「サテライトオフィスでの業務を通じ、藤枝市と大都市圏をつなげる潤滑油になりたい」──。大手広告会社・電通出身のコンサルタント、村松正基さんは語ります。2020年に同社を退職、2022年6月に自身のふるさとである藤枝市のコワーキングスペース「フジキチ」にサテライトオフィスを開設しました。月の半分を東京、もう半分を藤枝で過ごし、ふるさとの活性化のために奔走しています。村松さんによると「藤枝はやり方次第で全国区になれる」。電通時代に築いた経験や豊富な人脈を活かし日々奮闘している村松さんに、フジキチの魅力やサテライトオフィスを拠点とした業務を通じて叶えたい夢についてお聞きしました。


◎会社概要
株式会社MLDO
広告会社での経験を活かし、経営・事業戦略、人事分野など多岐にわたるコンサルティングを様々な業種に対して展開している。本社は東京都渋谷区。2022年6月、静岡県藤枝市のコワーキングスペース「フジキチ」に入居する。

本社所在地:東京都渋谷区代官山町8-7 Daiwa代官山ビル
サテライトオフィス所在地:静岡県藤枝市駅前1-8-3 FUJIEDAmikine1階(フジキチ内)

◎インタビュー対象者紹介
株式会社MLDO代表取締役 村松正基(むらまつ まさき)さん

高校卒業まで静岡県藤枝市で過ごす。大学卒業後、電通に就職し、営業や人事の経験を積む。2020年に退職後、2021年1月より個人事業主としてコンサルタント業を開業、のちに法人化。社会保険労務士やファイナンシャル・プランニング技能士といった資格、電通時代に築いた豊富な人脈を活かし、経営や人事など多岐にわたる分野のコンサル事業を展開している。

藤枝は「素材はいいのにもったいない」。そんな想いで入居を決めた

▲コワーキングスペース「フジキチ」は商業施設棟の1階に位置する
▲コワーキングスペース「フジキチ」は商業施設棟の1階に位置する

──まず、代表を務められているMLDO社について、事業の概要を教えていただけますか。

経営や人事など、ビジネスに関わる様々な分野のコンサルタント業を展開しています。実は開業したのは最近なんですよ。2020年までは広告代理店の電通の社員でした。50代半ばに突入し次のキャリアについていろいろと考えていたところ、会社が早期退職制度を始めたんです。これもタイミングだと思い、退職を決めました。

会社員だったころ、社会保険労務士やファイナンシャル・プランニング技能士の資格を取得していました。その知識や電通時代に培った人脈を活かし、多様な業種の企業の相談に乗っています。

ちなみに本社は東京都渋谷区のレンタルオフィスです。2022年6月に静岡県藤枝市のコワーキングスペース「フジキチ」に入居し、月の半分は藤枝、もう半分は東京で仕事をしています。


──サテライトオフィスを開設したのはつい最近なんですね。藤枝とご縁はあったのでしょうか?

実は私、藤枝生まれです。高校卒業まで暮らしていたのでなじみがあります。東京での暮らしが長いのですが、会社員時代にも藤枝にはよく来ていました。というのも、藤枝駅前の再開発地域に実家が含まれていたからです。私は地権者の一人として再開発組合の副責任者を担っていました。市や地元の方々と定期的に協議する必要があったので、2008年ごろから月に1度藤枝に足を運んでいました。


──そうだったのですね。ただ、いくらなじみのある地域といっても、電通で様々な経験を積まれた村松さんなら、東京でもコンサルの依頼は十分にあったのではないですか。なぜ藤枝でもビジネスを始めようと思われたのでしょうか。

再開発の件で藤枝に通っていると、市の担当者や地元企業の方などたくさんの人とお話しする機会がありました。そうして交流するなか、私が広告会社の社員だったこともあり、藤枝には面白いモノやサービスが多いと気がついたんです。ただ正直、素材はいいのだからもう少しPRを上手にやればもっと人気が出そうなのに、もったいないなと思うことがしばしばあったんですね。それを何とかできないかな、と思ったのがきっかけです。

藤枝は私の大切なふるさとですから、全国の多くの方が藤枝を知らないままなのは残念だなと思いました。再開発では藤枝駅前に商業棟やマンション棟など、新しい施設ができまして、その商業棟内にできたコワーキングスペースのフジキチに入居を決め、ここを拠点にして藤枝のPR支援をしていこうと決めました。

