東京に本社を置くIT企業、株式会社Asian Bridge。2023年2月に浜松市にサテライトオフィスを開設しました。浜松オフィスでは、自社で開発・運用するインターンシップマッチングサービスにより、静岡県西部地域のものづくりの現場を支える人材採用支援を中心に事業展開を行っています。浜松オフィスで働く静岡エリア責任者の馬場美帆さんに、同社の地方進出のプロセスやサテライトオフィス開設の決め手、今後の事業展開について伺いました。

会社概要

株式会社Asian Bridge
https://asianbridge.co.jp

2007年3月22日設立。東京本社以外に金沢市に2拠点、富山市に1拠点を構え、アプリやWebシステムの開発、IT基盤構築運用、Webサービス、ソーシャルゲーム向けイラスト制作事業、会社インフラ関連IT事業等を手がける。地方の拠点では、主に自社で開発したシステム導入を地元企業に推進、運用をサポート。高校生から社会人まで、年齢・職歴問わず職業体験ができるインターンシップマッチングサービス、在宅ワーク・ITスキルアップ講座などを通して結婚や出産後の女性の復職や多様な働き方の実現に向けた支援などを行う。

東京本社:東京都港区芝3-1-15 芝ボートビル 7F
浜松オフィス:静岡県浜松市中央区鍛冶町100-1 ザザシティ浜松中央館B1F Co-startup Space&Community「FUSE」

インタビュー対象者紹介

地域ソリューション事業部
静岡エリア責任者 馬場 美帆(ばば みほ)さん

千葉県出身。大学卒業後、都内で就職。その後、富山県射水市第1号の地域おこし協力隊として富山県に移住。移住支援や地域活性化事業のマルシェの企画・開催、空き店舗のDIYによる商店街の活性化を事業として手がける。家族の転勤に伴い静岡県磐田市に移住。富山在住時に親交のあった株式会社Asian Bridgeの事業責任者からの誘いを受け、同社に入社。パート社員として完全リモートワークで働く。2023年4月より正社員。同時に同社が開設した浜松オフィスで、静岡エリア責任者として勤務する。

地域課題を理解し、解決するための事業で地方に進出

▲株式会社Asian Bridgeが開発し、登録企業の運営サポートまで手がける「キャリターン」
▲株式会社Asian Bridgeが開発し、登録企業の運営サポートまで手がける「キャリターン」

アプリやWebシステムの開発、IT基盤構築・運用など、幅広い業種に対応した事業を手がけるIT企業、株式会社Asian Bridge。IT企業の8割が東京に集中し、地方のDXが進んでいない現状に、このままでは地方がダメになるとクラウドサービスに力を入れ、2017年より地方に拠点を置いた事業展開を始めました。
現在は業種を問わず人材の確保が全国的に大きな課題になっています。こうした背景から同社が開発し運営する、就職や転職を前に誰でも職業体験ができるインターンシップマッチングサービス「キャリターン」は、拠点を置く地域でも好評で、積極的に展開しています。

馬場さん:地方企業にとって、オリジナルのシステムを構築することや、単独では対応が難しいと思われる業務を、弊社が提供するITソリューションでサポートしています。「キャリターン」の他にも、1つのアカウントで複数の施設が管理できるゲストハウス運営ソリューション「MINCAN」では、従業員のシフト管理や、無人チェックアウトのシステムで、人材不足をサポートしています。これは、金沢市の企業とディスカッションを重ねて一緒に開発してきました。このように、地方企業と一緒に、抱えている課題を解決しています。

大切にしているのは核となる人材ありきの地方拠点づくり

▲インターンシップマッチングサービスの一環として、求職者のスキルアップセミナーや、企業の担当者向けのインターンシップセミナーも企画、開催する
▲インターンシップマッチングサービスの一環として、求職者のスキルアップセミナーや、企業の担当者向けのインターンシップセミナーも企画、開催する

同社の地方進出は、まず地方企業数十社にヒアリングをして地域の課題を把握。その地域に暮らす人材を軸として、拠点を構えるというプロセスを踏んでいきます。静岡県は、人材がいればすぐにでも進出したい地域だったそうです。

馬場さん:弊社社長は、すでに民間企業主催のセミナーで静岡県の企業や自治体と繋がりを持っており、地域課題を理解して、その解決のために静岡への進出を検討していました。そこで、富山県から磐田市に移住した私に声が掛かりました。富山時代のさまざまな活動を通して弊社が地方でどのような展開をしているかも理解していましたし、当時は完全リモートで勤務できるのも魅力的でした。1年間パート社員として勤務し、その後正社員への登用が決まったことで、静岡県にサテライトオフィスを構えることになりました。
サテライトオフィスは、コワーキング施設を含め、磐田市や浜松市での開設を考えていました。以前、社長が静岡県のサテライトオフィス開設セミナーに参加した縁で、浜松市と湖西市サテライトオフィス視察ツアーの案内をいただき、気になるコワーキングスペースもあったので参加しました。事前に、基本的には1名で利用することや、できれば個室が欲しいといった希望を伝え、オフィス候補となるコワーキング施設などを見学させていただきました。両市の担当者とも直接話をし、オフィス開設にあたってのサポート体制や地域性などを確認しました。
実際に地域の人たちと交流するようになり感じるのは、浜松市の人たちは地域愛が強いということ。私は富山県にいた時にDIYによる商店街活性化の事業に関わっていたので、浜松市のリノベーションスクールが気になっています。リノベーションスクールに参加し、卒業後その物件を活用して事業をしている人たちのコミュニティには、まちのプレイヤーを増やしていこうという熱意を感じます。

