理念経営と対話をベースに100年続く事業支援をめざし、静岡の人材や資源を活かしたビジネスを北欧型仕組みづくりのコンサルテーションでバックアップ!(フィーノ株式会社)

東京都渋谷区に本社を置き、北欧型仕組みづくりのコンサルテーションで企業を支え続けるフィーノ株式会社。2024年3月1日にサテライトオフィス「ワークシフトプレイス静岡」を駿東郡小山町に開設。地域の企業に密着し、人材採用支援や企業継続のためのアドバイザーとして事業展開をおこなっています。東京本社と小山町オフィスの二拠点生活をおくる代表取締役の鈴木孝枝さんに、地方進出のプロセスやサテライトオフィス開設の決め手について伺いました。
=会社概要==============
フィーノ株式会社
Webサイト:https://kg-m.jp/
2012年4月設立。人事戦略、コンサルティング・企業研修事業や北欧教育事業、第6次産業(農ビジネス)事業の実施及び支援、これらの3つの大きな事業を柱としています。
東京本社オフィス所在地:〒150-8512 東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー15階
小山町サテライトオフィス所在地:〒410-1304 静岡県駿東郡小山町藤曲54-4 六合山荘
=インタビュー対象者紹介========
鈴木 孝枝さん(フィーノ株式会社 代表取締役)
東京都新宿区生まれ新宿育ち。商社勤務経験後、社会福祉の本場である北欧デンマークへ留学。帰国後、戦略コンサルティング会社で人事戦略のリーダーとして企業人事を経験したのち、31歳で独立。デンマーク発祥の「※フォルケホイスコーレ制度」が対話と理論と実践を重視したことからヒントを得て、全国のなかでも類をみない北欧型人的資本経営・戦略コンサルとして、採用支援や経営者向けの経営継続のための人事戦略アドバイザリーをつとめている。
※フォルケホイスコーレとはデンマーク発祥の全寮制成人教育機関。試験がなく、資格も授与されないが、対話を重視し民主主義的思考を育てる場。その歴史は古く1844年に創設され、現在は約80校が存在。国の補助金によりリーズナブルに学べるのも特徴。
静岡県民の魅力は、可能性とおもいやり

――これまでの人材育成などの仕組みづくりにかかわった経験もふまえ、静岡県の人材にどのような魅力があると感じていますか?
静岡県の方と接してまず感じたことをひとことで例えると「とても親切」。淡々とクールな人間関係を必要とする東京では、お隣同士でも、あえて踏み込んだコミュニケーションをとることはあまりありません。一方、移住先である小山町は良い意味で、あれこれコンパクト。コミュニティもギュッとしていて、みんな顔も素性も知っている。新しい人にはもちろん難しさはあると思いますが、基本的に良い距離感を保てる稀有な社会だと思います。
また、静岡県の方は胆力があると感じています。富士山とともに歩んできたため、地震をふまえた危機管理能力への意識が高い。そういった意味での魅力としては、対外的に発信していくポテンシャルはとても高いと思います。想定外への心構えも段違いですし、日本における未来の危機管理分野でのリーダーシップ力は大きいのではないかと想像します。
進出の決め手は、つながりとやさしさ

――静岡県や小山町に進出を考えるに至った経緯やその決め手を教えてください。
決め手となった理由は2つです。静岡県での既存の教育事業の実績、そして小山町役場の職員のあたたかい対応でした。
実はコロナ禍になる前から静岡県にはご縁がありました。我が社が手掛ける北欧型教育事業を日本で初めて導入してくださった先進的な認定子ども園が牧之原市「認定子ども園みのり幼稚園」です。小山町進出よりさかのぼること5年以上前から、お仕事を通して静岡県とご縁があったことが、ひとつ目の理由です。
ふたつ目の理由は、小山町役場の職員のみなさんのウェルカム感や細かな対応がとても丁寧だったことです。友人が小山町農業振興課とつないでくれたのがきっかけでしたが、初日に役場に伺った際、東京在住の我々に、町営の農園を貸し出してくれるとのことで、その場で即決。スタートの第一歩を農振課のみなさんが背中を押してくれました。こんなにフレンドリーな役場の職員とそれまで出会ったことがなかったので、一気に小山町のことが好きになりました。
眠っている人材や恵まれた環境はまさに「宝の山」移住先ではじめた新事業の展開

――小山町のイメージやこの地で新事業をはじめようと思った理由を教えてください。
小山町に実際に訪れてみたら、まず建築家の隈研吾さんデザインの足柄駅の駅舎がとてもオシャレ。富士山の景観も美しく、さらに水道水が富士山のミネラルウォーターだなんて!と感動。風土になじんで快適に暮らせる様子を「水があう」という言葉で例えるように、小山町はまさに水があう居場所に思えました。
静岡県は、土地もあり気候も温暖。さらに小山町は中山間地で高地であり富士山からの湧水という農業に適した恵まれた環境があります。農業後継者不足を補い、耕作放棄地を再生し農ビジネスを展開することで新たな雇用も生まれます。さらに次世代への伝統・事業承継にもつながります。そんな構想が叶う環境が、静岡県には至るところにあります。静岡=宝の山。静岡の環境や小山町を見てそう感じました。
いざ静岡!事業所はなんと!?小山町長直々のおすすめ古民家築130年!

