「地元と県外企業が交流する機会を増やしたい」――御殿場を知り尽くしたプロが語る地域の魅力

静岡県出身で時之栖ツアーズのシニアマネージャーである加藤弘一朗(かとう こういちろう)さんは、およそ20年ものあいだ御殿場市の観光事業に携わってきました。時之栖は複合レジャー施設「御殿場高原 時之栖」など静岡県内に多数の温泉施設やホテルを展開するほか、企業のワーケーションなども手掛けており、県外企業からも注目を集めています。加藤さん自身も都内企業と積極的に関係をつくり、地域とつなげる取り組みを行ってきました。
「地元企業と県外企業が交流する機会を増やしたい」と語る加藤さん。そんな頼もしい「地域のプロ」に、人脈のつくり方や地域の魅力、課題について聞きました。
加藤 弘一朗さん
静岡県藤枝市出身。2003年4月株式会社時之栖入社。宿泊部門のフロントマネージャーや宿泊営業マネージャーなどを歴任し、営業部長に就任。組織の改編に伴い、2022年より時之栖ツアーズ株式会社に出向。御殿場市観光協会と裾野市観光協会の理事も務める。
豊富な資源を活かしたワーケーション、コワーキングスペースの運営を手掛けて見えてきた次なるビジョンとは?
──時之栖では、ワーケーション事業も手掛けられていると聞きました。
「ワーケーション」という言葉が聞かれる前から、弊社では企業研修を実施してきました。その経験の蓄積もあり、地元の自治体から依頼を受けてプログラムを組むことが多いです。
──具体的にはどのようなプログラムを提供していらっしゃるのですか?
弊社の「御殿場高原 時之栖」という施設では、宿泊施設や温泉のほか、たくさんのアクティビティをご用意しています。サウナつきの温泉施設や体育館、サッカーグラウンドもありますし、写経や瞑想の体験ができる場所もあります。セグウェイで移動も楽しんでいただけます。それだけ豊富な選択肢があるので、企業の方にご提示してお好きなものを選んでいただくようにしています。
──実際にはどのような企業が利用されているのですか?
弊社が都内から約1時間少しの距離感という事もあり、やはり首都圏のお客様が多いです。業種はIT系が多い印象です。リモートワークがしやすいので、ワーケーションと相性がいいのだと思います。
──「御殿場高原 時之栖」にある御殿場高原ホテル内にはコワーキングスペースを設けられていますね。
はい。元々レストランだったところをリノベーションして、2021年にリニューアルオープンしました。改修の際には周りの目が気にならないように仕切りを設置するなど、お仕事に集中していただけるよう工夫しました。
──コワーキングスペースを訪れるのはやはり県外の企業の方が多いですか?
施設に宿泊していただいているお客様にご利用いただくケースが多いですが、最近では学生さんや地元のフリーランスの方々も増えてきた印象があります。
今後、コワーキングスペースでそういった地元の方と県外から来られた方との交流が生まれたら面白いですよね。コミュニティマネージャーとしてそんな機会を生み出してみたいです。
地域のプロから見た、御殿場の魅力と人脈のつくり方

──およそ20年ものあいだ御殿場の観光業に携わってこられた加藤さんから見て、御殿場でビジネスをする魅力とはなんでしょうか?
まずは交通の利便性が高いことですね。御殿場は交通のハブになっている場所です。御殿場ジャンクションで東名高速道路と新東名高速道路がつながっており、山梨県から東富士五湖道路も接続しています。都内などから小田急やJR高速バスも出ているので、本社が東京にあっても行き来しやすいのは大きなメリットだと思います。
素晴らしい景観もあります。御殿場から臨む富士山は、他の地域から見るより感動の度合いが全く違いますね。
それから最近特に感じるのは、御殿場でビジネスをされている若年層の方々がとても元気なんですよね。御殿場出身の方がUターンして御殿場を盛り上げる起点になっている例もあり、ビジネスがしやすい環境になっていると感じます。
──加藤さんは日々、県内外の様々な方々と関わっていらっしゃると思いますが、県外企業の方に向け、人脈のつくりかたについてアドバイスがあればお願いします。
私にご相談いただければ、地元の方とおつなぎしますよ(笑)。関係を構築するには肩の力を抜いて交流することが大切だと思いますね。とはいえビジネスの話をしたいのが本音だと思いますので、私もそうした話のできる機会を創出していけたらいいなと思います。
まずは新しいビジネスが生まれる機運をつくることから。県内外のつながりから見えた、いま地域に必要なこと
──いま、御殿場や静岡という地域に必要なのはどのようなことだと思いますか。
まだ地域における課題が浮き彫りになっていない段階だと思います。自治体と民間事業者が連携し、新しいビジネスの発想が生まれる機運を醸成していく必要があるのではないでしょうか。
──例えばどんな連携の仕方が考えられますか。
最近、大手のOTA(オンライントラベルエージェントの略。実店舗をもたないインターネット上の旅行会社)と地元企業、自治体をおつなぎしました。OTAのサービスを地元企業により活用していただければ、そこで新たなユーザーを獲得できます。さらにユーザーのデータも蓄積されるので、その分析を通して課題が見えてくるかと思います。これがまず第一歩。DXへの土台を構築します。その先に、エリア事業者との取り組みと、さらなる広域連携へと繋がっていくものと考えています。まずはこうした地域とのDXに繋がる取り組みを今後も増やしていきたいです!
地域のキーパーソン・加藤さんに聞きました!
──静岡県の好きなグルメは?
一番は、やはり地元御殿場の、レストラングランテーブルで食べられるスペアリブですね。
目の前のグリルで焼かれるスペアリブは、驚くほどジューシーで、香ばしく、スパイシー。
手で持ってかぶりつくのが醍醐味です。お客様とお食事する時は必ず頼みます。
他には、御殿場だと根上酒造さんの「金明」大吟醸は最高でした。あまり世に出回ってないんですが、たまたま口にする機会があり、日本酒とはこんなにもフルーティーで飲みやすいのかとびっくりしましたよ。
また、藤枝市の出身として、地元の「酒ケーキ」をおすすめしたいですね。強烈なインパクトがあって、地元にいたころから今でもたまに食べたくなります。同じく地元の「三笠アイス」もおいしいですよ。昔なつかしい味がします。
──静岡県でおすすめ、あるいは行ってみたい場所は?
まずは御殿場時之栖の源泉茶目湯殿をお勧めしたいです。眼前に富士山を眺めながら入る、展望フィンランド風サウナは感動の一言です。このロケーションは日本の中でもトップだと思っています。
他には熱海のFuuaさんに行ってみたいですね。海と夜景を見ながらお風呂につかりたい。それから最近仕事で見に行った、浜松市にあるサウナ天竜さん。川沿いに設置されたテントサウナと、目の前には驚くほど綺麗な水質の川。水風呂代わりに川にダイブするんですが、前回は話を聞きに行っただけなので、今度はちゃんと体験しに行きたいです。
なんだか温泉やサウナばっかりですね(笑)
──オフタイムの過ごし方は?
仕事が趣味みたいになっているんですよね…。高一と中一の娘たちも部活が忙しくて(笑)。貴重な休みにはゆっくりしていることが多いです。
静岡県サテライトオフィス情報発信ライター・まゆ
取材中、加藤さんは「地元と県外企業の交流の機会を増やしたい」と繰り返されていました。これからの御殿場、ひいては静岡県の観光業がどうなっていくのか目が離せません。
【まゆ プロフィール】