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株式会社経営参謀
中小企業の経営者同士が「知恵」「経験」「悩み」を共有する会員制のコミュニティを運営し、現役の経営者だけが集まり、共に学び合い、刺激し合い、励まし合い、元気になる場を提供している。2015年に株式会社経営参謀を設立し、中小企業の経営者が学び合う場である「参謀」を創業。2019年に川根本町サテライトオフィス設置し、現在は東京で「参謀」の運営を、川根本町では「地域活性」をメインに事業を行う。

「取締役 高梨 太(たかなし ふとし)さん」
webサイトのコーディングを行うwebコーダーとして社会人生活をスタート。その後WEBコンサルタントとして数多くの案件を担当する。2017年に(株)経営参謀代表取締役の新谷 健二 (あらや けんじ)氏と出会い、企業理念や新谷氏の人間性に惹かれ、役員として参画する。2019年7月に川根本町のサテライトオフィス設立と同時に川根本町に移住。以後、川根本町の「活性化」をテーマに自治体や町民と協力して様々な事業を行う。

・東京本社
【所在地】〒160-0023
東京都新宿区西新宿5-8-1
・静岡オフィス
【所在地】〒428-0411
静岡県榛原郡川根本町千頭1216-20

【経営参謀のウェブサイトはこちら 『https://www.ksanbou.co.jp/ 』】

川根本町ってどんなところ?

▲たくさんの観光資源に恵まれている川根本町
▲たくさんの観光資源に恵まれている川根本町

川根本町(かわねほんちょう)は静岡県の中央部に位置し、町域の90%以上が森林という自然豊かな町です。町の中央には、南アルプスを水源とする大井川がゆったりと流れ、自然環境の保全と人間の営みの両立に取り組んでいる地域として、町全域が「南アルプスユネスコエコパーク」に指定されています。

町内には大井川鐵道の蒸気機関車(SL)や日本で唯一のアプト式鉄道「南アルプスあぷとライン」が走ることから鉄道ファンの聖地とされ、なかでも奥大井湖上(おくおおいこじょう)駅は、エメラルドグリーンの湖に浮かぶ秘境の駅として人気のスポットです。

また、農林水産祭で茶業界初の天皇杯を受賞し、全国茶品評会において農林水産大臣賞を16回獲得している「川根茶」の産地としても知られており、おいしいお茶が育つ環境に恵まれた川根本町には、美しい茶園景観が広がっています。

川根本町は2015年に町内全域に高速情報通信網を整備。旅費宿泊費を全額補助する1泊2日の現地見学会開催や、サテライトオフィス実証実験施設と移住用お試し住宅を無料で貸し出すなどの補助制度を創設し、IT(情報技術)企業誘致やITを使い自宅などで仕事ができるテレワークを推進しています。
外資系ソフトウェア開発大手ゾーホーの日本法人ゾーホージャパン(横浜市)が2017年に川根本町にサテライトオフィスを開設したのを皮切りに、複数の起業誘致を実現させています。

【川根本町にサテライトオフィスを設置したその他の企業の記事はこちら】
ゾーホージャパン株式会社
株式会社Agrinos(アグリノス)

【川根本町の紹介ページはこちら】

町民の人柄に魅了され、町の活性化を目指して移住!サテライトオフィスを設置

▲はじめは空き家をサテライトオフィスとして利用。空き家活用後に移転し、現在は千頭駅前にオフィスを構えている
▲はじめは空き家をサテライトオフィスとして利用。空き家活用後に移転し、現在は千頭駅前にオフィスを構えている

株式会社経営参謀取締役の高梨 太さんにお話しを伺いました。

--まずは、川根本町にサテライトオフィスを設置したきっかけを教えてください。

弊社は、東京を中心に経営者向けのコミュニティを運営しており、勉強会や講演会を開催して交流や情報交換の場を提供しています。

川根本町にご縁ができたきっかけは、我々が行っているコミュニティの会員様の中に、同町にサテライトオフィスを構えるIT企業「ゾーホージャパン株式会社」さんがいらっしゃったことでした。

ゾーホージャパン(株)は、川根本町にサテライトオフィスを設置しただけなく、地元企業や自治体と協力して町を活性化させたいという想いから「プロジェクトK」という官民一体となったまちづくりプロジェクトを立ち上げている企業です。現在、川根本町の人口減少を食い止めるための様々な活動を行っています。