地域との関わりが深く、広くなる拠点づくりに選んだコワーキングスペース

▲Co-startup Space&Community「FUSE」のラウンジ
▲Co-startup Space&Community「FUSE」のラウンジ

サテライトオフィスを構えたCo-startup Space&ommunity「FUSE」は、当初から候補として考えていた施設のひとつで、視察ツアーでも見学。JR浜松駅からアクセスの良い立地で、コワーキングスペースが充実していること、登録会員数が地域で一番多かったことが決め手になりました。

馬場さん:地元金融機関の浜松いわた信用金庫が運営している施設で、企業同士を繋げる役割をしっかりと担ってくださっています。会員数が多いことで、会員同士が連携した事業展開の可能性も高くなると考えました。会員専用の非公開SNSコミュニティもあり、これから地域に根付いて活動していきたい私たちにとっては最適な場所。利用しやすい料金やミーティングスペース、フォンブースなど設備が整った快適な環境も魅力です。当面は私ひとりの利用ですが、個室オフィスもあるので、スタッフを増員した後で入室を検討したいですね。

オフィスそのものの快適性にも満足していますが、それ以上にオフィスを構えたことで感じているメリットもあります。

馬場さん:ずっと家で仕事をしていると誰とも話をしないこともありがち。その点、ここに来ることで、信金さんと密な情報交換ができ、地域の動向がわかります。事業を進める上での困りごとをすぐ相談したり、私たちの事業に力添えしてもらえそうな人材や企業を紹介してもらったりと、この施設ならではの活用ができていると思います。また、「FUSE」会員や浜松市内の企業以外でも、湖西市や磐田市など信金さんの支店ネットワークをフル活用してくれるのも心強いですね。浜松を拠点に周辺エリアでの仕事も広がります。

オフィス開設にあたっては、浜松市の支援制度等は活用したのでしょうか?

馬場さん:浜松市はスタートアップ支援をはじめ、事業展開のフェーズに合わせたプログラムや支援項目が充実していて、地方進出を考える企業にとって魅力的なフィールドだと思います。弊社では支援制度を利用していませんが、今後自社サービスに力を入れる上で、実証実験や、新規事業のプレゼンテーションイベントにも積極的に参加をし、対応する支援制度を活用したいと考えています。

自治体や企業、利用者に寄り添う伴走型の事業を展開し、人を呼び込み定着させる

▲インターンマッチングサイト「キャリターン」内に設けられた湖西市の特設サイト
▲インターンマッチングサイト「キャリターン」内に設けられた湖西市の特設サイト

現在、静岡県の自治体や団体と連携した事業も順調に進んでいます。そのひとつが、株式会社Asian Bridgeが運営するインターンマッチングサイト「キャリターン」内で展開している、湖西市の特設サイトです。特設サイトでは湖西市の紹介や、市内でインターンシップを実施している企業の紹介を掲載。現在、製造業を中心に10社ほどが登録されていますが、今後参加を予定している企業もあり、登録社数はまだまだ増えていきます。
また企業の登録を促すだけでなく、湖西市での就業や暮らしに興味のある人と企業をマッチングできるよう、オンラインインターンシップ説明会も企画をしています。登録、サイトへの掲載をしたら終わりではなく、地域や企業が目的を達成するために必要なことは何かを常に考えながら事業を進めています。

馬場さん:湖西市さんとは、サテライトオフィス視察ツアーがきっかけでIT活用などのディスカッションをする機会を得て、この受託事業に繋がりました。静岡県は移住先としても人気があるので、首都圏や中京圏在住者のIターン、Uターンを訴求できます。市が主導して企業の参加を呼びかけ、私たちも採用担当者を対象にインターンシップセミナーを開催して、インターンシップから採用に繋げるアドバイスや情報掲載のサポートを行っています。採用サイトを持っていない中小企業こそ利用していただきたいですね。
また、静岡県の関係人口創出・拡大モデル創出業務の一環で、富士市富士宮市の企業と連携し、Iターン、Uターンを希望する学生に向けてインターンシップ情報発信をする事業において、システム構築のサポートを行っています。
自社の事業では、スポーツチームに特化したアプリ「SPORTS BANK」の静岡県内での展開に大きな可能性を感じています。選手自身が試合のライブ配信を行ったり、つぶやき機能でファンとコミュニケーションを図ったり、グッズやチケット販売を一括で行えます。収入の不安定さなどから、トップチーム以外の選手は競技に集中しづらい環境になりがちです。このアプリでは、動画配信の投げ銭の機能で、ファンもダイレクトに選手のサポートをすることができます。すでに全国で10チーム以上が登録、活用しています。静岡県はサッカー、ラグビー、バスケットボール、卓球などさまざまなプロスポーツチームが存在し、県民のスポーツに対する関心も高いので、この自社アプリも積極的に普及させていきたいです。

