「株式会社I’m beside you」
“社会全体を学校にする”をビジョンに、動画解析AIで人の特徴を捉え、より良いコミュニケーションを創り出し、ウェルビーイング(心身ともに良好で、幸福な状態にあること)を促進するスタートアップ企業。(株)NTTデータ出身の3人で起業し、現在はインド工科大学出身のトップ人材が開発を担当。自社開発した技術109件を国際特許に出願。そのサービスは教育、ヒューマンリソース(人材活用)、メンタルヘルスなど多岐にわたり、コロナ禍以降の社会の新たなインフラとして多くの大手企業に導入。アジア圏の事業コンテストで優勝するなど、世界でも高い評価を受けている。

・東京本社
【所在地】東京都世田谷区成城2丁目34-2 301
・静岡サテライトオフィス
【所在地】静岡県浜松市中区板屋町102-15(Dexi itaya(デクシィ板屋)内)

(株)I’m beside you代表取締役社長 神谷 渉三(かみや しょうぞう)さん

神戸大学経済学部卒業後、(株)NTTデータに入社。新規事業、デジタルトランスフォーメーション推進事業などに従事する。日本の公教育への課題意識から、2017年に多様な大人と多感な子どもをつなげる教育プラットフォーム「Nei-Kid」を設立し、経済産業省起業家育成プログラム「始動」の2017年シリコンバレーメンバーに選抜、2018年には優秀賞を受賞。小中高生向けオンライン起業家教育「TimeLeap Academy」創業メンバー。2020年6月(株)I’m beside youを創業。大企業に所属する若手・中堅社員有志の社会変革挑戦を支援するプログラム「CHANGE」の講師・メンターも務める。

【(株)I’mbesideyouの詳細はコチラ https://www.imbesideyou.com/ 】

多方面からスタートアップ支援に取り組む浜松市

▲浜松市最大のイベント「浜松まつり」の見どころ「凧揚げ合戦」の様子
▲浜松市最大のイベント「浜松まつり」の見どころ「凧揚げ合戦」の様子

まずは浜松市について、浜松市産業部 スタートアップ推進課 中田主任にお話を伺いました。

--浜松市について教えていただけますか。

浜松市は首都圏と関西圏のほぼ中間に位置し、都市部、平野部、沿岸部、中山間地域を有する国土縮図型の都市です。人口約80万人を擁する本市は2007年4月に政令指定都市へ移行し、「市民協働で築く『未来へかがやく創造都市・浜松』」を都市の将来像に掲げ、持続的に発展するまちづくりを目指しています。

本市およびその周辺地域は世界で活躍する大企業であるスズキ、ヤマハ、ホンダ、浜松ホトニクスの創業の地でもあり製造業が盛んです。現在では輸送用機器器具や光・電子技術関連等の高度な技術が集積しています。また、第二次産業に従事する市民の割合も政令都市の中で一位(33.5%、全国平均25%)です。

このように、首都圏と関西圏の中間に位置する地理的な利便性と、産業的な優位性、そして実証実験における利便性(国土縮図型都市であるため、過疎地や繁華街など様々なフィールドでの実証実験、全国展開できるようなテーマでの実証実験ができる環境)を有しており、スタートアップの成長にとって魅力的な環境が備わっています。

近年は「浜松バレー構想」を掲げ、地域の高度なものづくり技術とスタートアップの革新的なアイデアによるイノベーションの創出に力を入れています。2020年には内閣府から世界で活躍するスタートアップを生み出すスタートアップ・エコシステムの拠点都市「グローバル拠点」に選定されました。


--企業誘致や企業支援で取り組んでいることはありますか?

当市では、スタートアップの創出・誘致から資金・情報の提供を通じた成長支援及び市内企業とのマッチング等や実証環境の提供など、あらゆるステージのスタートアップのニーズに対応するべく、多くの関連事業を行っています。ここでは代表的な事業を紹介します。

▶Next Innovator育成事業―スタートアップの創出
起業を目指す人材や、ビジネスの成長を目指すスタートアップ経営者、企業内で新事業展開を目指す人材を対象にビジネスプランを募集し、経験豊富なメンター陣によるメンタリングや様々な起業支援メニューを通じて、グローバルに活躍する次世代の事業家を育成します。

▶ファンドサポート事業―スタートアップの成長支援
ファンドサポート事業は、「浜松市内のスタートアップ企業に首都圏のベンチャーキャピタル(以下VC)からの投資が進まない」という課題から2019年に始まりました。市が認定したVCによる市内スタートアップへの投資に対し、市が協調して交付金を付与することで、VCが市内のスタートアップに投資しやすくし、市内スタートアップにとって資金調達手段を増やすことを目的に実施しています。交付金の上限は、健康・医療分野は7,000万円それ以外は5,000万円です。