静岡県出身で藤枝市に自宅があり、東京と藤枝市を行き来する生活をしていた経営参謀の代表・新谷健司は「プロジェクトK」の思いに強く共感し、会社としてではなく、個人としてボランティアで川根本町に携わるようになりました。

「プロジェクトK」の活動を一年ほど続けると、新谷の川根本町へかける熱量や活動の割合がどんどん増していくんです。それならもう、個人としてではなく、会社としてきちんと関わっていく方が町の発展のためにできることが増えるのではないかと、町の活性化に携わるためのサテライトオフィス設置を検討するようになりました。


--高梨さんは川根本町に移住されているとのことですが、社内での検討からどのような経緯で移住に至ったのでしょうか?

私自身は、東京生まれ東京育ちで、それまで地方に関わることなく過ごしてきたので、まさか自分が移住をするなんて思ってもみないことでした。

代表がどんな想いで「プロジェクトK」の活動をしているかを知りつつも、実際に地方を知らずに育ってきたので、当時は恥ずかしながら、日本全国にある過疎地はどんどん合併した方が自治体としても管理が楽になるのでは?と思っていたくらい無知だったんです。

しかし、その考えは、川根本町に足を運んでみて180度ガラリと変わりました。


--川根本町に行く前と後で、考えがどのように変わったのでしょうか?

田舎に抱いていた閉鎖的なイメージが、実際に訪れてみると間違いであることに気づきました。

まず、川根本町の皆さん誰もが、見知らぬ私に温かく挨拶をしてくれたんです。これって当たり前のようですけど、東京では道を歩いて挨拶を交わすことがなかったので驚きました。育つ場所によってこんなにも人間味に差が出るものなのかと、カルチャーショックを受けましたね。

それから、町の人とお話をさせていただくと、川根本町に住む方々は、80代・90代になっても、自分のためではなく、町のため、次の世代のために「自分たちにできることはないか」と言って行動されている方が多くいらっしゃったんです。どの年代の方と話をしても、町や次世代のために諦めていないという姿勢を強く感じました。

そんな川根本町の方たちとの関わり合いから、自分のなかに「今まで培ってきた知識やキャリアをこの町の人たちのために活かすことはできないだろうか」という感情が芽生えてきたんです。

会社としてサテライトオフィス設置を検討しているタイミングだったこともあり、自分の気持ちに正直になり、移住を決意しました。また、町の活性化に関わる以上、東京からリモートではなく現地で仕事をしたいと思い、自らサテライトオフィス開設へ動きました。


--実際に移住をしてみて、川根本町の良さはどこにあると感じますか?

やっぱり人柄の良さが一番ですね。町の皆さんが前向きな気持ちを持っているし、温かいんです。東京でのドライな関係に慣れてきたので、移住当初は戸惑うこともありましたけど、隣の家の人がおかずを分けに来てくれたり、気にかけてくれたりと、温かみのあるコミュニケーションを取れるところがこの町の良さだと感じています。

物件との巡り合いは、住人との繋がりから。コミュニティを大切に町と地域に根ざす

▲千頭駅前に移転したサテライトオフィスでは、インターンの大学生がカフェ経営をする新しいチャレンジを行っている
▲千頭駅前に移転したサテライトオフィスでは、インターンの大学生がカフェ経営をする新しいチャレンジを行っている

--サテライトオフィスはどのように探したのか教えてください。

最初の物件は、「プロジェクトK」でのつながりから、町民の方のサポートがあり、空き家を紹介してもらいました。空き家を活用することは町の活性化のために意味のあることですし、町に根ざしたコミュニケーションを大切にしてきたことで、良い物件に巡り合えました。その後移転して、現在のサテライトオフィスはSLとトーマス号の終着地点である大井川鐵道の「千頭(せんず)駅」駅前にあります。町の中心地で、住人の方たちとのコミュニティを大切にしながら、業務の幅を広げています。


--行政のサポートや補助金の活用などはされましたか?

