【イベントレポート】「静岡県ビジネスマッチングセミナー」東京で開催!参加者が感じたメリットとは
2024年10月21日(月)、静岡県ビジネスマッチングセミナーがTokyo Innovation Base(TiB)にて開催されました。2022年、2023年に引き続き、首都圏等の企業に向けたセミナーは3回目です。今回は75社、94人のICT関連事業者等にご参加いただきました。参加者数・社数ともに過去最大となります。
本記事では、大盛況となったイベント当日の様子や、静岡県へ進出するうえでのポイントを紹介します。静岡県での事業展開を考える企業の方々は、ぜひご参考ください!
・2023年のレポートはこちら
・2022年のレポートはこちら
【イベント概要】
開催日時:2024年10月21日(月)14:00~18:00
場所:Tokyo Innovation Base(TiB)
対象:首都圏等のICT企業や、デザイン・コンサルティング等のサービス関連企業
参加費:無料
参加者数(社数):94人(75社)
開催形式:リアル・オンライン開催
主催:静岡県
【イベントプログラム】
1.静岡県の魅力と誘致施策の紹介(静岡県知事より)
2.進出企業等によるパネルディスカッション
3.自治体担当者の進出歓迎ピッチ
4.自治体や県内支援者との個別相談会
知事が先頭に立って強力推進中! いま、スタートアップが静岡県に進出すべき理由
プログラム冒頭、静岡県知事の鈴木 康友氏から開催のご挨拶と、企業誘致施策等の紹介がありました。これまで2回実施している東京開催の企業誘致セミナーですが、知事が登壇するのは初めて。会場が期待感に包まれます。
鈴木知事は元浜松市長。市長時代はスタートアップ企業の支援政策に力を入れていました。「浜松時代の経験を活かし、“トップセールス”として私が前面に出て、静岡県の魅力を企業へ発信していきたい」と意気込みます。
静岡県の魅力は、大きく分けて主に3つ。
①東京・大阪・名古屋などからのアクセスの良さ
②実証実験に最適な自然環境
③イノベーションを生む、多種多様なものづくり企業
県内各地にあるイノベーション拠点では、「空飛ぶクルマ」「スマート農業」などの先端産業を創出しています。
また、2023年9月には「静岡県スタートアップ支援戦略」を策定。県内のスタートアップ創出や、県外から誘致するための環境整備に注力しています。以下、セミナーにて一例が紹介されました。
■スタートアップビジネスプランコンテスト WAVES
国内最大級賞金、総額1,800万円(県内活動の場合)のビジネスコンテスト。入賞者へは伴走支援あり。
■TECH BEAT Shizuoka
スタートアップ企業と地元企業のマッチングイベント。静岡銀行との共同開催。2024年は130社以上が集結。7,622人が来場、130件の商談に至る。
■ベンチャーキャピタル(VC)と連携した資金調達支援(今後の検討策)
静岡県認定のVCから投資を受けたスタートアップには、県から交付金を交付。
■東部・伊豆地域への呼び込み強化(今後の検討策)
温泉などの観光資源が多い東部・伊豆地域の魅力を最大限に活用し、旅館などをリノベーション。スタートアップのサテライトオフィスなどに再利用。
鈴木知事は「これからもスタートアップ支援を通じて、“幸福度日本一の静岡県”を目指していきたい」と力強く語ります。今後のさらなる施策強化にも、期待が高まるプレゼンとなりました。
進出企業・静岡県内VCによるパネルディスカッション
続いて、知事と進出企業、静岡県内VCの4者によるパネルディスカッションが開催されました。
【登壇パネリスト】
・静岡県知事 鈴木 康友氏
・株式会社Relic 北嶋 貴朗氏(進出企業:新規事業開発支援・イノベーション支援等)
・合同会社うさぎ企画 森田 創氏(進出企業:スタートアップと地域のマッチング支援・交流拠点の企画運営等)
・静岡キャピタル株式会社 山内 栄二氏(静岡県内VC)
【モデレーター】
・株式会社ATOMica 嶋田 瑞生氏
進出企業が静岡県を選んだ理由は?【パネルディスカッション①】
まずは、「進出企業がなぜ静岡県を選んだのか?」のトークテーマから。具体的でユニークなエピソードが挙がりました。
Relic 北嶋氏
