【Profile】
株式会社エイ・アイ・エス
「誰が見ても本物と呼べる会計情報システムの構築力を提供したい」という思いのもと、
業務システム開発分野における専門家(会計士・中小企業診断士・システム監査人・社会保険労務士ほか)が所属するソフト開発会社。
会計業務や勤怠管理業務、情報システム技術等、提供する全てのサービスにおいてユーザーに十分な満足を与えるハイクオリティを企業の存在価値と認識し、設立から39年目、順調に事業規模を拡大中。

・東京本社
【所在地】〒101-0041
東京都千代田区神田須田町1-3-9 PMO神田万世橋9F

・静岡営業所
【所在地】〒420-0853
静岡県静岡市葵区追手町3-11 しずおか焼津信用金庫追手町ビル4F

株式会社エイ・アイ・エス代表取締役 大浦 博(おおうら ひろし)さん

ソフトウェア企業にシステムエンジニアとして勤務した後、「自身でシステムを作りたい」と考え、株式会社デジタルネットを設立。その後、株式会社エイ・アイ・エスに社名を変更。「オープンとフェア」をモットーに、会計パッケージに特化。海外にも進出し、外国人材の採用を積極的に行っている。趣味はギターとバンド活動。

静岡市ってどんなところ?

▲美しい「茶畑」と「富士山」(提供:静岡市)
▲美しい「茶畑」と「富士山」(提供:静岡市)

静岡市について静岡市役所経済局商工部産業振興課 山本 剛大(やまもと たけひろ)主査にお話を伺いました。

--静岡市について教えていただけますか?

山本主査:『静岡市』は人口約69万人(R3.8月末現在)で、年間を通して温暖な気候で過ごしやすく、多様な産業がバランスよく集積しています。

東名・新東名高速道路や東海道新幹線、清水港などの交通網を有しており、交通の利便性も魅力です。中心市街地に行政機関や商業施設、医療機関、文化施設などが集約された「コンパクトシティ」で、とても暮らしやすい街です。

--暮らしの便利さが魅力的ですね。企業誘致や企業支援で取り組んでいることはありますか?

山本主査:補助金制度や県外企業向けのガイドブックの発行、オフィス物件の紹介などを行っています。また人材面において、学生と企業のマッチングを促進しており、これまでに静岡県立大学や常葉大学、産業技術専門学校の「学生の就職動向」や「学校のカリキュラム」といった内容を把握して企業に情報共有するなど、採用につながる取組を行っています。


【その他静岡市にサテライトオフィスを開設した事例記事はコチラ】
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ポテンシャルの高い静岡市でさらなる業務の最適化を目指して

▲サテライトオフィスが入居するビルの外観
▲サテライトオフィスが入居するビルの外観

続いて、静岡市にサテライトオフィスを設置した株式会社エイ・アイ・エスの代表取締役 大浦 博さんにお話しを伺いました。

--サテライトオフィスを設置したきっかけを教えてください。

大浦さん:コロナ禍の影響で、東京本社の在り方をコスト面から見直したのがきっかけでした。
弊社の主な業務は「ソフトウェアのシステムの開発・保守」で、必ずしも本社で行う必要はありません。

一方で、オンラインでは対応できない業務もあるので、東京からのアクセスも考慮してサテライトオフィスの設置を検討しました。


--静岡市をサテライトオフィスの候補地に考えたのはなぜですか?

ここ2年間、オンラインでの業務を推進してきた中で、すべての業務がオンラインで完結できないことを想定した結果、候補地として挙がったのが静岡市でした。静岡市には、本社がある東京からのアクセスの良さ、現地採用を想定した際の人材の豊富さ、コンパクトな街で都市部と自然が近い環境、賃料のコスト面など、サテライトオフィスの開設に重要な要素が揃っていたので、静岡市を最優先に検討を進めました。


--静岡市に感じた魅力について教えてください。

大浦さん:東京から新幹線で1時間で行けるアクセスの良さと、心地よい気候が魅力的ですね。
また、静岡市周辺は専門学校が多いので、より専門性に特化している優秀な地方人材の採用を見込める点がとても魅力的だと感じました。

最近は「Iターン」や「Uターン」も多い時代だと感じており、よりIT関係の業務に「最適な環境」と「地方の優秀な人材の採用」に期待して、静岡市でのサテライトオフィス開設に踏み切りました。

開発・保守業務の8割がサテライトオフィスへ移行

▲静岡市のサテライトオフィスで開発業務と保守業務を行う様子
▲静岡市のサテライトオフィスで開発業務と保守業務を行う様子

--静岡市のサテライトオフィスではどのような業務を行っていますか?

大浦さん:サテライトオフィスでは主にソフトウェアの開発業務と保守業務を行っています。

設立から蓄積した39年間のノウハウを生かして、海運業向け基幹システムのパッケージサービスや、システム管理・運用が不要で、様々な場所から業務を行うことができるクラウドシステムといった、ソフトウェアビジネスを展開しています。より良い開発・保守、そしてお客様へのサポート業務の好循環を生み出すため、自社製品の改善と向上に努めています。


--サテライトオフィスを設置したことで、具体的にどのような変化がありましたか?

