バーでの出会いが下田へのサテライトオフィス開設に!伊豆の特産品を使ったクラフトリキュールを製造へ
東京・小岩でバーを経営する株式会社Fame’s(フェイムズ)。2021年7月、下田市にサテライトオフィスを開設しました。現在下田では、サテライトオフィスに併設した蒸留所で伊豆の特産品を使ったクラフトリキュールの製造を始めています。
取締役で下田のサテライトオフィスに常駐する白井健太さんに、サテライトオフィスならびに蒸留所開設の経緯や今後の展望を伺いました。
会社概要
株式会社Fame’s
HP https://shirahama-distillery.com
・事業内容
2020年8月、現在の社長・伊藤広光さんと取締役・白井健太さんが小岩で「Cocktail Bar Raven(レイヴン)」をオープン。2021年に下田市にサテライトオフィスを開設すると共に、リキュールを製造するための蒸留所開設の準備に取り掛かる。
2023年10月に酒造免許を取得して「伊豆下田 白浜蒸留所」を開設。2024年4月、「白浜蒸留所」第1弾となるクラフトリキュールを販売する。
・本社所在地 東京都江戸川区鹿骨4-32-6
・サテライトオフィス所在地 静岡県下田市白浜1520
インタビュー対象者紹介
・取締役 白井 健太(しらい けんた)さん
大分県出身。1991年6月27日生まれ。
大分大学中退後、フリーターの期間を経て上京。臭気対策機器メーカーの営業兼コンサルタントとして工場や病院の環境対策を経験。ITベンチャー企業に転職後、プロデューサーとしてWebアプリケーションの開発に携わりながら、東京小岩の「Cocktail Bar Raven」の立ち上げを行う。
2022年8月に静岡県下田市に移住し、「伊豆下田 白浜蒸留所」を立ち上げ、「下田から、世界へ。」のスローガンのもとリキュール製造に勤しんでいる。
蒸留所を作る目標を掲げて都内にバーをオープン
Fame's/写真2.jpg)
――御社の事業内容を教えてください。
東京の小岩で「Cocktail Bar Raven」を経営しています。代表の伊藤がバーテンダーを務めています。伊藤はオーストラリア留学時にお酒の奥深さを知り、日本に戻ってからホテルのバーで勤務してきました。
私と伊藤が行きつけにしていたバーが同じで、そこで知り合ったのですが、いつの間にか「お酒作りをしたい」という思いで意気投合していました。一緒にお酒作りをする足掛かりとして、まずは自分たちのバーを持とうということで、2020年8月に「Cocktail Bar Raven」を開業しました。
――自社のバーで販売するためのお酒を作ろうということでしょうか?
自社のバーで提供することだけでなく、店ごとのオリジナルのリキュール、つまりオーダーメイドでお酒を作るサービスを提供したいという思いが強いです。
店の要望や地域の素材を使ったクラフトリキュールを作るために酒造免許を取得し、昨年10月から蒸留所として本格的に酒造事業をスタートさせました。
バーでのお客さまとの出会いが下田への進出に
――下田市にサテライトオフィスを開設した経緯を教えてください。
下田市には2021年7月にサテライトオフィスを開設しました。
きっかけは、「Cocktail Bar Raven」のお客さまからの提案でした。自分たちがお酒作りをしたいという話をお客さまともよくしていたのですが、その思いを知っていた常連のお客さまが下田で使っていない建物があると紹介してくれました。家族の高齢により、元民宿や自宅の建物の活用ができないため、そこを蒸留所として使わないか、という話でした。
デスクワークのスペースも必要でしたので、サテライトオフィスとして使いながら、蒸留所を併設する計画を立てました。
――蒸留所ありきでサテライトオフィスを開設したようですが、蒸留所の立地は下田市以外の選択肢は考えなかったかのでしょうか?
建物を紹介してくれたお客さまの誘いで2021年3月に初めて下田に来てみて、真っ先に土地に魅力を感じました。
建物は白浜海水浴場の近くにあり、きれいな海と山に囲まれていて豊かな自然がありました。また、下田や伊豆では、リキュール作りに適した多くの種類のかんきつが栽培されている点も決め手となりました。
当初から、蒸留所の開設場所は都内か地方かは決めていませんでしたが、都内では家賃など考えると難しいのではと考えていました。
下田は観光地でもあるため、リキュール作りが始まれば、地元の人だけでなく、観光客にも知ってもらえる機会が多いのではという期待もあって、下田に決めました。
――サテライトオフィスを開設するに当たって活用した行政サポートはありますか?
「下田市サテライトオフィス等整備費補助金」を活用しました。サテライトオフィスを開設するための空き物件の整備に関わる改修費やオフィス設備の購入費用に利用しました。
第1弾は伊豆で出会ったかんきつをリキュールに
――蒸留所はどのように開設まで進めてきたのでしょうか?
