【サテライトオフィス視察ツアーレポート~藤枝市・焼津市~】豊かな自然と地域の暮らしに結びついた地場産業に触れ、ビジネス拠点の可能性を探求するツアー

地方でのサテライトオフィス開設を検討している県外企業の方を県内にお招きし、コワーキングスペース等の視察や地域企業等との交流を通じて、静岡でのオフィス開設を検討できる「静岡県内視察ツアー」が開催されました。
参加申し込みを頂いた企業の要望に応じて行程を作成するオーダーメイド型で実施し、参加者は、産業や地域資源など各市の特性や地域課題についての現状を知り、地域に根ざした事業展開を見据えたサテライトオフィス開設の可能性を探りました。
今回は、静岡県の中部にある藤枝市と焼津市で開催された視察ツアーについてレポートします。
ツアー概要
1日目(藤枝市)
〜視察〜
・未来共創ラボ フジキチ
・サードプレイスDラボ
・藤枝市産学官連携推進センターBiViキャン
~視察・交流~
・え〜らBASE
~食事~
・魚時会館 おさかな亭
2日目(焼津市)
〜視察〜
・PLAY BALL! CAFE
・やいづテレワーク専用施設Anchor(アンカー)
~視察・交流~
・焼津PORTERS
〜企業見学〜
・TUNALABO(株式会社JIN)
~食事~
・食事処かどや
静岡県中部エリアに位置する藤枝市と焼津市は志太地区と呼ばれ、県庁所在地の静岡市に隣接しています。
藤枝市は、JR藤枝駅を中心とした市街地と自然豊かな中山間地域を有し、都市部の利便性とほどよい田舎が共存しています。また、旧東海道沿いには宿場町の面影が残っています。近年は、“心に豊かな暮らし”の実現と地域経済力の向上を目指し、産学官で藤枝ICTコンソーシアムを組織し、まちづくりへのICTの活用を進めています。
焼津市は、6年連続水揚げ額日本一の焼津漁港ほか、2つの漁港を有し、水産業・水産加工業が基幹産業です。こうした特色を活かして、海に面した漁具倉庫をリノベーションしたテレワーク及びサテライトオフィスの拠点を整備しています。JR東海道線は2駅、東名高速道路のICも2か所あり、首都圏・中京圏へのアクセスの利便性も高い地域です。
参加者
●株式会社タンシキ
秋山 和久(あきやま かずひさ)さん・立花 聡子(たちばな さとこ)さん
○本社所在地:神奈川県川崎市多摩区登戸503-2
○事業内容:経営・マーケティングや社内・社外広報活動のコンサルティング
○サテライトオフィス開設検討理由:静岡での事業拡大、新規顧客獲得
○会社HP:https://tanshiki.jp/
●株式会社システムフリージア
富山 敬(とみやま けい)さん・渡辺 和也(わたなべ かずや)さん
○本社所在地:東京都千代田区神田佐久間町1-8-2 第一阿部ビル4F
○事業内容:システム開発事業、エデュケーション事業
○サテライトオフィス開設検討理由:新規顧客獲得による事業拡大、人材確保(地元採用や既存の従業員のエンゲージメント向上)、地場企業のニーズ調査
○会社HP:https://www.sys-freesia.co.jp/
ツアーで感じた行政と民間の強い連携

藤枝市・焼津市それぞれで行った交流会では、市の担当者も交え、自治体の特徴や地域の課題、サテライトオフィス開設にあたっての支援制度などの説明を受けました。
また、サテライトオフィス開設後の事業展開を具体的にイメージするため、コワーキングスペース等の施設の設備や環境、周辺環境を確認しました。
実際に視察ツアーに参加して感じた自治体の魅力について、参加された企業の代表者に伺いました。
秋山さん: 弊社の主な事業は、経営やマーケティングのコンサルタントです。社内外への広報活動、メディア露出、報道対応のほか、企業理念や中期経営計画策定のサポートなどを手がけていて、大手企業を中心に取引先を広げています。私は広報活動においては、媒体、発注、受注のそれぞれの立場を経験しているので、顧客の課題発見や社内の合意形成、意思決定の支援までサポートできるのが特徴です。
ツアーに参加して感じた両市の魅力は、藤枝市も焼津市も、人のつながり、連携がいいことです。役所と民間がお互いに手を取り合っているという印象が強いですね。
弊社の事業ですと、日本全国どこでも進出できますが、ワーケーションなど一時的にその土地で仕事をするのではなく、きちんと拠点を構え、地域の人たちと一緒に地元の魅力を発信する仕事をしたいと考えています。
