れ先)になってくださった宿泊施設の365BASE outdoor hostelさんとのご縁をつないでくださったのが、まさにオフィスの入居者の方の紹介だったんです。


--最後に、サテライトオフィスを検討している企業へ向けてメッセージをお願いします。

サテライトオフィスを検討する際には、自社の事業と地域との相性を検討したうえで決めることが大切です。その上で同じ思いを持ち、地域と企業の「ハブ」になっていただけるような人材がいる場所が良いのではないかと思います。

浜松市はスタートアップの誘致に力を入れており、市長さんをはじめ応援していただける方がたくさんいらっしゃいます。サテライトオフィスを検討している企業さんに、是非おすすめしたいです。

(株)おてつたびがサテライトオフィスを設置した「The Garage」はこちら

▲人数や用途に合わせて、さまざまな利用が可能なミーティングルーム
▲人数や用途に合わせて、さまざまな利用が可能なミーティングルーム

2019年7月にオープンした「The Garage」は、新しい社会を創るリーダーが集まるオフィスです。“地域のリーダーが集う、第三のコミュニティ”をコンセプトに掲げ、学生やスタートアップ企業をはじめ行政・専門家など幅広い世代と共に、それぞれの場所でイノベーションを起こすことを目指しています。

スタートアップ向けの支援制度も充実。ヒアリングを元にその企業に合ったメンターによるサポート制度があり、安心して入居することができます。

▲気分に合わせて作業をしたり、読書を楽しむことができる。
▲気分に合わせて作業をしたり、読書を楽しむことができる。

オフィスは、天井が高く2階建てのガレージ仕様です。1階はミーティングスペース、フリースペース、固定席があり、キャンピングテントも常設。高い天井による開放感と遊び心が詰まったリラックス空間は、利用者同士の会話やコミュニケーションも充実させます。

2階はプロジェクトルームやオープンスペースを完備。専有利用することもできるので、その日の気分や人数、イベントに合わせたアレンジが可能です。
The Garage for startups
所在地:〒430-0907 静岡県浜松市中区高林1丁目8-43
営業時間: 8:00〜21:00 
定休日: 不定休
最寄り駅:助信駅
アクセス:遠州鉄道「助信駅」より徒歩約9分(700m)

【The Garage for startupの詳細はこちら】

《ライター:城谷俊太》