インターン生の熱意が浜松サテライトオフィスの開設に!システム開発会社が描くサテライトオフィスの在り方とは?
メイガス/写真1_サテライトオフィスで働く香月様・インターン生.jpeg)
東京都新宿区に本社を構える株式会社メイガス。福島県会津若松市のサテライトオフィスに続く二拠点目となるサテライトオフィスを2023年5月に、静岡県浜松市に開設しました。開設にあたっては、静岡県への企業進出をサポートする「ICT・サービス関連企業進出事業費補助金」を活用しました。「高度ICT技術者」を配置することで、クライアントの要求に応える自社の開発能力のアップを目指しています。
浜松市へのサテライトオフィス開設に至った経緯のほか、現状の事業展開と今後の展望について、取締役の佐藤裕司さんと浜松サテライトオフィスの香月祥さんにお話を伺いました。
会社概要
株式会社メイガス
https://www.magus-inc.co.jp
・事業内容
2014年2月設立。東京本社をはじめ、会津若松(福島県)と浜松(静岡県)のサテライトオフィスでB2B,B2B2Cのシステム開発、システム保守・運用を行っています。
各拠点には会津大学、静岡大学などの長期インターン生(アルバイト契約)が合計30名程在籍し、実際の仕事を通じて次世代の若手エンジニアの育成にも力を入れています。
・本社所在地 東京都新宿区市谷左内町5 Lowp201
・会津若松サテライトオフィス所在地 福島県会津若松市一箕町大字鶴賀上居合134-3 Vアクセスビル
・浜松サテライトオフィス所在地 静岡県浜松市中区和地山1-7-18 チサンマンション浜松和地山213
インタビュー対象者紹介
・取締役 佐藤裕司(さとう ゆうじ)さん
明治大学卒業後、ソフトウエア開発会社に入社。大手ベンダー企業へのSES事業の営業として従事。その後、友人が立ち上げたメイガスの前身の会社に入社。2014年メイガスの立ち上げに参画。
・浜松サテライトオフィス 香月祥(かつき しょう)さん
佐賀県出身、静岡大学情報学部行動情報学科所属、令和6年度院進予定。 大学では、言語・音声処理の研究室に所属、音声・対話データを用いた精神疾患の自動診断の研究を行っている。 2021年の大学休学時にメイガスのインターンに参加。復学時に浜松サテライトオフィス開設に携わる。浜松サテライトのリーダーとして日々奮闘中。
クライアントの企業価値を高めるシステム開発
メイガス/写真2_佐藤様が本社で社員と働いている写真.jpeg)
――まず御社の事業内容を教えてください。
佐藤さん:会津大学創立時のベンチャー企業が当社の源流で、2014年に株式会社メイガスを設立しました。東京本社、会津若松、浜松の三拠点を合わせて役員含めた従業員16人、学生の長期インターン(アルバイト契約)生30人程が在籍しています。学生は100%子会社の株式会社PLISE(プライズ)に所属しています。
海外企業へ仕事を外注する「オフショア」ではなく、この三拠点で「ニアショア」開発をしています。
事業内容は、企業からの依頼でオーダーメイドの業務システム開発、保守・運用を手がけており、クライアントは年商規模10〜500億の中堅中小企業が中心です。企業の新規事業や、第二成長期へ進む基盤となる業務システムを開発し、クライアントの企業価値を高めることを目指しています。
開発事例としては、保育園のクラウド型ICTサービスの開発、コンテンツプロデュース会社の印税分配システム、教育関連サービス提供会社のアセスメントサービスの開発、ダンス教室運営会社の基幹システム(会員管理、講師管理、入金管理等)などが挙げられます。
地方拠点を開設するワケとは?開発能力を高める策について
メイガス/写真3_浜松サテライトの写真.jpeg)
――サテライトオフィスを浜松に開設した経緯を教えてください。
佐藤さん:浜松には2023年5月にサテライトオフィスを開設しました。きっかけは香月さんの存在です。東京本社で長期インターン生を募集したときに、当時コロナ禍で浜松にある静岡大学を休学中だった香月さんからの応募があり、当社にインターン生として参加いただきました。
働いている中で、香月さんの「会津若松サテライトオフィスのような取り組みをしたい」という強い熱意があり、それが浜松にサテライトオフィスを開設する決め手となりました。大学に復学するタイミングで、開設の準備に取り掛かりました。
――そもそもサテライトオフィスを開設した理由を教えてください。
佐藤さん:人材を確保、育成して当社の開発能力を高める目的があります。その点においては「学生」というラベルで区別はしないことにしています。会津若松には社員が常駐していますが、浜松に常駐している社員はいません。そういった環境で学生の能力を高めて力を発揮させることができるかの当社にとってのチャレンジでもあります。
学生にとって働きやすさを重視したサテライトオフィス立地
――浜松のサテライトオフィスはどのような場所に開設したのでしょうか?