実績としては、過去2年間で13社に対し交付しました。また、認定VCも、2019年度の制度開始から現時点では41社(2021年8月現在)まで増加しており、今後、地域企業の資金調達が促進されることを期待しています。

ファンドサポート事業についてはこちら

▶その他
・ベンチャー経営塾(グロービス経営大学院大学との連携により経営戦略等の講義を実施)
・実証実験サポート事業
・はままつ起業家カフェ運営事業(創業希望者への総合窓口)
・首都圏ビジネス情報センター運営事業

浜松市のスタートアップ支援情報はこちら


【その他浜松市にサテライトオフィスを設置した企業の記事はこちら】
IPdash東京特許事務所
(株)おてつたび
株式会社トラジェクトリー

【浜松市の紹介ページはこちら】

わが子が抱えていた悩みから起業を決意

▲AI解析を活用したコミュニケーションサポートをサービスとして提供している
▲AI解析を活用したコミュニケーションサポートをサービスとして提供している

続いて、浜松市にサテライトオフィスを設置した、I’m beside you代表取締役社長 神谷渉三さんにお話を伺います。

--まずは、浜松市にサテライトオフィスを設けることを決めた経緯について教えていただけますか。

浜松市とのつながりは、2017年に経済産業省の「始動」という人材育成プログラムに参加した際に、浜松市の起業家の方々が多く参加されており、そこで意気投合したのがきっかけです。

2020年の年末にその仲間で、オンライン忘年会を開催したのですが、そこで浜松市へのサテライトオフィス開設を条件に応募ができる「浜松市ファンドサポート事業」の存在を知りました。

教育向けサービスを通じて新たな事業を考えていた弊社にとって、国内でもトップクラスのサポート環境が整っている浜松市で是非とも挑戦したいと思い、サテライトオフィス設置を決めました。また、仲間が熱心に「絶対応募した方がいいよ!浜松においでよ!」と誘ってくれたことも大きかったです。

その後、浜松市ファンドサポート事業において弊社が応募・提案した「ウェルビーイング促進のための動画解析AIによる市民のメンタルヘルス状況観察」という事業が採択されました。
このことで浜松市で取り組む事業ができ、サテライトオフィスの開設へと繋がっていきました。


--この事業は、オンラインコミュニケーション時の表情や音声の変化をAIで解析し、メンタルヘルスの早期改善につなげるのが目的とのことですが、このアイデアはどのようにして生まれたのですか?

市の支援事業として市民の方にサービスを提供することを考えると、学校や高齢者といった特定の層に向けてではなく、インフラとして全体に寄与するサービスである必要があります。

浜松市は健康寿命No.1の政令指定都市なので、そこをもっとアピールできるといい」ということを、起業家の仲間から聞いていました。そこで、健康の中でも万人共通の「メンタルヘルス」をテーマとすることに決めました。

また、浜松市は「浜松から世界へ」を掲げていますから、世界に通用するサービスに拡大できるかも重要なポイントでした。その点、市民の精神面での健康維持は、全世界に共通する課題です。メンタルヘルスは、個人に寄り添うAI動画解析の強みも活かせる最適なテーマなんです。


--御社の強みはAI動画解析とのことですが、なぜその分野で起業しようと考えたのですか?

実は、起業のきっかけは息子なんです。
息子は、日本の公立の小・中学校での画一的な環境に押し込まれることに対して疑問を持っていました。「なんで同じ時間、同じ場所で、同じように座って、同じことをするんだろう」と言うんです。ごもっともですよね(笑)

この課題は学校教育を変えるだけでは解決できません。
一人ひとりをきちんと見て、個性を認めることで、幸福感をみんなが得られる社会にする必要があります。
そこで私は「社会全体を学校にする」というビジョンを掲げ、AI動画解析などの最先端テクノロジーにより、その人に合ったコミュニケーションやサポートができるサービスをつくろうと思い起業しました。

--息子さんの疑問に応えて起業されたなんて素敵ですね。現在、AI動画解析はどのような分野に展開されているのですか?

メンタルヘルス・教育・ヒューマンリソース・営業など幅広い分野で展開しています。
各サービスでは、健康な心理状態で働くことができているのか、リラックスして学べているのか、より良く生きられる職場や組織・環境はないのかなど、さまざまな観点でフォローアップしています。
ただ、大事にしていることは一貫していて、すべての世代・全ての環境の人に向けて「一人ひとりに合った、より良いコミュニケーションやつながり合える環境づくりをサポートすること」なんです。
どのサービスでも、一人ひとりが心理的安全性を持ち、追い詰められずに物事に取り組める環境をどうやって作り出すか、それを追求しています。

日本で随一のスタートアップ支援環境!風土・産官学連携・ファンド・すべてが揃う浜松市

▲オンラインコミュニケーション時の表情や発言した音声の変化などを継続的に取得することで、メンタルヘルスの早期改善につなげることを目指す
▲オンラインコミュニケーション時の表情や発言した音声の変化などを継続的に取得することで、メンタルヘルスの早期改善につなげることを目指す

--浜松市での事業は順調に進んでいますか?