千頭駅前にオフィスを移転した際には、サテライトオフィスの補助金を活用させてもらいました。川根本町の職員の方たちは、オフィス設置前から熱心に関わってくださり、わざわざ東京まで足を運んで町について熱く語ってくれたこともありました。

川根本町に来てからも、手厚いサポートをしてくださり大変助かっています。役場の方と信頼関係を築けたことで、町に進出しやすい環境が整っていたことは非常に大きかったです。


【(株)経営参謀が利用した支援制度はこちら】

○川根本町オフィス設置事業費補助金

地域課題の解決のために、町が元気になる事業を展開!

▲インターン生と町民が一緒になり、山を整備する活動を実施
▲インターン生と町民が一緒になり、山を整備する活動を実施

--川根本町のサテライトオフィスでの業務内容を教えてください。

町の地域活性化を図る地域創生事業を行っていますが、「何屋さんか分からない」と言われるほど幅広く活動しています。

分かりやすいところで言うと、“川根本町への移住に興味を持った方に、適切な情報を届ける仕組みが整っていない”という課題に着目し、人口増加につなげるための「移住促進メディア」の作成・運用を行って情報発信をしています。

ほかにも、移住者の職業選択の幅を広げるための企業誘致や移住者向けの空き家整備、観光の強化など、町のためになることで、自分たちにできることなら何でもやるというスタンスで行っています。

▲伐採作業を行なった時の様子。川根本町でしかできない体験をするインターン生
▲伐採作業を行なった時の様子。川根本町でしかできない体験をするインターン生

現在は、大学生の長期インターンの受け入れもしていて、現地の企業や住民からお願いされれば、若い社員や大学生たちと空き家の掃除をしたり、木を切る伐採作業を行うこともありますよ。

【移住情報サイト「川根本町移住ナビ」はこちら】

大学生が来たことで町の雰囲気に変化が。若い力で町を盛り上げるプロジェクトを始動!

▲長期インターンを通じて、そのまま川根に就職してくれる学生も出てきた
▲長期インターンを通じて、そのまま川根に就職してくれる学生も出てきた

--大学生向けの長期インターンをされているということですが、開始されたきっかけや主にどんなことをしているのか教えてください。

現在、大学生の間では「経験」を求めて企業で数ヶ月以上働く「長期インターン」の人気が広がっています。

しかし、首都圏には長期インターンの募集が多数存在するのに対し、地方にはほとんどありませんでした。そこで、静岡の大学生にも「経験」を積む機会をつくりたいと、川根本町とゾーホージャパン、静岡大学の3者が連携して、町全体でインターン生の受け入れを企画したのが始まりでした。

2019年に弊社でも3名の大学生を受け入れて、半年間を一緒に過ごしました。驚いたことに、インターンを終える頃には、3名中2名が川根本町にこれからも携わりたいと言ってくれたんです。

業務内容は、データ分析など移住を進めるようなものではなかったのですが、新しいチャレンジをしてみたいという若い人たちのニーズが地方にはあるのではないかという可能性を感じました。

実際に1名は、新卒で弊社に入社し一緒に働いてくれています。


--大学生が町に来たことで変化はありましたか?

川根本町の商工会さんが「大学生が入ってくれたことで、今までの雰囲気とまったく違うよね!」と言ってくださるほど明るく、前向きな空気に変わりました。

SLの終点である千頭駅周辺には、飲食店や土産店など複数の店舗があり、駅前の商店で作る「千頭駅前を考える会」(以後、商店会)というコミュニティがあります。千頭駅前は鉄道ファンや親子連れが集まる観光スポットであるにもかかわらず、以前はうまく生かしきれていなかったんです。

そこで、当時インターンの大学生(現在は社員)を商店会の会長にして、好きにやらせてみました。そうしたら、思ってもみなかった面白い化学反応が起きたんです。

純粋に川根本町のことが好きで「駅前のために何かやりましょう!」と動く大学生の姿に、自然と町の皆さんが協力してくださるようになって、それが商店会みんなで駅前一帯を盛り上げようという空気に変わりました。

商店会では毎月1回駅前の掃除を行っているんですけど、大学生が会長になる前の参加者は数人しかいなかったんです。それが、毎回十数名集まるようになり、今では駅前全体で観光客を迎えようという意識が生まれています。お店同士の連携も生まれ、活気が出てきたように感じますね。

▲サテライトオフィスにあるフリーの黒板スペースには町の子どもたちが集まってきます
▲サテライトオフィスにあるフリーの黒板スペースには町の子どもたちが集まってきます

--大学生からの呼びかけに地域住民が協力することで、町の活性化につながったのですね!