その点でも官民の連携は重要だと考えています。地方拠点の具体的な場所は、まだ決まっていませんが、私は大学時代の4年間を静岡市で過ごしました。ですから、地方に拠点を置いて事業展開するなら静岡県中部を第一号に、という思いが強いです。
富山さん: 弊社は、東京・秋葉原に拠点を置き、金融、小売、介護福祉、官公庁を中心に幅広い業界のシステム開発を手がけています。今後は、地方のDX推進のサポート事業を進めていく予定です。
1日目に伺った藤枝市は、他の地域では類を見ないくらいDXに対する取り組みに投資をされていることを知り、事業のスタートがしやすそうだという印象を受けました。また、藤枝市も焼津市も、テレワークのために今後さらにきれいで利用しやすい施設を整備していく構想があり、市としてもサテライトオフィスの誘致を積極的に行っていくという姿勢を感じました。これからサテライトオフィスの開設にチャレンジする事業者に対する手厚いサポートも期待できます。
起業&移住者に聞く。人とのつながりや資源の活用で幅が広がる事業の可能性
焼津市では、まず焼津駅から徒歩5分の商店街の中にあるPLAY BALL! CAFEに伺いました。調剤薬局兼住居だった3階建ての建物をリノベーションし、1階はカフェ、2階には自社オフィスと会員制のシェアオフィスを整備。かつて住居だったスペースを残した和室や人工芝のテラスもあり、地域の人たちのコミュニティスペースとしても機能しています。
運営する株式会社ナインは、東京に本社があるWEB制作会社。焼津市出身の代表が地元の賑わいづくりに貢献したいと、2018年に、かつてのはんぺん製造工場をリノベーションして、ドロップインのコワーキングスペースと自社オフィス(現在、自社オフィスはPLAY BALL! CAFE2階に移転)を備えたHomebase YAIZUを立ち上げました。
2021年に開設されたPLAY BALL! CAFEのマネージャーを務めているのは水野優子さんです。埼玉県出身で、バリスタ経験のある水野さんは、株式会社ナインの面接に臨んだ際に事業計画が進められているPLAY BALL! CAFE の構想を聞き、WEB制作とカフェ運営のどちらも手がけられる環境に魅力を感じ焼津市に移住。まちづくり、賑わいづくりに関わりながら、地元焼津の店舗や企業のWEB制作、商品パッケージ等のグラフィックデザインなどの仕事を受注しています。
水野さん: まだ施設の影も形もない、さらに言えば、採用すら決定していない時点で焼津市に住居を探し始めました(笑)。どうなるかわからない不安より、その環境で自分にできることがあるのかもしれないというワクワクから飛び込んでみたいと思ったんです。
現在は、カフェの運営とそこで行うイベント企画を担当しています。初めての経験も多いですが、コミュニティデザイナーというお仕事をさせていただく中で、自身も焼津のまちで人脈を広げながら、ここで出会った方々のプレイボールを応援することに非常にやりがいを感じています。
写真展などのギャラリーや屋台を並べたマルシェ、ワークショップの他に、フリーランス向けの確定申告講座などビジネス関連のものもあり、ジャンル問わず開催しています。クリエイターの作品展示、店舗を持たない人の販売スペース、家と会社以外のサードプレイスなどといった需要があり、なにかを始めたい人が“PLAY BALL!”=スタートを切るための場所、その可能性を探るコミュニティとして機能しています。
また、カフェの運営母体はWEB制作やデザインの会社なので、地域の事業者さんがふらりと遊びに来た時に、WEBサイトや商品パッケージのリニューアルの相談を受けることもあり、社内外ともにクリエイターとのマッチングもしています。
焼津にサテライトオフィスを開設する、新たに起業をされるという事業者さんのお役にも立てると思います。

PLAY BALL! CAFEのある駅前商店街から10分ほど歩けば、そこはもう焼津漁港。
使われなくなった漁具倉庫をリノベーションして、飲食・宿泊機能を備えたテレワーク拠点施設として整備する計画が進行中の焼津PORTERS の視察、焼津市役所や商工会議所の担当者との交流の時間を持ちました。
焼津PORTERSは、令和5年5月にコワーキングスペース・サテライトオフィス施設として一部オープンし、その後も飲食店や長期滞在が可能な宿泊施設の整備が計画されています。
サテライトオフィスとして使える部屋の内装は入居者の希望に合わせてリノベーションするそうです!