はい、浜松市はとても事業を進めやすい環境だと感じています。市から浜松医科大学精神科医の山末(やますえ)先生をご紹介いただき、協働で事業を進めています。先生は「動画を音声解析して自閉症を検知できないか」という臨床・実証実験に取り組んでいた方で、豊富な知見と動画・診断データをお持ちでした。

しかし、音声だけの解析では思うような結果が得られなかったのだそうです。そこで、私たちの技術で、表情などの映像からの情報解析も加えたところ、非常に高い検証結果を出すことができるようになりました。


--山末先生の取組と、御社のAI動画解析技術により事業が前進したのですね。

はい。先生は「一人ひとりをどうやって救うか」ということを純粋に思い、志を持っていらっしゃいます。こうした方がいたからこそ、事業は前進しました。山末先生をはじめ、浜松医科大学の先生方には本当に感謝していますし、市のサポートのおかげで、こうした協業体制が築けていることは本当にありがたいです。


--浜松市の行政サポートも実感されているんですね。

もちろんです。スタートアップに対して上限7,000万円ものご支援をいただける事業は国内では他に例がなく、間違いなく日本随一です。しかも、行政の方々全体がスタートアップへの深い理解をお持ちなのでコミュニケーションがスムーズです。

浜松市自体がスタートアップであるかのように、新しいことに挑戦するカルチャーを持っているんです。ファンドサポート事業や実証実験の支援、起業家育成プログラムへの応募奨励といった取り組みを継続・拡大されています。

だからこそ、実証実験のフィールドが用意でき、浜松医科大学などのアカデミックな機関とも連携可能で、専門のベンチャーキャピタルを巻き込んだ大規模なファンドサポートまで用意してくださる。しかも地方だけで進めず、東京に本社を置く私たちのような会社も偏見なく採択し、エコシステムを拡大し続けています。起業家の方に、浜松市は間違いなくおすすめできますよ。

サテライトオフィスはそのコミュニティにいる人たちとの"ゆるいつながり"を生む場になる

▲(株)I’m beside youが浜松市の拠点として入居しているシェアオフィスDexi板屋店
▲(株)I’m beside youが浜松市の拠点として入居しているシェアオフィスDexi板屋店

--サテライトオフィスはどのように選びましたか?

浜松市の起業家仲間から、おすすめのコワーキングスペースを教えてもらいました。重視したのは、浜松市のスタートアップのコミュニティとつながることができるかどうかです。

その観点で推薦されたのが「FUSE」さんと「Dexi」さんです。この2つの施設はそれぞれ独自の入居者コミュニティを持っています。更にどちらか一方に入居していれば、もう一方のコミュニティとも交流が図れるという点に安心感がありました。

コミュニティ面では両者差がないことがわかったので迷いましたが、最終的に弊社は「Dexi」さんに入居しました。


--サテライトオフィスはどのような役割を果たしていますか?

私たちはフルリモート経営なので、東京の本社オフィスも頻繁に利用しているわけではありません。

浜松市のサテライトオフィスは月に数回、現地を訪れた際に浜松の方々と交流する場所として使おうと考えていました。コロナ禍で思うように通えていませんが、実際に現地に伺った際には迎えてくださった方とランチをご一緒したりして交流を図っています。

新しいことをするときには起業家同士のつながりが大事なので、Dexiのオーナーさんからの「そこにいる○○さんは、この間こんなことしていたよ」という情報は大変ありがたいです。最近では、コミュニティ内で企画されたオンラインイベントに登壇させてもらうなどして、さらにつながりが増えています。

サテライトオフィスを持つことで、志あるスタートアップが集う浜松コミュニティに入れる

▲2020年12月ビヨンドネクストベンチャーズから最初の資金調達を実施。(写真:左から、伊藤毅氏(Beyond Next Ventures代表)、神谷渉三氏(I'm beside you CEO)、能勢康宏氏(同CTO)、安藤高太朗氏(同CSO)、中畑稔氏(同CIPO))
▲2020年12月ビヨンドネクストベンチャーズから最初の資金調達を実施。(写真:左から、伊藤毅氏(Beyond Next Ventures代表)、神谷渉三氏(I'm beside you CEO)、能勢康宏氏(同CTO)、安藤高太朗氏(同CSO)、中畑稔氏(同CIPO))

--浜松市にサテライトオフィスを持つメリットはどのような点にありますか?