そうですね。新しいチャレンジや経験をしてみたいという大学生と地域をつなげることで、町が活性化していくという実体験は、私にとって大きな気づきとなりました。

現在は、自由に使えるイベントスペースを開設し、大学生が飲食店経営に挑戦しています。

若いうちから、店の経営に必要な「試行錯誤」をすることで、企画力や事業づくりの基礎、リーダーに必要な経営視点が身につき、社長やプロジェクトリーダーのような「生み出す側」の人になるための力をつけることができます。

町にとっては、若い力があることで活気づきますし、大学生にとってはチャレンジできる場所がある。双方良しの関係性から、今後は飲食店に限らず、インターネット通販や農家、メディア運用など幅広く活動の幅を広げていきたいと考えています。

サテライトオフィス設置で広がるフィールドと雇用の幅、未来への可能性!

▲地元の子どもたちと一緒に木工ワークショップ体験を開催
▲地元の子どもたちと一緒に木工ワークショップ体験を開催

--サテライトオフィスを設置してみて、どんな所にメリットを感じていらっしゃいますか?

弊社は、東京での経営コンサル業と大きく異なることを川根本町で行っているので、それによって雇用の幅が広がりました。

東京オフィスでの業務は、知識量やコミュニケーション能力、そのための経験が必要となります。難しい業務が多いため、新卒で入社しても長続きせず、人材確保に課題がありました。

川根本町にサテライトオフィスを設置したことで、新しい挑戦ができる上、今までとは違う手法で人を呼べるようになったことは大きなメリットだと感じています。

今後、東京での経営者コミュニティと川根本町でのまちづくりのコミュニティを相互連携させることにより、若い力が欲しい企業と地方の若い人材をマッチングさせて、コミュニティ内で人材を循環させることもできると思います。サテライトオフィス設置によってフィールドが広がったことにより、勝機が増えたと感じていますね。

▲時計づくり体験をした時の様子。サテライトオフィスはさまざまな世代の人が楽しめるスペースとしても活用されている
▲時計づくり体験をした時の様子。サテライトオフィスはさまざまな世代の人が楽しめるスペースとしても活用されている

--移住をして不便さを感じることはありませんでしたか?

夜の飲食店が19時には閉まってしまうとか、買い物をする場所がないなど、もちろん最初は不便さを感じました。

でも、車があればどこにでも行けますし、ネットショッピングもできます。移住して半年ほどで生活に適応し、不便さを感じることはほぼなくなりましたね。

どちらかというと、移住したメリットの方が大きいと感じています。

リモートで地域の活性化に関わるにはやはり限界があります。町に溶け込んで住人と同じ目線になり、町の人たちの気持ちを理解することで、町の企業という認識をしてもらえるようになりました。

オフィスだけがあって、たまに仕事に来るというスタイルだったら、このような形にはなっていないと思うので、移住したことは大きなプラスでした。

若者のチャレンジを後押しして、町の人と共に地域を盛り上げていきたい

▲インターン生が中心となりカフェの運営を行っている
▲インターン生が中心となりカフェの運営を行っている

--今後、サテライトオフィスを活用した展望があればお聞かせください。

大学生にどんどん経営をチャレンジさせて、町中にお店を増やせたら面白いですし、雇用も生み出していきたいです。

今は千頭駅前での活動だけですが、川根本町には各地区に特徴・魅力があります。さまざまな取組が行われているので、各地区に拠点を置いて、大学生の若い力を借りながら、地域の方たちと一緒に町を盛り上げていきたいと思っています。

各拠点が活気づくことで、最終的には川根本町全体をさらに面白く、元気のある町にしていきたいです。


--最後に、サテライトオフィス設置を検討している企業へのメッセージをお願いします。

私たちは、川根本町役場の方のサポートと町民の方のサポートがあって、サテライトオフィスを設置することができました。

何もつながりのない中で移住やオフィス設置を行ったとしても、どのように動いたらいいかもわからなかったと思うんです。まずは行政や地域の方とコミュニケーションを取り、信頼関係を築くことが大切だと思います。

その上で、地域で何をやりたいのかという軸と地域に根づく覚悟を持って、サテライトオフィス設置を検討してほしいと思います。


《ライター・奥村サヤ》