電通時代の人脈を活かし地元企業をマッチング。拠点・フジキチの魅力は

──村松さんはフジキチをどのように利用されていますか。

仕事場としてとても重宝しています!藤枝には藤枝商工会議所や岡部町商工会といった団体があり、フリーランスも含め多くの地元企業が所属しています。そうした団体と連携し地元企業の「こんなことしたい、でもやり方がわからない」といった課題の解決に尽力しています。フジキチでは主にそうした相談対応やオンライン会議、資料作成のデスクワークなどに取り組んでいます。

月の半分は東京で働いているのですが、やはり東京のほうが鮮度の高い情報が早く豊富に集まります。東京で見知った最先端のビジネス情報を藤枝に持ち帰り、地元のビジネスパーソンの方々と共有するようにしています。


──村松さんから見て、フジキチというオフィスの魅力はどのようなところですか。

まずは利便性ですね。フジキチは藤枝駅から1分もかからないところにあるので、アクセスは抜群です!

それから人の出入りが多くにぎやかなところも魅力的です。運営会社や入居者自身が主催するセミナーやセッションが開催されることもあり、入居者同士の交流が盛んです。和気あいあいとした雰囲気で仕事をしていると気持ちも明るくなりますよね。

藤枝にサテライトオフィスを開設したことでコスト面でのメリットも感じています。「藤枝市オフィス等立地推進事業費補助金」制度を活用し、市から使用料の補助を受けています。節約になり本当にありがたく感じています。


──サテライトオフィスも活用されながら、これまでどのようなビジネスが生まれましたか。

私は電通にいたころ長らく営業分野の担当もしていましたから、様々な企業とのつながりをもっています。そういった企業や電通時代の同僚と地元企業をマッチングすることで様々な事業が生まれたり、地元企業のビジネス拡大に寄与できればと思っています。

たとえば、藤枝の企業が新規営業開拓の際に使う自社紹介パンフレットを作りたいという相談を受けました。今までだとデザインの得意な社員になんとなく任せておく、といったことが多かったらしいのですが、私の方で戦略的なデザインワークができるアートディレクターを巻き込んでご紹介しました。ほかにも、自社製品を全国で売りたいけれど、製品を流通させる方策がないとお困りの企業と商社をつなげる動きなど、それぞれの課題に沿った解決策を一緒に考えて取り組んでいます。

チャレンジに寛容な街、藤枝。大都市圏とつなぐ潤滑油になりたい

──フジキチに入居されてからまだ数カ月ですが、これからフジキチをどのような場にしていきたいとお考えですか。

フジキチは今も入居者同士の交流はあるのですが、より深めていきたいと思っています。交流のなかから面白いビジネスが生まれるかもしれませんからね。

実は私、東京でもう1カ所コワーキングスペースに入居しているんですね。そのスペースは運営者が入居者同士のコミュニティを活性化させるのが上手で、入居者同士がより深く関わっているんです。フジキチでも参考にすべきと思い、運営元の藤枝江﨑新聞店様をご案内し、正式に見学させてもらいました。

見学を経て、そのコワーキングスペースにならい、フジキチでもコミュニケーション・ツールの「Slack」を導入しました。これは参加者がチャット形式でスムーズにやり取りできるサービスで、導入後は入居者同士のやり取りがより活発になりました。入居したばかりの方だと挨拶するタイミングが難しいといった問題もあると思うのですが、Slackなら簡単に投稿できますからね。新しい方もなじみやすくなったと思いますよ。

将来的には、そのコワーキングスペースとフジキチが相互利用などでうまく連携できたらいいなと思っています。そうすれば両地域の入居者同士が行き来しやすくなりますし、もしかしたらその連携で新しいビジネスが生まれるかもしれません。


──フジキチもどんどん盛り上がっていきそうですね。村松さんはフジキチを拠点にしつつ、どのようなお仕事をしていきたいですか。

藤枝の企業と大都市圏の企業や人材をもっとつなげて、様々なビジネスが生まれたらいいなと思っています。

以前、電通社員だったころに面識のあった「アトラエ」様というIT企業を藤枝市に紹介しました。同社は、長年のキャリアをもつシニア人材のスキルを様々な課題を抱える企業に紹介するマッチングプラットフォーム事業を展開しています。このサービスには大企業での勤務経験をもつ方が多く登録されており、人材確保に悩む藤枝の企業の助けになると考えました。

