2023年4月、外国人材紹介事業等を手掛ける株式会社dialogは、静岡市のコワーキングスペース/シェアオフィス「=ODEN(イコールおでん)」にサテライトオフィスを開設しました。東京都新宿区に本社を構える同社が静岡に進出したきっかけは、2022年10月に参加した「静岡県サテライトオフィス開設セミナー」だったそうです。代表取締役・久保田誠さんと取締役・森翔平さんが「サテライトオフィスに対してこんなに熱心な自治体は他にない」と驚いた静岡県・静岡市のサポート体制とはどのようなものだったのか。サテライトオフィスを活用して描く今後の展望と併せて語っていただきました。

株式会社dialog 会社概要

株式会社dialog
2020年10月設立。外国人材に特化した人材紹介事業、外国人材向けの就職活動サポート事業、採用業務コンサルティング事業などを手掛ける。本社は東京都新宿区。2023年4月、静岡市の「=ODEN」にサテライトオフィスを開設。

インタビュー対象者紹介

代表取締役 久保田誠さん
1986年鹿児島県鹿児島市生まれ。 大学卒業後、スカウト・ヘッドハンティングサービスを手がける人材会社でエージェント業務に携わった後、証券会社を母体とする企業グループにて外国人材事業の立ち上げを行い、取締役社長に就任。退任後、2020年10月に株式会社dialogを設立。

取締役 森翔平さん
1988年静岡市生まれ。大学卒業後、住宅設備メーカーの営業職に就く。その後スカウト・ヘッドハンティングサービスを手がける会社にて久保田さんと出会い、同様に外国人材事業に参画。2020年、久保田さんとともに株式会社dialogを設立。2023年4月より地元である静岡県静岡市に開設したサテライトオフィスを拠点に業務にあたっている。

開設のきっかけはセミナーと視察ツアー。支援制度の整った静岡で、地域に根差した活動を!

──まず、dialogの事業について教えてください。

久保田さん:主に、日本にいる外国人の方と企業をマッチングするのが私たちの仕事です。その事業に付随して外国人材の就職活動をサポートしたり、在留資格の相談に乗ったりもしています。企業側に対しては、外国人採用に関わるあらゆる分野のサポートをしています。 

──本社は東京都新宿区に置かれているとお聞きしました。なぜ静岡市にサテライトオフィスを開設することになったのですか?

久保田さん:私たちのお客様は、外国人材を必要としている企業、つまり、深刻な人手不足問題を抱える地方の企業がほとんどです。事業を展開していくなか、これだけ多くの地方と縁を持っているのだから、そのなかで一つの地域により深く入ってみたいと思うようになりました。地域に根づく形で事業をしてみたらどうなるんだろうと考えていたんです。

地域といっても多くの選択肢があるなかで静岡市を選んだのは、2022年に東京で開催された「静岡県サテライトオフィス開設セミナー」への参加がきっかけです。取締役の森に出席してもらったのですが、サテライトオフィス開設企業に向けた補助金などの制度が充実していることに驚きました。

──セミナーには静岡県内から10市町が参加して、それぞれ個別のブースが設置されていましたね。

森さん:はい。私は静岡市出身ということもあり、まず静岡市のブースに行きました。そこで担当者の方々にとても丁寧に対応していただいたことが強く記憶に残っています。

久保田さん: JR静岡駅はJR東京駅から新幹線で1時間ほどで行けます。利便性も文句なしでした。セミナーに参加するまでは地域でビジネスをしたいといっても構想段階にとどまっていたのですが、森から話を聞いてぜひ話を進めたいと思いましたね。

──最終的な決め手はなんだったのでしょうか?

久保田さん:セミナーの後に参加した静岡県が開催した静岡市内の視察ツアーです。限られた時間の中、地元の企業や団体などたくさんの方々と交流させていただきました。非常に密度の高い時間で、自分たちが進出したらどうなるだろうというイメージがよりはっきりしたと思います。また、実際に東京から参加したことで、「こんなに近いんだ」と利便性を肌で感じることができました。進出にあたっての支援制度も心強く、静岡市を拠点にビジネスをしようと決めました。

「こんなに熱心な自治体は他にない」。県や市から受けた、手厚いサポートとは?

──魅力に感じられたとおっしゃっていた、静岡県及び静岡市のサポートとはどのようなものだったのでしょうか?

久保田さん:静岡県で2023年度から始まった「ICT・サービス関連企業進出事業費等補助金」という助成制度を活用しています。一年間のオフィス賃借料の半分を補助していただいています。とても助かりますね。

──静岡市の制度も活用されていますか?

森さん:はい、「Move To しずおか」という制度を利用しています。オフィスの賃借料と、本社との往復交通費、宿泊費を1カ月分補助してもらいました。静岡県と静岡市の両方の補助を受けることで、はじめの1ヶ月分のオフィス賃借料は負担がゼロとなりました。

また、静岡市からは採用課題を抱えている企業様や、市内の大学・専門学校を紹介してもらいました。大学・専門学校では、先生方や就職担当者を紹介してもらい、留学生の就職状況について意見交換を行いました。私たちの経験を活かして、採用課題の解決や留学生の就職サポートをしたいと考えています。

──支援制度も静岡への進出理由の一つに挙げられていましたが、実際に様々なサポートを受けられたのですね。

久保田さん:企業誘致に対してこんなに柔軟な自治体は他にないと思います。地方でのビジネス自体は前から考えていたので、他の自治体についても調べたことはありましたが、ここまで支援制度を柔軟に整えているところは見かけませんでした。進出やビジネスにかかる費用が節約できるのはもちろん、同時に関わっている自治体の職員さんの熱意にも心を動かされました。

