下⽥市東伊⾖町河津町は伊豆半島の東側に位置しています。東京から特急「踊り子号」で乗り換えなく、約2時間半で往来が可能なエリアです。幕末開港の歴史を持ち、市内には黒船来航にまつわる史跡や白浜海岸(しらはまかいがん)をはじめとする美しいビーチを有し、自然や歴史など多様な魅力が凝縮された下⽥市。地域ブランドである稲取キンメや肉チャーハン、ニューサマーオレンジといった絶品グルメが豊富で、山と海に囲まれた自然豊かな東伊⾖町。カワヅザクラの発祥地であり、お花見シーズンには全国から多くの観光客が訪れる河津町。3市町それぞれが魅力的な観光資源を有する中で、各エリアのキーパーソンたちとの交流を通し、ビジネスとサテライトオフィス開設の可能性を探りました。

ツアー概要

〇日時:令和3年11月15日~17日
〇開催地:下⽥市東伊⾖町河津町

〇行程概要:
11月15日(下田市)
~ワーク・交流会・宿泊~
Living Anywhere Commons伊豆下田(下田市)
~体験・視察~
干物ほうえい(下田市)
~食事~
NanZ VILLAGE 多国籍居酒屋 楽海-RAU-(下田市)
伊豆下田 勝(下田市)

11月16日(東伊豆町)
~ワーク・交流会・食事~
EAST DOCK(東伊豆町)
~体験・視察~
ジオパーク見学[稲取細野高原周辺](東伊豆町)
~食事~
Manas-CAFE(東伊豆町)
~宿泊~
湊庵(東伊豆町)

11月17日(東伊豆町→河津町)
~ワーク・交流会~
ワーキングスペース バガテル(河津町)
~食事~
ダイロクキッチン(東伊豆町)
伊豆さくら亭(河津町)



【参加者】

一般社団法人スポーツフォース 池田 タツ(いけだ たつ)氏
〇本社所在地:東京
〇事業内容:スポーツ事業(主に大会の企画・運営、地方合宿のサポート)
〇サテライトオフィス開設検討理由:地方での事業拡大のために首都圏以外の拠点が必要なため
〇このコースを選んだ理由:首都圏から往来がしやすく、温暖な気候でサテライトオフィスだけではなくスポーツツーリズムの開催地としても適した伊豆エリアに興味があり、進出前に地元の方と良い関係を築きたいため
〇会社HP:一般社団法人スポーツフォース

株式会社NAVICUS 井内 麻由(いうち まゆ)氏
〇本社所在地:東京
〇事業内容:マーケティング・広告事業(主にSNS運用サービスやコンサルティング業務)
〇サテライトオフィス開設検討理由:SNS運用サービスの需要は地方でも高いことから、サテライトオフィスを開設し、より現地の人に近い目線でサポートをしたいと考えているため
〇このコースを選んだ理由:代表取締役の生まれが下⽥市で、弊社としてもご縁のある土地であるため
〇会社HP:株式会社NAVICUS

株式会社スカイマティクス 大路 幸宗(おおじ ゆきむね)氏
〇本社所在地:東京
〇事業内容:IT事業(産業用リモートセンシングサービスの企画・開発・販売)
〇サテライトオフィス開設検討理由:地方自治体や農業経営者への事業拡大に向けて、首都圏だけではなく地方にも拠点を開設したいため
〇このコースを選んだ理由:首都圏から往来がしやすく、山と海に囲まれ自然豊かな東伊豆町に興味があるため
〇会社HP:株式会社スカイマティクス

今回のモニターツアーに参加して、得られたものは?

ワーキングスペース バガテルにて、わさび丼を食べる際に「美味しいわさびの擦り方」を伊豆さくら亭の方に教えていただいた。
ワーキングスペース バガテルにて、わさび丼を食べる際に「美味しいわさびの擦り方」を伊豆さくら亭の方に教えていただいた。

池田氏:大変満足度の高いモニターツアーでした。収穫としては“地元ならではのアクティビティを楽しめたこと”と“行政職員とのつながりができたこと”です。

 まず、“地元ならではのアクティビティを楽しめたこと”では、下田市では「干物作り体験」、東伊⾖町では「稲取細野高原散策」河津町では新鮮なわさびをすりおろして食べる「わさび丼」など、様々な体験をしました。弊社の事業である、スポーツ合宿のサポートやスポーツツーリズムの企画・運営において、大切な要素の一つとして、“企画者側が現地の魅力やおすすめスポットなどを広く把握して参加者に紹介し、いかに楽しんでもらえるか”という点があります。今後、伊豆エリアを新たな拠点とし、事業の拡大を考えている弊社としては、貴重なインプットの機会となりました。