――入居された建物を選んだ理由と決め手を教えてください。
小山町に畑を借りた最初の頃、主に畑に従事していたのは夫ですが、約2年間、家族で小山町に拠点を持つべきかどうかをじっくり検討していました。
いよいよ一念発起し、町の公園管理運営をおこなう指定管理事業に応募し、同時並行で自宅兼事業所を探しました。しかし専門サービス業(人事戦略事業・人材紹介事業)をおこなうためには、労働局の有料職業紹介免許の取得要件や、さまざまな制約条件があり、それらを一気にクリアするような物件が見つからず途方に暮れてしまいました。
そんなとき、小山町長から役場の目の前にある「町所有の築130年の古民家が空いているがどうか」とすすめていただいたのです。そこはなんと、あの勝海舟が名前をつけた由緒ある古民家。そこで都会で見かけるスタイリッシュなのサテライトオフィスを構えるのではなく、小山町の歴史を感じるような「小山町らしい物件」としてこの古民家がぴったり、と思ったのです。役場の目の前という利便性も考えて決定しました。
古民家を改修しての事業スタートは、正直、築130年の古民家の修繕・改修、そして維持費は大変。借家だけれど、なんとか再生しようと自己投資も続けています。
移住して見えてきた、地元企業がかかえる課題

――小山町で事業展開するなかで、地元企業はどのような課題を抱えていると感じていますか?
ポテンシャルの高い企業がたくさん集まる小山町でも最も大変なのは人材確保だと思います。採用戦略のひとつに給与という要素があるわけですが、小山町にはいわゆる誰もが知る大企業がいくつも進出しています。そうなると、給与水準が高くなる傾向があり、福利厚生等の厚さから人は自然と集まりやすくなります。
一方、地元中小企業はファミリー経営をされているところが多く、人とのつながりを大事にするため、縁故(リファーラル)や、周辺地域の人材を採用する傾向があります。こちらはこれまでと同じ給与水準での採用方法が主になっていると思います。
「人が集まらないから仕方がない」、で終わるのではなく、来てくれるような施策を次々と打ち出していくことで、持続可能性が高まります。ひとつの提案として、地元の人材採用にこだわらず、広い視野で人材を探してみることも大事だと思っています。
これから地方進出を考えている企業へ、大事なのはキーパーソンにつながる紹介

――静岡県を働く環境、生活する場として一個人としてどう感じましたか?
まず静岡は都内から新幹線で約1時間もあれば行けるので、非常に交通の便がよいと感じています。これは、都市集中型でライフステージを描かずともキャリア継続できると思います。今は昔と違って、生活と働く場所の距離感をインターネットで縮めることができます。つまり地方在住であっても、さらにスマートシティ化が進み、仕事や生活に不便・不安を感じなければ、人口流出の歯止めは利くと思います。これは、女性や若者に限らず、社会人は静岡での生活拠点形成を選択肢に入れると思うのです。
では、どのような方たちが選択肢に入れるのか、というと、関東を例えると、セミリタイア組がひとつのターゲットと思います。もともと地方出身で東京へ進学、就職で上京し、そのまま住み続けている層としては40代~50代が多いです。その層や、これまで家庭重視でのライフスタイルがメインだった女性がセカンドライフを考えたときに、新しい環境にチャレンジしながら学べて、そのまま就職先も斡旋してもらえる仕組みがあれば、間違いなく移住者が増えると思います。これは参考にできる手厚いリスキリングの仕組みがデンマークにはあります。新しい職業を学びながらお給料がもらえる手厚いリスキリングの存在が、学びながら地元でつながりを増やし、新天地での就職先の不安も同時になくします。
デメリットを感じたことといえば、プライベートにおける「医療・教育の選択肢の少なさ」について。例えば、義務教育期間の学校の選択肢が少ないのは残念です。公立学校はあっても私立は少なく、フリースクールはごくわずか。二拠点生活をおくりながら子育てをしている私個人の意見ですが、教育留学(デュアルスクール)制度が静岡県にもあちこちあれば、より住みやすくなるのではないかと感じます。これには、移住先の柔軟性のある考え方や受け入れ態勢が大事であり、都会でなくても医療・教育支援が発達している地域は、自ずと都会からの流入が増えています。
【質問】サテライトオフィスで働く鈴木さんに聞きました!
Q.1 静岡に来て美味しいと感じた食べ物はなんですか?
A.水かけ菜のしゃぶしゃぶ、炭焼きハンバーグさわやか。
県内では小山町と御殿場でしかとれない水かけ菜(冬菜)は町の特産品で、早春にしか味わえないといわれている野菜です。最近は、栽培する農家さんは少なくなり、希少価値も上がっているとか。食べ方は、お茶漬けやしゃぶしゃぶにするとシャキシャキした歯ごたえでとても美味しいです。
Q2. これから行ってみたい静岡のスポットを教えてください
A.これから行ってみたい場所は、県内でも移住者、さらに外国からの移住者も多いといわれている、川根本町。それと、経営者が訪れそうなパワースポットへも行きたいです。
Q3. 休日の過ごしかたを教えてください
A. 子どもといっしょにソファーに座ってお茶を飲みつつ、ゆっくり会話するときがしあわせを感じます。それと、ポカっと時間が開いたときは、積読本の解消が多いですね。
サテライトオフィスしずおか情報発信ライター・本田秋江(ほんだあきえ)
何足ものわらじを履き、いろんな顔を持つ孝枝さん。経営者であり、一児の母であり、またクライアント先の企業と共に伴走しながら成長を見守る母親役でもある。
休耕地=静岡に眠る宝、開拓=可能性を引き出す、『食料』自給率ならぬ『職業』自給率を上げるために、都会から鍬(くわ)をかついでやってきた肝っ玉かぁちゃんの今後の取り組みに期待!