「創業当時から地方進出への構想はありました。静岡県に進出した理由は、スタートアップ支援の政策が手厚かったこと、テストマーケティングしやすい環境が整っていたことなどです。また、Relicでは拠点を立ち上げる際、立ち上げメンバーの想いを大切にしています。宇宙関連事業に携わりたい社員から、『静岡県は自動車部品のメーカーが多いため、新規事業として宇宙ビジネス参入の提案ができるのでは』と熱いプレゼンを受けたことが決め手となりましたね。彼は現在、浜松拠点長を務めています」
うさぎ企画 森田氏
「うさぎ企画は静岡県内で創業ののち、東京や首都圏に展開しています。創業の場所として静岡県を選んだ理由は、主要産業も、人口特性も、バックグラウンドも異なる、多種多様な地域がある県だからです。静岡県には、過疎地もベットタウンも中規模都市も存在しますよね。全国にビジネスを横展開していくうえで、ユースケースが豊富であることはメリットでした。また、外から来るものや新しいものを拒まない穏やかな県民性があり、結果的に受け入れてもらいやすかったと感じています」
働く場・暮らす場としての静岡県【パネルディスカッション②】

静岡県を日々の生活拠点としているパネリストのみなさん。実際に暮らしているから分かる、リアルな住みやすさ、働きやすさを聞きました。
うさぎ企画 森田氏
「東京と三島市の二拠点生活をしています。不便に感じたことはありませんね。新幹線に乗って約40分で東京へ行けるので、昔住んでいた鎌倉よりも、都心に近い場所だと感じています」
静岡キャピタル 山内氏
「静岡キャピタルへの転職を機に、東京から静岡県に移住しました。ワークライフバランスが改善し、子育てしやすくなったことで、家族全員のメンタルも安定したと思います。また、満員電車とは無縁になりましたね。いまでは毎日、子どもを保育園に送ってから、自転車で出社しています」
静岡県知事 鈴木氏
「静岡県は都市機能が整った暮らしやすいまちが多いです。転勤でさまざまな地方に住んでみた結果、静岡県を“終の棲家”として選ぶ方もたくさんいらっしゃるんですよ」
また、社員の働き方については、「あえて原則出社」としているRelicのワークスタイルが特徴的でした。
Relic 北嶋氏
「Relicの地方拠点では、出社勤務を原則としています。ICT企業は求人で『フルリモートOK』を謳いがちだからこそ、差別化として『出社できる』メリットを打ち出しました。出社勤務のニーズは高いようで、求人でも一定の反応がありますね」
進出を考える企業へのエール【パネルディスカッション③】
パネルディスカッションの最後に、静岡県への進出を考える企業へのメッセージを聞きました。メリットだけでなく、シビアに考えなければならない注意点や、具体的なアドバイスも挙がっています。
Relic 北嶋氏
「静岡県は他県よりコミュニティに入りやすい雰囲気があり、バックアップも充実していて、進出しやすい県だと思います。これだけアクセス抜群で、産業が発展していて、スタートアップが集まっている県は、全国的にも稀なのではないでしょうか。一方で、多様な産業が発達しているぶん、自分たちが何をしたくて、何が得意なのか明確にしておかないと、他企業に埋もれてしまう可能性があります。そのため、自社の特長を尖らせ、解像度高く言語化して発信していく必要があると思います」
うさぎ企画 森田氏
「静岡県には好条件がそろっているので、チャレンジしない手はないでしょう。ただ、自治体に相談しようにも、行政には行政ならではのロジックがあります。スタートアップのスピード感で、『来月にやろう』と思ってもすぐには叶いません。スタートアップと行政、双方がお互いのロジックを学んで、歩み寄ることが成功の秘訣だと思います」
静岡県知事 鈴木氏
「静岡県にはスタートアップとマッチングしたい大手製造業がたくさんあります。ビジネスチャンスに直結すると思いますので、ぜひ静岡県への進出をご検討ください。また、このような施策はリーダーの熱量も重要です。少なくとも私が県知事を勤めているあいだは、高い熱量で強力に推進していきますので、どうぞご期待ください!」
静岡県内9市の進出歓迎ピッチ! 各自治体の強みと課題
本セミナーでは、静岡県内9市の自治体による進出歓迎ピッチ(5分程度のプレゼン)がありました。各自治体にはどんな強みや課題があり、どんな企業を求めるのでしょうか。具体的な自治体選びの際に、ぜひご活用ください。
・静岡市