 また、プラスαの収穫として、下⽥市の干物作り体験では、干物作りの歴史を聞けたことや、東伊⾖町「稲取細野高原散策」では、すすきの大草原を維持するために毎年行われる野焼きの存在を知れたこと、河津町でわさび丼を食した際には、美味しいわさびの擦り方を教わったことなど、実際に現地に赴き、地元の方々と接点を持てたがゆえに得られた貴重な情報や体験がありました。

 弊社が地方でスポーツの企画を進める際に最も重要な点が『スポーツをする場所』の確保であり、そのためには、地域の方々、特に行政職員の協力が必要不可欠です。これは、公共施設のグラウンドや周辺の駐車場などを利用する際に、協力いただくことが多いためです。今回、下⽥市東伊⾖町河津町の3エリアの行政職員とつながりを持てたことは大きな収穫であり、サテライトオフィス開設後も積極的に連携できることを期待しています。

 また、交流会を通して、廃校の利活用が今後の課題の一つになっていることを知りました。使われなくなった体育館などを弊社のスポーツ大会の会場として活用することで、地域課題に貢献できるのでは、と可能性を感じました。

 さらに、河津町役場の方から、エクストリームスポーツ※1の選手育成に力を入れていく計画があるとの話から、弊社の事業領域に近い動きが河津町内で計画されているという、新しい情報を得ることができました。空いている土地を活用して、スケートボードやバスケットなどを楽しめるコンクリートパーク施設の開発などを、PFI(Private-Finance-Initiative※2)手法を用いた事業として協力できないかなど、具体的な意見交換ができた点は大きな進展です。

下⽥市東伊⾖町河津町ならではの活動体験ができ、多くの方々とつながることができた、実り多いツアーとなりました。今回訪れたエリアでスポーツ大会が開催できる日を楽しみに、事業を具体化していきたいです。

※1 過激な速度や高度をはじめ、物理的に難易度が高い華麗な動きや、過激な離れ技を競うスポーツの総称
※2 民間の資金と経営能力・技術力(ノウハウ)を活用し、公共施設等の設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行う公共事業の手法

訪れた地域で自社事業の展開の可能性は?

下田市にあるLiving Anywhere Commons伊豆下田で行われた下田市役所と県賀茂地域局の職員、下田市で働くフリーランスの方々との交流会の様子
下田市にあるLiving Anywhere Commons伊豆下田で行われた下田市役所と県賀茂地域局の職員、下田市で働くフリーランスの方々との交流会の様子

井内氏:弊社の主な事業が「SNSを活用したコミュニケーション支援」であり、自然豊かな海や山、そして美味しい食べ物といった、いわゆる“映える”コンテンツが多くある下⽥市東伊⾖町河津町は、SNSによる発信がしやすいエリアだと感じました。首都圏のオフィス街では普段見ることのない素晴らしい景色の数々に、私自身、カメラを手放すことなく撮影に熱中していました。また、そんなローカルな雰囲気を楽しめる一方で、今回ワークタイム中に利用した下⽥市Living Anywhere Commons伊豆下田東伊⾖町EAST DOCK河津町バガテルは、こちらに移住してきた若い方や地域おこし協力隊の方が運営しており、彼らが作ったおしゃれなワーキングスペースに感動し、館内での撮影にも熱が入りました。伊豆エリアは観光地のイメージが強かったので、こういった仕事ができる環境が整っていたのは意外でしたし、サテライトオフィス開設を検討する企業からすると試験的に現地で働くことができて良いと思いました。意外と知られていない魅力あるコンテンツが多く、それらをどのように発信していくのかが重要で、その部分で弊社が協力できる点が多いのではないかと思います。

 また、3市町の行政職員との交流会で、「SNSのアカウントはあるが、うまく活用できていない」といった共通の課題を聞きました。各市町のインスタグラムを拝見し、ハッシュタグの活用や、アカウント自体が複数あり統一されていないなどの改善点を提案しました。下⽥市では、定期的にSNS教室の講師を招いていたり、県賀茂地域局が協力している「大学生ツアー企画プロジェクト」では、ツアーの告知媒体としてSNSを活用しているようです。どの自治体もSNSへの関心度は高く、「次回は講師として来てください!」とのお誘いをいただき、ビジネスが広がる可能性を感じた交流となりました。

 SNSでその地域の魅力を発信する際に大切なことは、「発信する側が地域のことを好きかどうか」という点です。今回、出会った方々は、自分の地域の魅力を語る際にイキイキしており、地域愛が伝わってきました。私自身、2泊3日という短い時間でしたが、下⽥市東伊⾖町河津町をとても好きになりました。実際にサテライトオフィスを開設した際は、現地採用にも注力したいと考えています。地域の方々と一緒に働ける日が楽しみです。

訪れた地域の印象の変化は?