2022年8月には私自身、下田に移住しました。酒造免許の取得までには時間がかかるので、蒸留所開設の準備を進めながら都内とのリモートワークを続けてきました。
2023年1月にはクラウドファンディングを立ち上げて、蒸留設備を整備するための資金調達にも着手しました。蒸留所はサテライトオフィスに併設していますが、蒸留所部分は補助金の対象外ですので、蒸留設備などの費用は自社で調達する必要がありました。
クラウドファンディングは結果として、目標100万円に対して237万円を集めることができました。
酒造免許も無事に2023年10月30日に取得することができ、現在第1弾のリキュールを仕込み中です。
――ちなみに、第1弾となるリキュールとは、どのようなお酒でしょうか?
伊豆産のかんきつ「ダイダイ」のリキュールです。ダイダイ200キロを仕入れ、むいた皮をニュートラルスピリッツにつけて蒸留して作ります。
下田の海をイメージした青色の「ブルーキュラソー」で、4月に販売開始しました。750ミリリットル入りのボトルで約700本を生産予定です。
下田駅前に試飲できる直営店の出店も計画しています。
併せてお伝えすると、ダイダイの果汁は当社が運営するバーで使い、搾りカスは堆肥として活用しています。ゴミを増やさない意識を大切にしています。
サテライトオフィスの現状と今後の展望
Fame's/白浜写真.jpg)
――下田市にサテライトオフィスを設置して良かったことを教えてください。
下田市に初めて訪れた時の印象そのままに、都内と比較して多くの自然に囲まれているので、落ち着いた気分で仕事をすることができています。
さらに、地域の人たちが応援してくれているという実感があります。2022年8月に移住し、コロナが落ち着いてきた頃合を見計らって街の人たちとの交流を図るようにしてきました。
2023年5月に、下田で有名な「黒船祭」に出張バーの出店をしてカクテルの販売を行いました。同年11月には、「下田ウイスキーフェス」にも運営委員の一人として参加させてもらいました。地元のイベントには積極的に参加して地域との関係づくりに取り組んでいます。
メディアの取材を受けることも増え、新聞などに掲載されると「記事を見たよ」と声を掛けてくれることも多いです。都内だとそこまでかもしれませんが、下田ですとお酒作りをしていること自体が目立ちやすいのだと思います。仕事を長く続けていくことで地域の活性化にもつながるため、腰を据えて長い視点でビジネスに取り組める印象があります。
――一方で、下田で苦労していることやデメリットとして感じていることはありますか?
仕事面でのデメリットはありません。
生活する上で、デメリットというほどではありませんが、蒸留所から街まで距離があるので買い物に不便なことです。また、最終バスの時間が早いので遅い時間まで店で飲めないことくらいでしょうか。
――今後、行政に期待することはありますか?
静岡県では元々日本酒の製造が盛んでしたが、昨今はビールやウイスキー、ジンなどの製造も行われています。水質が良いことが背景にあるのかもしれません。
静岡県としても全国に向けてお酒で県をアピールしてもらいたいです。結果として、お酒作りがますますしやすい地域になっていければうれしいです。
――御社の展望を教えてください。
伊豆にはニューサマーオレンジなど特産物が数多くあるので、それらを活用してクラフトリキュールを作っていきたいと思います。
お酒を通して、伊豆や下田の特産品・地域の特色などを全国、そして海外に発信していきたいと思います。
――サテライトオフィス開設を検討する方へのアドバイスをお願いします。
違う地域から来ると、新しい土地の空気感がわからないと思いますが、その土地の祭りやイベントに積極的に参加することで、地域のことを深く知ることができ、さらには自分のことを周りに知ってもらうことにも繋がります。
地域に積極的に関わっていくことが、うまくやっていくための秘訣だと思います。
サテライトオフィスで働く白井さんに聞きました!
Fame's/写真6.jpg)
①静岡県の好きなグルメは?
伊豆や下田はイセエビなど海産物がおいしいです。
地元のスーパーで地物の魚を見つけて、自宅に買って帰って自分でさばくこともあります。
②静岡県でおすすめor行ってみたい場所は?
白浜からも程近い「爪木崎」の景観がお勧めです。秘境のような地形が気に入っています。
爪木崎には水仙が群生しており、毎年12月~1月には「水仙まつり」も開かれます。
③オフタイムの過ごし方は?
下田に友人が来た時には必ず白浜神社に行きます。
最近ソロキャンプを始めたのですが、河津七滝キャンプ場がお気に入りのキャンプスポットです。
下田に移住したことで、自然とキャンプを楽しみしたいという気持ちになりました。
静岡県サテライトオフィス情報発信ライター・磯部洋樹(いそべひろき)
所感
地元中学校の総合学習の授業に出張先生として教壇にも立ったという白井さん。2022年8月に下田に移住し、祭りやイベントにも積極的に参加するなどして地域に溶け込むことを強く意識して活動されていることが印象的でした。
3月に実施した2回目のクラウドファンディングも大幅に目標を達成。下田発のクラフトリキュールの存在を全国に向けて発信しています。これから先、次々と地元の特産品を使ったリキュールを開発していく予定とのことです。Fame’sさまの今後の展開に注目したいと思います。
【磯部洋樹プロフィール】