佐藤さん:静岡大学浜松キャンパスの目の前にあるビル内に開設しました。物件選びで重視した点は、太陽光が入るかということと、2階以上の物件であることです。業務を行うにあたって、明るい雰囲気で仕事ができる空間を大切にしました。
――サテライトオフィスの開設までどのように進めていきましたか?
香月さん:サテライトオフィスのための物件は、不動産屋で情報を集めて探しました。今後サテライトオフィスに在籍するメンバーが増えていくことを想定し、ある程度の広さがあることを重視しました。また、インターン生が通いやすいように大学の近くの物件を重点的に探しました。
開設メンバーは、私の友人の中でも特に事業意欲のある友人を中心に声をかけて集めました。メンバーは大学の工学部や情報学部に所属していて、プログラミングの経験はあるものの、全員が事業としてお金をもらうレベルではない状態でしたが、それ以上に成長していきたいという意欲を大切にしました。現在、浜松サテライトオフィスでは私を含め4人のインターン生が働いています。
――浜松サテライトオフィスの開設に当たって活用した行政サポートはありますか?
佐藤さん:静岡県の「ICT・サービス関連企業進出事業費補助金」を活用しました。「高度ICT人材確保事業」については、ハード面の整備だけでなく、人材確保に対しても助成されることが大きなメリットでした。人件費が補助されることで、サテライトオフィスの体制を整えるための余裕が生まれました。
――補助金以外で今後、行政の支援に期待することはありますか?
佐藤さん:浜松市は一定のビジネスの市場規模があり、精密機器などの産業も盛んな地域です。当社にとっても将来的な事業拡大の可能性があると感じていて、顧客の新規開拓を狙いたいと考えています。事務所開設ができたので、地域の人脈を作ることが次のステップです。浜松の成長企業、また地力のある企業とのマッチングの機会を提供してもらうことで、将来の仕事につながればと思います。
浜松サテライトオフィスの現状と今後の展望
メイガス/写真5_浜松市.jpg)
――実際にサテライトオフィスを開設して感じているメリットはありますか?
佐藤さん:現時点での当社におけるサテライトオフィスの役割は優秀な静岡大学のエンジニア人材を確保し、開発能力を上げることです。会津若松と浜松に拠点ができたことで、インターン生同士が刺激し合い、切磋琢磨できる環境ができました。
既存の社員にとっては、新たに拠点が増えることによって、会社の成長実感につながる効果もあります。また、クライアントにとっても、しっかりした経営基盤をもつ会社であることを認識してもらえる点もメリットと言えます。
今後は浜松の企業とのビジネスに発展させていきたいという狙いもあります。
香月さん:浜松は本社のある東京から比較的近いので、本社の社員が浜松のサテライトオフィスまで見に来られるアクセス性の良さがあります。
また、実際にオフィスという働く場所があることで、メンバー同士の頑張りが見えやすいことや、顔を合わせて仕事することでお互いのモチベーションを保てるというメリットも感じています。
――サテライトオフィスを開設して苦労やデメリットはありますか?