協議を重ねた結果、2022年7月に藤枝市やアトラエ様、地元商工会議所なども含めた四者協定の締結が実現しました。アトラエ様は東証プライムに上場する有名企業ですが、地方自治体と組むのはこれが初めてです。今後、ほかの市町村とも同じような協定を結ぶ例が増えてくるかもしれません。このように藤枝にはフォロワーじゃなくてパイオニアになってほしいんです。私は藤枝が全国区になるために、そのサポートをし得る企業や人材を紹介する潤滑油のような存在になれたらと思っています。


──まさに村松さんのご経験が活きた事例の一つですね。今後もこうした実績を重ねていかれると思いますが、それらを通じて村松さんが目指しているものとはなんでしょうか。

アトラエ様との協定の例からもおわかりのように、藤枝にはチャレンジに寛容な土壌があります。市というとお堅いイメージがあるかもしれませんが、私がこの協定について相談にお邪魔したときも、とても前向きに話を聞いてくれました。

市が応援してくれるという素晴らしい環境を存分に活かして企業や人のマッチングを進めていきます。こうした取り組みを通し、藤枝、ひいては中部地区、もっと言えば静岡県の活性化につなげていければと思います。県外の方に、静岡県と言えば「藤枝市!」というアピールができたら嬉しいです。

私が入居しているフジキチは2022年10月にグランドオープンを迎えます。より多くの方に来ていただき、もっとたくさんの交流が生まれてほしいですね!

サテライトオフィスで働く村松さんに聞きました!

──静岡県で好きなグルメは?
藤枝市は海に近いこともあり、魚が絶品です。居酒屋でカツオのお刺身や焼いた太刀魚をいただくのが仕事終わりの楽しみですね。加えて藤枝市には「喜久酔」「初亀」「志太泉」「杉錦」と4つの酒蔵がありどれもおいしいので、いつも悩みながら飲んでいます(笑)。

──静岡県でおすすめの場所、あるいは行ってみたい場所は?
数年前にできたウイスキーの蒸溜所「ガイアフロー静岡蒸溜所」にぜひ行ってみたいです!静岡市北部の「オクシズ(奥静岡エリア)」と呼ばれるところにあるのですが、周囲の方から絶対行ったほうがいいと勧められています。近年、全国的にウイスキーがブームになりましたよね。すでに著名な銘柄があるなか、新しく製造に挑戦するという取り組みそのものにも魅力を感じます。

──オフタイムの過ごし方は?
地元の日帰り温泉に行くか、東京との往復移動をしているか、のどちらかですね(笑)。
藤枝市の天然温泉「瀬戸谷温泉ゆらく」でゆっくりすると本当に癒されます。
休日を東京⇔静岡の移動にあてることも多いです。そこでおすすめなのは高速バス。藤枝駅南口から渋谷のマークシティまでの直行便があるんですよ。静岡駅まで行けばバスタ新宿までの直行便が1日何本も出ています。3時間半もあれば着きますし、新幹線のおよそ半分の費用で済むので重宝しています。

静岡県サテライトオフィス情報発信ライター・まゆ

冷静な語り口の一方、村松さんの瞳からは藤枝を全国区にしてみせるという熱い想いを感じました。サテライトオフィスを活用しながら奮闘されている、これからの藤枝を担うキーパーソンのお一人です。
【まゆ プロフィール】


サテライトオフィスを開設した「フジキチ」はこちら

コワーキングスペース フジキチは、「「やる気」が出会う場をつくり、藤枝から明日に貢献するイノベーションを起こす」をミッションに、株式会社藤枝江﨑新聞店が運営をするコワーキングスペースです。

JR藤枝駅から徒歩60秒に立地。ゆったりと仕事のできる広々としたワーキングスペースはもちろん、セミナーブースやレンタルスペースもご案内しており、定期的なセミナーの開催もしています。

藤枝市内外の事業所、市民、行政、専門家が、自らのアイデアや想いを、多様な人々とともにカタチにし、本気でイノベーションを創発するコミュニティスペースです。

職場でもない、自宅でもない、サード・プレイスでゆったり効率よく仕事をしてみませんか?
詳しい情報は下記公式HPよりご確認ください。

藤枝駅前コワーキングスペース未来共創ラボ フジキチ
・営業時間: 9:00〜21:00、事前予約の内覧は平日・土曜の9:00〜17:00に実施/休館日はフジキチの定めた日
・住所:〒426-0034 静岡県藤枝市駅前1丁目8-3 FUJIEDAmikine 1F
・URL:https://www.fujikichi.net
・セミナー詳細:https://fujikichi.peatix.com/
●料金
・個人(シェアファミリー)および法人(3名まで)会員:月額12,000円
・プライベートオフィス:月額12,000円~36,000円