入居者同士の盛んな交流が魅力。dialogがサテライトオフィスで描く今後の展望

▲=ODENで交流している様子
▲=ODENで交流している様子

──静岡市にサテライトオフィスを開設するにあたり、なぜ=ODENを選ばれたのですか。

久保田さん:まず譲れなかったのはやはり利便性でした。=ODENはJR静岡駅から徒歩約10分、静岡鉄道新静岡駅からは徒歩約3分と、利用しやすいです。もちろん、利便性だけなら他の選択肢もありましたが、=ODENを魅力に感じたのは、入居者間で交流しやすいところです。運営元の「静鉄」さん(静岡鉄道株式会社)はコミュニケーションを大変重視されています。静岡という地域に密着してビジネスを展開していくにあたり横のつながりをつくりたかったので、欠かせないポイントでしたね。実際、入居した4月には静鉄さんがスタッフの方々や入居者20名ほどを集めた交流会を開いてくれました。施設内にはアイランドキッチンもあって珈琲をいれたり、お菓子を食べたり、一緒にご飯を作れるなど、コミュニケーションが取りやすいです。

──森さんは実際に利用されてどのような印象を抱いていますか。

森さん:=ODENには5人の運営スタッフの方がいらっしゃって、常にどなたかが施設内にいてくださります。マネージャーの方と珈琲を飲みながら、もっと入居者とのコミュニケーションを取りたいと話したら、すぐ「あ、それならあの方をご紹介しますね」と言って、その方が仕事をしているデスクのところに連れて行ってくれることもあるんです。スタッフの皆さんのおかげで入居者とスムーズにコミュニケーションをとれていて、本当にありがたく感じています。

──すでに色々なつながりが生まれていそうですね。今後、静岡でビジネスをしていく上での展望を教えてください。

森さん:静岡市は私のふるさとです。私たちのサービスによって、地元である静岡市の企業様のお役に立ちたいと思っています。また、静岡の就職先を紹介した外国人の方々にも、静岡をさらに好きになってくれるようなきっかけづくりができたら嬉しいです。

久保田さん:静岡県は政令指定都市を2つ抱えており、また農業資源、海洋資源にも恵まれ、第一次~第三次産業まで多くの事業者が存在している地域です。東京と名古屋という大都市の間にあり、外国人の方にとっても圧倒的な知名度がある富士山もあります。しかしながら、その魅力の割には外国人の方が相対的に少ないのではないかと感じています。言い換えれば、弊社のサービスを通じて、より多くの外国人材が適切に長期的に定着するポテンシャルのある地域ということです。サテライトオフィスを積極的に活用しながら、静岡市の団体など地域の方々とも協力して、人材不足という根深い課題を解決していきたいと思います。現在は弊社に元々いたメンバーだけで活動していますが、ゆくゆくは静岡の方を採用して、この事業に加わってもらいたいと考えています。

──最後に、サテライトオフィスの開設を検討している方々へメッセージをお願いします。

久保田さん:これほど熱心に取り組んでいる、かつ柔軟に対応してくださる自治体は色々調べても静岡しかないと思います。少しでも検討したいと思ったら、行政の方などに連絡をとってみてほしいですね。そうしたら何か起こりますから。私たちも色々な企業様の採用面をサポートしていきたいと思っていますので、ぜひ挑戦してください!

サテライトオフィスを開設した久保田さん・森さんに聞きました!

──静岡県で好きなグルメは? 
森さん:私は学校の給食でよく食べていた、「黒はんぺんのチーズフライ」が大好物です。「黒はんぺん」は焼津市の特産ですが、県内ではよく食べられているんです。

久保田さん:静岡おでんや「さわやか」のハンバーグを食べてみました。

──静岡県でおすすめの場所、あるいは行ってみたい場所は?
森さん:先日、久保田と久能山東照宮に行きました。実は富士山にも登ったことがないので、早いうちにトライしたいですね。

久保田さん:NHK大河ドラマ「どうする家康」の影響で今年は特に静岡がアツいですよね。久能山東照宮はもちろん、日本一大きいといわれる天守台があった駿府城、登呂遺跡など、静岡にはたくさんの歴史系コンテンツがあり、行くたびにわくわくします。

森さん:久保田は大の歴史好きなんです。こうしたスポットについては静岡が地元の私より、久保田のほうが詳しいかもしれませんね(笑)

──オフタイムの過ごし方は? 
森さん: できるだけ両親と過ごすよう心がけています。あとは中学や高校時代の友人たちと会って思い出話に花を咲かせています。

静岡県サテライトオフィス情報発信ライター・まゆ

地方の人材不足は喫緊の課題といわれています。サテライトオフィスにとても熱心な自治体・静岡に進出したdialogさんが課題解決の道筋をつけたとしたら、それは他の地域でも応用できるかもしれません。一日本人として、dialogさんのこれからをとても楽しみにしています!
まゆプロフィール

サテライトオフィスを開設した「=ODEN」はこちら

おでんのように互いの良い出汁を吸収し合うことで、新たな交流やビジネスを創り出します!

=ODEN
運 営:静岡鉄道株式会社
所在地:〒420-0839 静岡県静岡市葵区鷹匠2ー8ー10
電 話:054-254-5152
アクセス:【静岡鉄道・新静岡セノバからお越しの方】
      新静岡駅・新静岡セノバから徒歩約3分
     【JR東海道本線からお越しの方】
      静岡駅から徒歩約10分
公式HP:https://oden.shizutetsu.net







静岡県サテライトオフィス情報発信ライター・佐藤優奈(さとうゆうな)

カフェでは定期的にクリエイターが集まる交流会を開催しているそう。
新たなアイデアや刺激を得られる場は貴重なので、ぜひ行ってみたいなと感じました。
佐藤優奈プロフィール