西伊豆町松崎町南伊豆町は伊豆半島の南西側に位置しています。一年中夕陽を鑑賞でき、日本の夕陽百選にも認定されている大田子海岸(おおたごかいがん)を有する夕陽のまち西伊豆町。東日本では珍しい石積みの棚田「石部の棚田(いしぶのたなだ)」や、全国でも希少となった「なまこ壁」の建造物など、昔ながらの美しい景観が残る松崎町。そして景勝地「石廊崎(いろうざき)」や、日本の渚百選「弓ヶ浜海岸(ゆみがはまかいがん)」などの美しい海岸線を有する南伊豆町。各々が風光明媚な地を有し、3町を含む伊豆半島はユネスコ世界ジオパークにも認定され、地域全体が壮大な自然に囲まれています。この秘境の地ならではの観光・アクティビティ体験のほか、古民家を利活用した施設でのワーク、地域の方々との交流会を通してビジネス・オフィス拠点の可能性を探りました。

今回ツアーで訪れたエリアにサテライトオフィス開設のメリットを感じますか?

南伊豆町役場が運営・管理している上賀茂・田舎暮らし体験住宅。昭和の初め頃弓ヶ浜地区から移築してきた築100年の古民家で、町の中心部(下賀茂地区)から近い上賀茂地区に位置する。
南伊豆町役場が運営・管理している上賀茂・田舎暮らし体験住宅。昭和の初め頃弓ヶ浜地区から移築してきた築100年の古民家で、町の中心部(下賀茂地区)から近い上賀茂地区に位置する。

辻氏:山と海の両方の魅力を感じることができるここ伊豆エリアの環境は、東京にいる私からすると、とても心ひかれます。「食育」を主な事業とする弊社にとって、これほど恵まれた環境は中々ありません。特に印象的なのが、松崎町で視察させていただいた美しい棚田の風景です。機械を使わずに昔ながらの方法で維持管理している棚田から見る日本の原風景は、とても魅力的でした。こういった地域資源を豊富に抱えながらも、それらを維持するだけの人手が、高齢化や若者の流出などで十分に確保出来ていないことが課題である、ということを松崎町役場の方から伺いました。だからこそ、弊社のような首都圏の企業がこのような地域資源をコンテンツ化して、田植え体験や稲刈り体験など、普段都心ではなかなかできないことを家族連れの方々や子供たちに提供し、地域の方々と協力しながら事業化できたら、それはとても有意義なことだと思います。子供たちと現地の食材を使った料理コンテストなどを開催して、弊社としても町おこしの一端を担えていけたら、とも考えております。

 また、最終日に訪れた南伊豆町の古民家「上賀茂・田舎暮らし体験住宅」も、水回りや台所が整備され、景観には昔ながらの趣があり、「これぞ求めていたもの」と感動しました。こちらの施設は南伊豆町役場で管理されていて、宿泊体験として2人で一泊5,000円というお手頃な価格で利用することができます。古民家を利用したサテライトオフィス開設のイメージを具体的につかむこともできるので、古民家サテライトオフィスをご検討中の企業様は実際に宿泊してみるのもおすすめです。

実際に現地に訪れたことで得られたものは?

松崎町にある民芸館で、静岡県賀茂農林事務所の職員、西伊豆町役場の職員、松崎町役場の職員と交流会をしている様子。
松崎町にある民芸館で、静岡県賀茂農林事務所の職員、西伊豆町役場の職員、松崎町役場の職員と交流会をしている様子。

江氏:今回のツアーを通して東京のオフィスにとどまっているだけでは決して実現しなかった、西伊豆町松崎町南伊豆町の地元の方々とのコネクションを得ることができました。このような繋がりを持つことができる点は、サテライトオフィスを開設する魅力の1つであると思います。弊社の主な事業は、台湾から日本へのインバウンドツアーの企画・運営、SNS運営です。実際のところ、東京や大阪といったいわゆるメジャーな観光地よりも、日本のローカルな一面を紹介するツアーの需要も高く、海・山・川といった自然が豊かで、半島といった少し閉ざされたエリアながらも、首都圏からのアクセスが可能といったここ伊豆半島は、弊社が今後地方への進出を検討する上でとても魅力的に映りました。

 特に印象的だったのは2日目の民芸館での交流会です。交流会には松崎町役場や、西伊豆町役場、静岡県賀茂農林事務所の方々に集まっていただけました。弊社のようによりローカルなツアー商品を提供していきたい会社としては、こういった地場のキーパーソンになり得る方々とのつながりは必須であり、このツアーを通していただいたお名刺の数々はとても大きな収穫となりました。外国人観光客に対して地元の人々はアレルギーがないかや、どういったアクティビティーが喜ばれるか、食事として何を提供するべきかなど、かなり深い意見交換をさせていただくことができました。西伊豆町役場の方からは「塩カツオ作り体験なんて面白いかもしれません」や、賀茂農林事務所の方からは「必要であればジオガイドを紹介しますよ」、松崎町役場の方からは「グリーンツーリズム協会の方を紹介しますよ」などなど、東京にいたら聞くことが出来なかったご提案をいただくことができて、やはり実際に現地に訪れて生の声を聞くことは大切だなと思いました。2泊3日のモニターツアーは、あっという間に終わってしまいましたが、弊社としてはこれが1つの始まりだと感じています。具体的なツアープランなどを組みましたら、今回つながりを持つことができた方々に改めて相談をさせていただけたらと思っています。

サテライトオフィス検討中の企業の方へ

左:株式会社OJP 辻 氏 右:Japan Farm-Stay株式会社 江 苓華 氏
左:株式会社OJP 辻 氏 右:Japan Farm-Stay株式会社 江 苓華 氏

辻氏:リモートワークやオンライン化が様々な分野で進み、ビジネスにおいて体を動かして何かをするといった行為が非効率にみられる場面も増えましたが、今回のサテライトオフィスツアーでは、実際に足を運んだからこそ得られた有益な情報と体感がたくさんありました。ネットに載っていない地域の人々の温かさや、自分の目で見る景観の素晴らしさなどを体験するために、サテライトオフィスの開設を検討している企業様は、まずは実際に現地を訪れることをお勧めします。

江氏:実際に現地に行ってみてすべてが分かるわけではありません。でも、行ってみたからこそ分かったことも沢山あります。サテライトオフィスを現地に開設して事業を拡大するためには、その地域の人の協力は絶対に必要です。だからこそ、現地に出向いて直接交流を持ち、お互いに信頼関係を築いていくという過程が必要だと思いますし、今回のツアーを通して様々な方とそういった時間を過ごすことができた経験は、弊社のこれからの発展に貴重な財産となります。まずは、とにかく第一歩を踏み出すことが大事だと思います。