焼津市商工課の担当者から、サテライトオフィス誘致に力を入れていること、焼津の主産業である水産加工業のEC化や事業承継などで、外部からの新たな活力に期待していること、また、市内をめぐるサイクリングや花沢の里を代表するハイキングコースなど、水産以外の焼津市のさまざまな魅力をPRし、これらを資源として活用してもらえる事業者を呼び込みたいと話がありました。
サテライトオフィス開設に係る焼津市の補助金、テレワーク交付金など充実した支援の説明もありました。
続いて、焼津市での創業・移住の先輩、株式会社JINの代表・関根仁さんにお話を伺いました。株式会社JINは、焼津みやげやギフトとして、またネット販売でも人気の「おつな」を製造・販売するTUNALABOを運営しています。料理人だった関根さんは、東京・池尻大橋でツナの専門店をオープンしましたが、もっと美味しいツナをつくりたいと焼津市に拠点を移し自らも移住しました。焼津市には、水産加工業以外にも魅力あるビジネス展開の可能性を秘めた素材がたくさんあると言います。
関根さん: 焼津は水産加工業が盛んなまちで、水揚げ量が多いだけでなくマグロの種類も選べます。焼津市はツナ缶発祥の地でブランディングに最高のストーリーになりますし、食材としても素晴らしい駿河湾の海洋深層水もあることから、自社商品をブラッシュアップするためにここを拠点にしました。さらに東京、名古屋、大阪の3大都市を商圏として狙える、流通面でも優れた地域です。
海岸線では富士山が見え、小泉八雲、ヤマトタケルノミコト、地酒、海、山など、自然や歴史・文化的な要素もバラエティに富んでいてストーリーは事欠かず、アウトサイダーから見ても新しいブランドをつくれる場所だなと思います。土地代が安いのも魅力の一つです。富士山静岡空港に再び国際線が就航すれば、コロナ禍以前のようなインバウンド需要も次第に戻ってくるでしょうし、今後は観光振興をしてくれる事業者さんとの連携を模索していきたいと思っています。
その後、TUNALABOへと場所を移しました。店舗では、来店客に全種類のツナの試食を提供するという販売スタイルをとっています。ツアー参加者も、桜海老&しらすといった地元の食材をはじめ、バラエティ豊かにアレンジされたツナを試食しながら、関根さんの事業構想や移住後の暮らしについて質問していました。
自社事業の具体的な展開をイメージできた視察ツアー
秋山さん: 弊社では、地方創生として、まちの魅力を再発見しシティプロモーションやシビックプライドを醸成するといった自治体の支援実績があります。静岡の産業はポテンシャルがあるのに活かし切れていない。以前住んでいた時から、ずっともったいないと思い続けていたことです。
国際関係にも興味があるので、インバウンド需要を喚起する静岡県内広域で連携した観光情報の発信や中長期を見越した外国人就労の先進事例づくり、外国人在住者にもインバウンド需要喚起を担ってもらう取り組みを、自治体とともに進めていけたらと思います。
仕事はリモートでも可能なので、まずは2拠点で動きつつ、その後は地域に拠点を構え、まちの魅力を発信することで住んでいる人が楽しくなるよう、地元の人たちと連携した地域活性化のお手伝いができればと考えています。その土地の魅力発信には、官民の連携は欠かせませんので、今回のツアーではその当事者からもお話を聞くことができ、とても参考になりました。
富山さん: サテライトオフィスの開設は、実は広島県でも検討しているのですが、同程度の都市の規模でも静岡県は東京からのアクセスがいいという点は非常に魅力的です。
地方の中小企業ではDXがこれからの課題です。我々が自社で開発するシステムであれば、気軽にできるIT化、DXの推進をコストダウンを図ってご提案できます。エンジニア経験者が先頭に立ったプロジェクトですので、安心して導入していただけると思っています。
静岡県の中部地域にはターゲットとなる中小企業が多く、自社の事業展開としても大きな可能性を感じます。静岡に拠点を設けたら、スタッフは移住して常駐し、地元のお客さんとコミュニケーションを密にして課題解決を一緒に考えていきますので、人との繋がりで仕事も広がりそうです。また、弊社はエンジニア育成にも注力しているので、地元在住者の雇用やIターン・Uターンの受け皿にもなりたいと思っています。
静岡県サテライトオフィス情報発信ライター・竹内友美(たけうちともみ)
2日目の焼津市の視察に同行させていただきました。参加された両社とも、「具体的にサテライトオフィスを構えるなら」という意識を持って、立地や設備を確認されていました。また、移住されてきた株式会社ナインの水野さんや株式会社JINの関根さんのお話からは、焼津市の地域性や魅力、課題などがわかり、具体的なイメージを持って事業展開の可能性を探ることができたのではないかと思います。
【竹内友美プロフィール】