アクセス抜群。市内には国公立大学2校をはじめとした大学や専門学校が多数あり、優秀な人材が集まる。一方で、5割の学生が市外へ就職。若者に人気のある情報通信企業を増やしていきたい。最大1億6,500万円の補助金など、進出サポートが充実。
・浜松市
市外からの挑戦者にウェルカムなまち。県知事の市長時代から継続して、スタートアップを応援する施策や文化が定着。課題は地域産業のDX推進。ICT企業のソリューション×製造業のテクノロジーで成長を目指す。
・三島市
交通アクセス良好。富士山のきれいで豊富な湧き水は、サプリメントや製薬など、医療健康関連産業に最適。市が民間企業から提案を募集する「共創リスト」を公開中。共に社会課題解決を目指せる企業や、ウェルビーイング向上に寄与する企業の進出を期待。
・伊東市
大室山、城ヶ崎海岸、温泉などの豊富な観光資源あり。移住者、起業家、サテライトオフィスを設ける企業も増加中。ビジネスコンテストで優秀な成績を残す、伊豆伊東高校のアイデアを実現に向けて推し進めたい。また、伊東市主催のビジネスコンテストも開催。
・島田市
茶関連事業が盛ん。静岡茶発祥の地。大井川の豊かな水資源があるため、大手食品・飲料メーカーが立地。荒廃茶園の増加や、中心市街地の活力低下が課題。シティプロモーション、ブランディングに注力。茶業とまちなかに活気を生み出す企業の進出を期待。
・富士市
富士山の豊富な水を活かした製紙業のまち。トイレットペーパーの生産量は日本最大級。CNF(セルロースナノファイバー)の展開に注力。食品にも使える保水性の高い繊維、CNFの活用アイデアを持つ企業を歓迎。富士市での視察費用は、すべて富士市で負担可能。
・磐田市
自動車部品、バイク部品、ピアノなどを製造する大手ものづくり企業が立地。空飛ぶクルマの製造拠点。次世代農水産業も盛んで、バナメイエビの陸上養殖に注力。一方で若者が希望する就職先がないことが課題。ICT事業や新規事業に取り組む企業の誘致を強化したい。
・藤枝市
サッカーのまち。『ほどよく都会、ほどよく田舎』。地下水が豊富なため、日本酒・地酒の製造や、製薬産業が盛ん。若い世代の流出が課題。「食と農×健康と医療」での新成長戦略を推進。藤枝市主催のビジネスコンテストを開催。
・菊川市
静岡市と浜松市の中間にある市。自動車部品、精密工作機械メーカーが多数立地。製茶業も盛ん。一方、6割の事業者が後継者不在であることが課題。進出企業へは、スマート農業やICT活用での販路開拓支援を期待。「お茶」をテーマにしたビジネスコンテストを開催。
「静岡県ビジネスマッチングセミナー」参加者の声
セミナー終了後の個別相談会には、県内自治体から16市、金融機関・教育機関・シェアオフィス等運営者から7社が出展しました。複数のブースで相談している参加者が多く見受けられ、興味の高さが伺えます。
個別相談会に参加していた方に、本セミナーの感想をいただきました。
「浜松市長時代からスタートアップ支援に注力してきた知事の、生の声や熱意を聞くことができてよかったです」(コンサルティング業)
「横浜を拠点に低アルコール商品を販売しています。静岡県は酒蔵が多数あるので、まずは各市町村の酒蔵との取引から初め、将来的にはサテライトオフィスを構えることができたらと構想中です」(小売業)
「静岡県のイノベーションシティといえば浜松だと思っていたのですが、他の市町村もスタートアップ誘致に注力していることを知り、イメージが変わりました」(人材派遣業)
「観光地や施設を中心に体験コンテンツを提供しています。現在は伊東市でプロジェクトを実施していますが、観光資源が豊富な静岡県で、さらなる展開を見据えて参加しました。静岡県内はもちろん、名古屋、大阪、京都での需要が高いビジネスのため、東名阪すべてのアクセスが良好な静岡県に拠点を設けるメリットは大きいかもしれません」(情報通信業)
サテライトオフィスしずおか情報発信ライター・安光あずみ(やすみつあずみ)
「静岡県ビジネスマッチングセミナー」は、静岡県のスタートアップ支援施策や、各自治体の強み・課題など、事業進出に向けて知りたい情報を半日でまとめて得ることができる、充実の内容でした。
各自治体単位でも、説明会やビジネスコンテストを随時開催しているため、地域の生の声を聞き、直接相談できる機会は今後も多数あります。本セミナーに参加できなかった方も、気になる自治体のイベントへ参加してみてはいかがでしょうか。静岡県がもつ大きなポテンシャルを活かし、ビジネスチャンスを掴みましょう。
【安光あずみプロフィール】