大浦さん:大きく3つの変化がありました。1つ目はIT関連業務の大幅な移行です。クラウドにおける保守業務のうち8割を静岡市のサテライトオフィスへ移したことにより、東京本社では顧客対応に専念にできるようになりましたね。

2つ目は、地方での採用活動が活性化したことです。静岡のサテライトオフィスに入居する前に、20名程度の面接を行ったところ、半数である10名の採用ができました。現在、サテライトオフィスでは12〜13名が勤務しており、地方人材の採用に可能性を感じています。

3つ目に、営業面での変化として、静岡での顧客開拓による「新たな市場」を得ることができました。

一方で、社内のコミュニケーションという点では、弊社は従来から神戸にも営業所があり、営業所と本社との間ではコミュニケーションツール「Microsoft Teams」を使ってやり取りをしていましたので、今回、静岡県にサテライトオフィスを開設した際にも、コミュニケーションについて、支障やネガティブな変化はありませんでしたね。


--採用面での大きな変化があったんですね。採用活動で印象的だったことを教えてください。

大浦さん:印象的だったのは、異業種からの転職で「技術を身につけたい」という方の応募が多かったことです。

また、IT業界は未経験で、これまで海外で働いていたものの、コロナ禍で海外渡航が難しいという現状から「地元の静岡市でキャリアを積み上げていきたい」という思いで応募してくれた方もいます。

コロナ禍の影響で、社会情勢は複雑化しています。そういった中で、新たなキャリアパスを描こうとする情熱や姿勢を重視して、採用させていただきました。このような形で採用ができることも、サテライトオフィスを開設する魅力の一つですね。

サテライトオフィスで求人を出したところ、450件の応募が殺到!

▲行政のサポートもあり、無事にサイトライトオフィスを開設
▲行政のサポートもあり、無事にサイトライトオフィスを開設

--サテライトオフィスの物件はどのように探しましたか?

大浦さん:静岡県や静岡市の担当者からの紹介物件を5〜6件ほど検討し、静岡マルイのシェアオフィスに入居しました。その後、静岡マルイが閉店になったため再度候補をご紹介いただき、現在はしずおか焼津信用金庫のビルの4階を利用しています。


--静岡市の山本さんにお伺いします。(株)エイ・アイ・エスとは、どのような経緯でつながったのでしょうか。

山本さん:きっかけは、静岡県の東京事務所(※)からの紹介でした。コロナ禍の影響を受けて静岡駅周辺はシェアオフィスが増加していたこともあり、(株)エイ・アイ・エスさんのニーズを鑑みて、まずはシェアオフィスをご案内したんです。まさに静岡県と静岡市の連携があって得られたつながりだったと思いますね。

※静岡県は東京都に東京事務所(ふじのくに大使館)を設置しており、県行政に必要な情報の収集や首都圏における広報事業の推進、県内への企業誘致、県内の就職情報の提供などを行っている。


--静岡市が企業誘致を進める上で、どのようなことを大切にしていますか。

山本さん:静岡市にサテライトオフィスを置く企業の現地雇用を支援するなど「オフィスに関する不安の解消」を大切にしながら誘致を行っています。私たち(静岡市)としても地域人材の採用は大歓迎です。

(株)エイ・アイ・エスさんの場合は、静岡市で求人サイトを運営している企業に同席していただき、採用に関する説明などを行いました。実際に(株)エイ・アイ・エスさんが求人を出したところ、450件ほどの応募が集まったんですよよ。


--450件はすごいですね…!

山本さん:はい、とても驚きました。情報サービス業は、製造業と連携することで生産性向上につながるので、(株)エイ・アイ・エスさんのようなIT企業に地域の産業を盛り上げていただけたらと思っています。

今後は「IT×異業種経験」を重視!IT分野で地元企業との業務提携も拡大中

▲さまざまな業種での経験を持つ人材が、サテライトオフィスで活躍している
▲さまざまな業種での経験を持つ人材が、サテライトオフィスで活躍している

--静岡市にサテライトオフィスを設置したことで、地元企業との連携は生まれましたか。

大浦さん:はい、現在は地元でのクラウドシステムの導入が進んでいます。

例えば、しずおか焼津信用金庫の行内に生体認証で体温を測るサーモグラフィーを設置させていただいています。その他にも同じようなシステム導入を検討中の企業が数社いらっしゃったり、さまざまな形で連携が生まれている状況です。


ーー良い流れですね。地元企業とのつながりという視点から、これからの人材採用をどのように考えていますか。

大浦さん:これからの時代は「ITをベースにした業務改善ができる人材」に注目していくべきでしょう。例えば、アパレルや接客業務などの実務経験は、一見するとIT業界に関係ないように思えます。しかし私の経験上、これらの実務経験は必ずプラスに働きます。

IT業界が未経験であっても、採用後にIT知識を身につけて、活躍の幅を広げることは十分可能なんです。企業はIT経験者のみを求めるのではなく、間口を広く構えて、IT以外の業務を経験している方も積極的に採用していくことが大切だと感じますね。


--最後に、サテライトオフィス設置を検討している企業へのメッセージをお願いします。

大浦さん:弊社と同じように東京近郊に本社を構えている企業にとって、静岡県にサテライトオフィスを設置するメリットは想像以上に沢山あると思います。オンラインでは対応しきれない業務が発生したとしても、東京からすぐに移動できる「ちょうどよい距離感」が本当に魅力的ですね。

また、サテライトオフィス設置前から設置後の現在に至るまで、静岡市や静岡県のみなさんによるサポートも充実していますので、ぜひ前向きに検討してみてはいかがでしょうか。


《ライター・城谷俊太》