ローカルなつながりで新たなサービスを生む (株)casaliz流サテライトオフィス活用戦略
動画をチェック!
株式会社casaliz(カサリス)
https://casaliz.co.jp/
2017年に東京で創業し、2021年の静岡県沼津市でのオフィス開設に伴い本店移転したソフトウェア開発会社。
これまで建築設計施工(BIM)に関わるソフトウェア、画像認識を用いた店舗分析システム、無人店舗システムなど、広い意味で「空間」に関わるサービスを幅広く開発。
昨今は、英語学習や接客研修などに対応した、VR(バーチャルリアリティ)を活用した人材トレーニングサービス「ナナコロ」を開発。静岡県内において、店舗スタッフの接客トレーニングでの展開を沼津市内飲食チェーン店と、社員の英語学習トレーニングの展開を海外に拠点を持つ企業と、それぞれ進めている。
沼津オフィス
静岡県沼津市高島町15-5 ぬましんCOMPASS 2F
東京オフィス
東京都品川区大井2−8−15
株式会社casaliz 代表取締役 山本直弥(やまもとなおや)さん
静岡県島田市出身。沼津工業高等専門学校(以下、「沼津高専」)を卒業後、イギリスのオックスフォードに1年留学。帰国後、千葉大学工学部に編入し、建築学を学ぶ。
2016年の卒業後に、1年かけて世界中を放浪。旅の最後にイギリスに立ち寄り、留学時の友人であるアレックス氏に起業の意思を伝えたところ意気投合し、帰国後に株式会社casalizを創業。
ものづくりが好きで、建築用のロボット開発など様々な事業にチャレンジするものの、収益化の壁を前に幾度もの開発頓挫を経験。そうした苦難を乗り越え、現在はVR事業を中心とした斬新なサービスの開発・普及に注力している。
工業が盛んで、静岡県内唯一の高等専門学校が所在する沼津市!IT×地元産業×若い力に期待
まずは沼津市(ぬまづし)について、沼津市産業戦略推進室 菊地(きくち)副主任にお話を伺いました。
――沼津市はどんな所ですか?
沼津市は静岡県東部地域の商都として発展してきました。
北には富士山・愛鷹山(あしたかやま)から続く丘陵地帯、中央には中心市街地を滔々と流れる狩野川(かのがわ)、南には日本一深い駿河湾(するがわん)が織りなす約63kmにおよぶ美しい海岸線を有し、豊かな自然を身近に感じることができます。
産業面では、農業や水産業、商業のほか、工作機械・電気機械をはじめとした工業も盛んです。また、日本で最初の高等専門学校として設置された「沼津高専」があります。
――本日お話くださる山本様も沼津高専出身ですよね。
毎年輩出される優秀な卒業生の方々は沼津の宝です。
一方、製造業や建設業の生産額は年々減少し、農業や水産業は高齢化による後継者不足などで伸び悩んでいます。こうした問題を解決していくには若い力が必要です。
また、市では企業誘致や起業支援、革新的技術の導入による既存産業の業務効率化推進に力を入れています。若い方々にはこうした点にもぜひ力を貸してほしいです。
――企業誘致や起業支援で取り組んでいることはありますか?