佐藤さん:デメリットは特にありません。課題はありますね。浜松には社員が常駐していないので、業務遂行力、仕事の当たり前の基準が高くない点、また意識付けがしにくい点はあります。ただ、それは想定内の課題で、当社としての挑戦と捉えています。聞ける人がすぐ傍にいないことで学生が言われたことだけをやるのではなく、考え抜いて悩んで仕事をする。そういう環境が作れていることに意味があると考えています。
――御社の人材採用・育成についての考え方を詳しく教えてください。
佐藤さん:人材採用については、学生・社会人区別なく、だれでもいいわけではありません。まず素直であること、そして成長意欲があること、加えてシビアですがプログラミング能力の素質があるかどうかが大事です。
正直、学生の育成は楽ではありません。ただ我々は元々の会社から20年来学生と共にビジネスしてきた経験が人を育てる風土となっており、「仕事=人としての成長機会の重要要素の1つ」と捉え、エンジニア育成のための初等教育プログラムを有し、またプロジェクト配属された学生に対して毎月の評価(時給への反映)もしながら業務を推進しています。当然当社の採用活動の一環でもありますが、世の中に貢献できる人として技術を携えて卒業後に大きな仕事に従事してほしいと考えています。
将来エンジニアやIT系に進みたい学生にとっては、育成の仕組みがあること、また実務経験を積みながら、かつアルバイトとしてお金を得ることができるという面で魅力的な職場に思っていただけることもあります。学生と接する中で気を付けているのは、我々が学生にとって初めて会う社会人であり、我々の一挙手一投足が彼らの仕事の基準になるということです。
――サテライトオフィスとしての今後の展望を教えてください。
香月さん:私自身としては、浜松サテライトオフィス発で新規事業を作ることができればと思います。浜松には工業系の企業が多く、また大学生も多くいるのでチャレンジしたいです。
佐藤さん:まずは、現在の会社をさらに強くするための拠点として、既存事業のアップデートをしていくこと。その先は、サテライトオフィス自体が新しい価値を生み出して独り立ちするようなことも想定しています。現状の枠を超えて、若い人が自分たちを超えていく環境を作ることができればと思います。
新たなサテライトオフィスを開設する計画ありきではなく、会社が成長した結果として拠点が増えるのが自然だと考えています。人が成長・成熟していくことが大事で、会社の規模を大きくすることより、一人一人の成長、開発力を高めることが前提にあります。
――サテライトオフィス開設を検討している方へのアドバイスをお願いします。
佐藤さん:サテライトオフィスの開設に補助金を活用するのであれば、当社が使ったようなハード面だけでなく人材にも助成される補助金をお薦めします。新たなチャレンジができる仕組みだと捉えるのが良いと思います。拠点が増えることで摩擦も起きるかもしれませんが、金銭的な支援を受けることで新しいことに挑戦できる環境に会社を置くことができます。
浜松サテライトオフィスで働く香月さんへの質問コーナー
①静岡県の好きなグルメは?
お酒を飲むことが多いので、お酒に合う遠州焼きや餃子などの遠州料理、海鮮系の料理が好きです。
②静岡県でおすすめor行ってみたい場所は?
サッカーの「ジュビロ磐田」が好きで、シーズンパスも購入してスタジアムに通っています。
③オフタイムの過ごし方は?
ドライブや釣りが好きなので海や山で過ごすことが多いです。
静岡県サテライトオフィス情報発信ライター・磯部洋樹(いそべひろき)
浜松市はベンチャー企業の誘致に積極的で、さまざまな補助制度を用意しています。メイガス様もその補助を目的に浜松へのサテライトオフィス開設を決めたのかと想定していましたが、インターン生の存在がサテライトオフィス開設の前提にあったことが驚きでした。結果的に活用された「ICT・サービス関連企業進出事業費補助金」も、技術者の獲得・能力開発に有効で、同社にとっては最適な補助金活用方法であったのでないかと思いました。
サテライトオフィスで働く学生たちが、今後同社でどのように成長して事業を拡大していくのか、また地域での役割を拡げていくのか、メイガス様の展開に注目してもらいたいと思います。
【磯部洋樹プロフィール】