地域在住スタッフだからからこそ可能な細やかなサポートで地域に根ざした会社へ

▲湖西市で開催したインターンシップセミナーの様子
▲湖西市で開催したインターンシップセミナーの様子

馬場さんはオフィス開設以降、事業の拡大に繋がる情報キャッチのアンテナを高くし、新規事業系のプレゼンイベントにも積極的に参加しています。浜松市に拠点があるからこそ、地域の情報をタイムリーに得ることができ、また社内においては上司と速やかに相談しエントリーするという連携ができています。「FUSE」の会員との協業も、今後具体化していきそうだと言います。

馬場さん:会員にはフリーランスで活躍している方も多く、たとえば湖西市の受託事業では、企業のインターンシップ実施の様子を取材し、サイトへの掲載を行っていくので、その際に協力してもらうカメラマンやライターも「FUSE」の多彩な繋がりから紹介してもらう予定です。
正直、在宅でも仕事はできます。実際に、自宅でリモートワークをしていると通勤時間がないので、仕事以外に使える時間が増えることはメリットのひとつです。一方で、気持ちの切り替えが難しい時があります。オフィスに出勤する日は、オフィスへの移動中に家庭モードから仕事モードに頭の中を切り替えることができ、メリハリを付けられています。
せっかくサテライトオフィスを開設したので、しっかりと地域に根付いて、私たちのITスキルを活用して地域の企業にお役に立てるような事業者になりたいです。現状は私ひとりで浜松オフィスの業務を行っているため、多くの案件に手が回らないもどかしさを感じています。ただ、新たなスタッフも募集しているので、人が増えれば機動力も上がり、もっと細やかなサポートが可能になります。
これからも、自分が暮らしているからこそ気づく静岡県西部地域ならでは特長を、さらに伸ばすお手伝いをする仕事で頑張っていきたいです。

サテライトオフィスで働く馬場さんに聞きました!

① 静岡県の好きなグルメは?
静岡県は特定の料理よりも、季節ごとに楽しめる特産品が多いことが、すごく魅力的だと感じています。夏ならトウモロコシの「甘々娘(かんかんむすめ)」や三方原馬鈴薯、冬は三ヶ日みかんなどが楽しみです。直売所にもよく行き、そうした旬の味覚を満喫しています。でも、農作物そのものの流通は多い一方で、加工品が少ないのがちょっと残念。遠方の友人に送りやすいので、旬が味わえる加工品がもっとあったら嬉しいです。

▲甘みが強く、朝収穫した新鮮なものは生でも食べられる「甘々娘」
▲甘みが強く、朝収穫した新鮮なものは生でも食べられる「甘々娘」

② 静岡県でおすすめor 行ってみたい場所は?
おすすめの場所は浜松市の「ぬくもりの森」です。雑貨屋やカフェ、レストランなど、手づくりの温かみを感じるメルヘンチックな建物が建ち並んでいて、子どもと一緒に非日常を味わえます。
行ってみたい場所は東部エリアが多いです。沼津市戸田の「Tagore Harbor Hostel(タゴールハーバーホステル)」。リノベーションした建物のデザインが素敵で一度は泊まってみたいゲストハウスです。熱海市の「MOA美術館」も行きたいです。

▲馬場さんのおすすめの場所「ぬくもりの森」
▲馬場さんのおすすめの場所「ぬくもりの森」

③ オフタイムの過ごし方は?
子どもがまだ小さいので、近所の公園へ遊びに行くことが多いです。途中には、茶どころ静岡らしく茶畑沿いの道も通ります。静岡にいる間に茶摘み体験もしてみたいですね。「浜松市動物園」に1度行ったことがありますが、子どもが大きくなったらもっと出かけられそうです。

▲子どもとの散歩途中に通る茶畑
▲子どもとの散歩途中に通る茶畑

静岡県サテライトオフィス情報発信ライター・竹内友美(たけうちともみ)

馬場さんが参加したサテライトオフィス視察ツアーにも同行しましたが、市の担当者やオフィス候補の施設責任者の話に熱心に耳を傾けている様子が印象に残っています。その後のオフィス決定までが素早く驚きましたが、すでに地域課題を把握していたことで事業展開も早かったのだと納得しました。また、社員の在宅ワークだけでなくサテライトオフィスを開設して地方拠点とすることが、そこで働く社員のモチベーションアップにも繋がっている事例でした。

【竹内友美プロフィール】

サテライトオフィスを開設したCo-startup Space&Community「FUSE」はこちら

Co-startup Space&ommunity「FUSE」
所在地:静岡県浜松市中央区鍛冶町100-1 ザザシティ浜松中央館 B1F
アクセス:JR浜松駅・遠鉄新浜松駅から徒歩5分