沼津市は伊豆半島の玄関口で、東名高速道路と新東名高速道路が通り、広域交通の結節点となっています。発達した交通網や首都圏との近接性を活かして事業展開していただける企業のために、事業用地の確保を図っています。
また、IT分野等での起業やオフィス開設を促進するため、沼津市ITオフィス等進出事業費補助により、オフィスの賃借料や通信回線料などを支援しています。
――こうした支援を活用して立地した企業の若い方が地元産業と結びついて、まちに面白い動きがたくさん出てくると良いですね。
今回のcasaliz様のケースはまさに好例です。
本市には、サテライトオフィスとして活用可能なコワーキングスペースやシェアオフィスが数多くオープンしています。ぜひ多くの方に活用して頂きたいですね。
【沼津市のコワーキングスペース、レンタルオフィス、シェアオフィスはコチラ】
「サテライトオフィスしずおか」HP
【その他沼津市にサテライトオフィスを開設した企業の記事はコチラ】
ブリッジインターナショナル株式会社
株式会社REVOLEA
セブンセンスマーケティング株式会社
ぬましんCOMPASSへの入居で得られた地元信用金庫からのサポート
続いて、沼津市にサテライトオフィスを開設した、株式会社casaliz 代表取締役の山本さんにお話を伺いました。
――まずは、沼津市にサテライトオフィスを開設したきっかけから教えてください。
先ほど話があった通り、僕は沼津高専出身で、その頃の友人が先にぬましんCOMPASSにサテライトオフィスを開設していました。
その友人が、実際にサテライトオフィスを開設して良かった点を教えてくれ、さらに、開設した沼津市を薦めてくれたことが今回のサテライトオフィス開設のきっかけです。
――そのお友達というのは?
セブンセンスマーケティング株式会社 代表取締役の宮田昌輝君です。
10年ほど前に起業して、全国で仕事をしている彼が「サテライトオフィスを開設するとローカルなつながりから新しい仕事を試せる機会が作りやすく、開設した沼津市の場合は行政のサポートも手厚かった」と、地方に拠点を設ける魅力、その中で実際に彼の会社が開設した沼津市の良さを教えてくれました。
ただ、その時点では正直ローカルなつながりの部分については半信半疑で、そんなに期待はしていませんでした。ただ、行政から資金や経営のバックアップが受けられることはとても心強く、「試しにやってみようか」と、宮田君と同じぬましんCOMPASSへの入居を決めました。
【株式会社casalizが活用した支援制度はこちら】
静岡県ICT関連産業立地事業費補助金
――実際に入居して、何かつながりは生まれましたか?
まず最初に生まれたのが、ぬましんCOMPASSを運営する沼津信用金庫とのつながりです。
弊社では新たな事業としてVRを活用したサービスに注力するため、経済産業省の事業再構築補助金への申請を検討していました。
しかし、東京で創業し、あまたのスタートアップの一つという立ち位置にすぎなかったため、金融機関とのつながりが希薄で、資金面のアドバイザーがおらず、補助金申請のノウハウを持っていませんでした。
静岡県や沼津市の制度ではないため相談していいのか迷っていたのですが、ぬましんCOMPASSの担当者が「何か困っている事があったらなんでも相談してください」とおっしゃってくださったので、思い切って話してみました。
――相談してどうでしたか?
懇切丁寧にサポートしてくださりとても助かりました。
無事に採択され、その流れで沼津信用金庫が「その他に必要な資金について、当行で融資を検討させてください」と言ってくださり、資金面での安定度が一気に上がりました。
オフィス開設と資金面の相談を同時に進めていけるのが、地元信用金庫が運営するぬましんCOMPASSならではの良さだと思います。
サテライトオフィス開設場所の決め手は、会社の成長に向けて得られるリターンの多さ
――サテライトオフィスの開設場所を選ぶに当たって、ぬましんCOMPASS以外に検討はしましたか?