ジオパーク見学ツアーで訪れた稲取細野高原
ジオパーク見学ツアーで訪れた稲取細野高原

大路氏:弊社の主力事業は、ドローンとAI技術で地域課題を解決するソフトウェアの開発です。ツアーを通して下田市・東伊豆町・河津町で弊社事業を拡大できる可能性を感じることができました。
まず、意外であったこととして、ドローンの操縦ができる人が多かったという点です。伊豆半島東海岸地域4市町伊東市下⽥市東伊⾖町河津町と日本ドローンコンソーシアム(JDC)などが、ドローン活用による地域社会の課題解決を目的とした「無人航空機の活用による地方創生の推進に関する連携協定」を2021年3月に締結し、行政主催のドローン研修会や、観光向けPR動画撮影時のドローン活用が行われています。ITのイメージがなかったこの地が、実はドローンの操縦に対する人々の意識が高いというのは驚きでしたし、弊社が事業展開をする基盤が既に備わっている魅力的な地域だと認識しました。弊社は、商品であるシステムAIを地元のドローン操縦者の方々に活用いただき、単なる動画の撮影にとどまらず、農地や山林の管理といった業務の幅を広げるツールとして利用してほしいと考えています。

東伊⾖町EAST DOCKの方に案内いただいた稲取細野高原の散策は、ツアーの中でも特に印象深い体験でした。新鮮な魚が豊富といった海のイメージが強かった東伊⾖町で、高原に広がるすすき野原の絶景を見ることができ、山側の魅力も堪能できるという新しい発見に出会えました。年に一度、山焼きが行われるようで、その光景をドローンで撮影して生配信したら面白いかもしれないといった話で盛り上がりました。また、将来的にすすきの出荷事業が検討されており、すすきの出荷時期の管理へのドローンの活用など、具体的なビジネスの視点から意見交換ができた点も良かったです。他にも、下⽥市で行われた交流会で、畑を荒らす獣害の管理にドローンを活用できないかといった提案を受けるなど、東京にいてはあまり触れることのない、地域ならではの課題を知り、ドローンとAI技術は、下⽥市東伊⾖町河津町でも需要があることを確認できました。ITの活用というと、首都圏や大手企業が連想されやすいですが、今回のツアーを通して、改めて地方でもその必要性は高まっており、弊社が協力できそうな領域が多くあるということを認識しました。地域に拠点を持つことで、こうした地元ならではのニーズをさらに発掘できると見込まれるため、サテライトオフィス開設のメリットは大きいと思います。地方への進出に力を入れたい企業は、オンラインでの商談というデジタルの手法にとどまらず、現地を自分の目で確かめるといったアナログ的な手法での拠点開設も検討してみてはいかがでしょうか。きっといろいろな新しい気づきがあるはずです。

サテライトオフィス検討中の企業の方へ

左:一般社団法人スポーツフォース 池田 タツ 氏 中央:株式会社NAVICUS 井内 麻由 氏 右:株式会社スカイマティクス 大路 幸宗 氏
左:一般社団法人スポーツフォース 池田 タツ 氏 中央:株式会社NAVICUS 井内 麻由 氏 右:株式会社スカイマティクス 大路 幸宗 氏

池田 氏:
 観光業に力を入れていることもあり、マリンスポーツや温泉、美しい景観に美味しい食事などを楽しめるエリアで、普段のオフィスワークとは違った環境下で仕事をしたい企業におすすめです。東京からの往来もしやすく、働きやすいワークプレイスもあるので、サテライトオフィス開設を検討している企業は、まずは旅行バックとPCをもって短期間でも滞在してみてください。きっとその土地の魅力に気づくはずです。

井内 氏:
 ツアー中は、どのエリアでも私たちを温かく受け入れてくださり、下⽥市東伊⾖町河津町は本当に人が魅力的なエリアです。移住された方々も首都圏にはない、ゆったりとした時間軸と、人情あふれる地域の方々と過ごせるこの地は、最高の場所だと目を輝かせていました。若い人や新しい取り組みに好意的な地域なので、新規事業を行う地としてもおすすめです。SNSでは紹介しきれていない魅力が現地にはまだまだありますので、ぜひ拠点の開設候補地の一つとして検討してみてください。

大路 氏:
 実際に現地に行き、その土地の人々と交流を深めることで得られる新しい発見が、今回のツアーを通して数多くありました。また、官民連携が積極的に行われており、人と人との信頼関係の上でビジネスが成り立っている地縁的な要素を色濃く持つエリアと感じます。だからこそ、現地にサテライトオフィスを開設し、その地域の仲間となり、同じ空気の中で仕事をする必要性を強く認識しました。下⽥市東伊⾖町河津町は自然豊かで食事も美味しい、最高な環境で仕事ができます。興味ある方はぜひ一度、現地に行ってみてください。