やはり、浜松コミュニティのネットワークの中にいられることです。
「こんなことやりたいんだけど、浜松の誰に声をかけたらいいの?」と聞けば「それならあの人がいいよ!」と教えてもらえるし、「面識がないからメッセンジャーでつないでもらえませんか?」とお願いもできます。

それに、スタートアップには経営してみないとわからない困難があるんですよ。大企業では発生しないような事業存続の緊急事態が起こりうるんです。でもそうした渦中にありながら、細かな説明をせずとも理解してもらえて「大変だね、それならちょっとこちらでやっておくよ」と、言わずもがなで支え合える関係があることは本当にありがたいです。

目的がない状態で仲良くなって互いを分かり合う「ゆるいつながり」を持っておくと、いざという時に助け合える関係になります。そういう存在を感じることは、スタートアップを経営する上でメンタルの安定につながります。

浜松市を日本・世界の地方都市の課題を解決する最初の”センターピン”にする

▲インドでは知らない人がいない教育の権威、アナンド・クマール氏との協業に合意(写真:左からI'm beside you代表取締役社長 神谷渉三氏、アナンド・クマール氏、Amegumi India代表 福岡洸太郎氏)
▲インドでは知らない人がいない教育の権威、アナンド・クマール氏との協業に合意(写真:左からI'm beside you代表取締役社長 神谷渉三氏、アナンド・クマール氏、Amegumi India代表 福岡洸太郎氏)

--今後の事業はどのように展開していく予定ですか?

今後は市民の方々に実証実験として弊社のアプリケーションを体感いただく予定です。
皆さん日常でオンラインミーティングなどをすると思うのですが、今回の実証実験ではその映像を通して個人のメンタルヘルスを見守ります。メンタル面での不調などをいち早く検知できれば、早期予防や早期治療につなげることが可能です。

この実証実験で得られた解析結果が、市民の皆さんの生活を支えるサービスとして役立つのか、「使用してどんな気持ちになったか」などのフィードバックをもらい、丁寧に対話をしながらサービスをブラッシュアップしていく予定です。

これはこれまでにない、全く新しい取組と言えるでしょう。

それだけにどうやって普及・習慣化していくかがカギになります。市民の方々の幸せを生み出すために、そのヒントを今回の実証実験で掴みたいと考えています。

弊社はソフトウェアを実装する技術力にかけては世界最高峰である自負がありますし、「これをすればいい」という形さえ見えたら、革命的なプロダクトを生み出せるはずです。


--最後に、どんな企業が浜松市でサテライトオフィスを持つべきでしょうか。新たに開設を検討されている方へのメッセージをお願いします。

私は浜松市を、日本・世界の地方都市の課題を解決していくのに最初の照準となる市、言ってみればボウリングの“センターピン”になる場所だと考えています。
浜松市のスタートアップ支援は日本随一で、これだけの条件はまず揃いません。他の自治体では苦労して事が進まないことも、浜松市でなら違います。

最も環境の整った浜松市で、市民をハッピーにする最初の成功事例をつくり、そこから日本全国・世界各地へとサービスを広げていくんです。浜松市だけの課題解決を狙うのではなく、日本や世界を良くしていくソリューションを作る。そういう志のある起業家の方は、迷わず浜松を選ぶべきです。

(株)I’m beside youがサテライトオフィスを開設した「Dexi(デクシィ)」はこちら

▲ドロップインスペースは打ち合わせにも利用可能。板屋店は浜松駅から徒歩5分の好立地
▲ドロップインスペースは打ち合わせにも利用可能。板屋店は浜松駅から徒歩5分の好立地

Dexi」はオフィスデザイン会社が運営するシェアオフィスです。集った起業家・経営者・フリーランスの方々の声で、オフィスの使い心地は日々改善されています。

特徴はなんといっても365日24時間営業でいつでも使えること。朝でも夜でも自由に使えます。板屋店は駅が至近で、都心部からアクセスするにも便利です。東京から夜に浜松に到着し、夜間に現地の方とミーティングすることも可能です。

4部屋の個室シェアオフィス、365日24時間使えるフリー席利用、ドロップインの時間利用のほか、オフィスを利用しない場合でも住所・登記利用ができるバーチャルオフィスプランもあります。

運 営:株式会社デクシィ
所在地:〒430-0928 静岡県浜松市中区板屋町102-15
電 話:053-412-0001
メール:info@dexi.jp
アクセス:浜松駅から徒歩5分、第一通り駅から徒歩1分

公式HP:​​https://office.dexi.jp/share-office-itaya

《ライター・北原 泰幸》