実は、ワーケーションスタイルや保養の機能を重視したサテライトオフィスに憧れを持っていて、熱海市のコワーキングスペースや良い雰囲気の古い別荘を有力候補に挙げていました。
――最終的にぬましんCOMPASSにした決め手はどこだったのでしょうか。
まずは、先ほどお話しした沼津信用金庫という地元金融機関のサポートですね。それに、東京から1時間というアクセスの良さも大きかったです。
また、沼津市には沼津高専があって優秀な学生との出会いが期待できます。
僕も卒業して初めて分かったのですが、沼津高専の技術レベルはものすごく高いんです。日本トップレベルの大学の学生たちと比べても遜色がありません。
ぬましんCOMPASSには3階に沼津高専のサテライトキャンパスがあり、優秀な生徒たちと接点を持てるのは、将来の採用面での大きなメリットに感じました。
――サポート・アクセス・採用の三拍子が揃っていたのですね。
そうですね。加えて、VR事業の顧客を作るための人脈も得られそうだという感触を、ぬましんCOMPASSの方と話をする中で感じました。
そのような理由で、ぬましんCOMPASSにサテライトオフィスを開設することを決めました。
「これから本格的にサービスを実用化していこう」というスタートアップ企業の僕らにとっては、得られるリターンが優先だと判断したわけです。
僕としては東京のオフィスをやめて沼津のオフィスだけにしたかったのですが、そこは社員の意見を踏まえ、両立させるという形になりました。
――社員の方からはどんな意見が出たのでしょうか。
「一流の人が集まる東京で公私共に刺激を受けながら成長したい」という意見でした。
社員は元々全員が東京に住んでいましたし、東京はなんでも揃っていて便利ですからね。
「地方で働く」というイメージを持ちにくかったのかもしれません。
僕自身は彼らの意見とは異なり、地方には優秀な方がたくさんいて、キャリアの成長につながる刺激も得られると考えています。
しかし、「東京が良い」と集まってくる人材が多いことも事実です。
そのような背景があり、二拠点で運営していく結論になりました。
ローカルのつながりから得られた新規事業の実績
――東京オフィスと沼津オフィスの業務内容はどのように分かれていますか?
現状は、東京オフィスでソフトウェア開発の大半を行い、沼津オフィスは顧客開拓や顧客対応等に軸足を置いています。
私以外の社員は東京オフィスで働いており、私自身も社員とのコミュニケーションがとりやすく、既存クライアントとの突発的な打合せ等にも対応できる東京オフィスにいる割合の方が高く、沼津オフィスにいるのは1ヶ月のうち1週間ほどです。
――沼津オフィスを訪れた際は、他の利用者の方とは交流されるんですか?
ぬましんCOMPASSは開放的な空間で、いつも「最近どうしてるの?」と声をかけてくれる方がいます。
自分よりも年配の方が多いのですが、皆さん考え方が柔軟で経験も豊富なので、よく自分の会社の話を聞いてもらっています。
その一方で、年下の沼津高専出身の後輩もいるので、その子の事業の話を聞くこともあります。
――色々な世代の方と話せるのはいいですね!そうした交流は仕事につながりましたか?
はい。VRを使ったサービス開発事業で、大企業をターゲットにしていることを話すと、そうした企業に人脈を持っている方が、知人を紹介してくださいました。
また、ぬましんCOMPASSを紹介してくれたセブンセンスマーケティング株式会社の宮田君が、静岡県東部地域を中心に飲食店を展開する株式会社にしはらグループの代表取締役社長の西原洋平さんを紹介してくれたことがありました。
VR事業のことを伝えると「面白そうだね、とにかくやってみようか!」と実験的なサービスにもかかわらず契約してくださいました。
実績のない事業では、最初の一歩にとても苦労してきたので、こんな風に進んでいくなんて、東京では想像もしなかったことでした。
――ちなみにVR事業はどのようなものでしょうか。
主にVRを活用した人材トレーニングサービス「ナナコロ」を開発・販売する事業です。
この「ナナコロ」は、VRゴーグルを使用し、現実世界ではすぐに表現できないシチュエーションを仮想空間でいつでも繰り返し再現し、“1人でも簡単に”トレーニングできるのが特徴です。
外国の人と英語で会話するシーンを海外に行かずとも仮想空間で再現したり、店舗での接客業務を実際のお客様と接しているように再現したりといった具合です。
株式会社にしはらグループと進めている接客業務トレーニングでは、たとえば、接客の時にお客様の目を直視できない新人さんがいたとします。
そこで、VRであえて威圧感のあるお客様が目をずっと見てくる映像を流して、目を見て話せるようになるトレーニングをするんです。
接客の研修では、人がそこにいるという存在感が大事ですが、マニュアル中心の従来のやり方ではそれが難しかった。その点をVR技術を用いることで解消しました。
――色んな分野のトレーニングに応用できそうですね!
そうなんです。VRのシステムは、使ってみてはじめてその効果が実感できます。
しかし、VRというのがまだビジネスシーンで一般に活用されていないため具体的にイメージを持ってもらえなかったり、仮想空間を活用することに対する偏見もあったりなど、使ってもらうまでが大変なんです。
そこに、新しい取組に積極的で、私の事業に対しても応援をしてくださる西原さんが、「面白そうだね!やってみよう!」と言ってくださり、最初のお客様になってくださったからこそ、今こうして僕たちのサービスの具体的な魅力を伝えることができているし、色んな可能性が見えてきていると感じています。
ローカルと都会の両輪で会社を育てる
――今後の会社の展望と、サテライトオフィスの役割について教えてください。
沼津市で第一歩を踏み出したVR事業を元に、いずれは東京の商社など大きなマーケットにサービスを提供できる会社に成長させていくつもりです。
先ほどの接客トレーニングシステムの事例がきっかけとなり、立命館大学や芝浦工業大学と英語学習におけるVR活用の共同研究をスタートしました。
こちらについては早速、海外に拠点を展開している静岡県内の企業と、社員の英語学習としてサービス導入の話が進んでいます。
このように、沼津オフィスを起点にして得たつながりや実績を積み重ね、東京の大企業にもアプローチできるようになっていきたいです。
また、そのためには優秀な人材確保も重要です。
東京オフィスではスキルのある即戦力を確保する一方で、沼津オフィスは将来有望な沼津高専の生徒との接点の場として機能させ、将来を見据えた人材の確保につなげるというように、二拠点の利点を最大限に活かしたいと考えています。
――最後に、サテライトオフィス開設を検討している企業へのメッセージをお願いします。
ローカルなつながりを作ることは、実績につながっていきます。
静岡県出身の方であれば、静岡県内にサテライトオフィスを持つのは特にオススメです。
出身地や出身校がきっかけとなることで、ローカルなつながりは一層作りやすくなりますし、私たちがサテライトオフィスを開設した沼津市はアクセスも良いため、東京で起業したものの実績の少なさが事業展開のネックとなっている企業にはうってつけの場所です。
加えてぬましんCOMPASSであれば、地域に根付いた金融機関からつながり作りや資金面のサポートが受けられ、とても心強いです。
地方でのサテライトオフィス開設に関心のある方は、ぜひ一度、沼津市・ぬましんCOMPASSを訪れてみてください。
(株)casalizがオフィスを開設した「ぬましんCOMPASS」はこちら
ぬましんCOMPASSは、「沼津をもっと豊かに、オモシロク 地域で働き、地域で暮らす」というコンセプトで沼津信用金庫が運営するシェアオフィス。地元の金融機関が運営しているため、資金面の相談を気軽にできるのが特徴の1つです。
沼津駅から徒歩5分に立地。1階に「みんなの図書館 さんかく沼津」、2階にシェアオフィスやコワーキングスペース、3階にワークショップスタジオや沼津高専サテライトキャンパスがあり、多様な人材が集まります。
また、静岡県の「ふじのくに関係人口創出・拡大モデル事業」に参画し、首都圏のコワーキングスペースの入居者との交流を促進する仕組みづくりに挑戦しています。
地域・行政・産業・教育機関が連携しているため、地域や社会に対して新しいビジネスやプロジェクトをしようという方にはうってつけの場所と言えるでしょう。詳しい情報は下記公式HPよりご確認ください。
運 営:沼津信用金庫
所在地:〒410-0056 静岡県沼津市高島町15-5 ぬましんCOMPASS
電 話:055-957-1010 (平日 9:00-17:00)
メール:numazu@ncompass.jp
アクセス:沼津駅から徒歩5分
公式HP:https://ncompass.jp
《ライター・北原泰幸》