人材不足な業界こそサテライトオフィスを!より柔軟な働き方を実現する方法とは?
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「株式会社アースリンク」
1997年に有限会社アースリンク設立、1999年に株式会社アースリンクに組織変更。
企業の業務効率化をITで支援するためのBPM(ビジネスプロセスマネジメント)・新規開拓支援のインサイドセールス・IT技術支援のSES(システムエンジニアリングサービス)と3つの柱で事業を展開。顧客企業は業種を問わず、大手からベンチャーまで約500社の企業と取引をしている。
東京本社
【所在地】〒206-0025
東京都多摩市永山1-5 ベルブ永山5F
伊豆サテライトオフィス
【所在地】〒410-3301
静岡県伊豆市小土肥245
代表取締役社長 宮下 慶太(みやした けいた)さん
東京都出身。高校卒業後IT企業に技術者として就職。9年間の社会人生活の後、1997年に27歳で有限会社アースリンク(現株式会社アースリンク)を設立、代表取締役に就任。
当時はインターネット黎明期であり、簡単に海外の企業とつながる事ができるインターネットを体験した際に、今後これがITのインフラになると感じ、金融不況の時期ではあったものの、インターネットを用いたビジネスの創出を志向し起業を決意。会社設立後は、お客様から一つでも多くの「ありがとう」を頂けるようなサービスの提供を目指し事業を展開している。
自然豊かな環境に恵まれた伊豆市

まずは伊豆市について、伊豆市役所産業部観光商工課 酒井主査にお話を伺いました。
--伊豆市はどんなところですか?
伊豆市は伊豆半島の中央部に位置し、直線距離で東京から約100km、県庁所在地の静岡市からは約60キロほどの場所にあります。
駿河湾(するがわん)や天城山(あまぎさん)、狩野川(かのがわ)などの自然豊かな環境に恵まれた地域で、伊豆市の特産品にはワサビや天草、椎茸などがあります。
主な産業は観光業で、市内には修善寺温泉(しゅぜんじおんせん)・天城湯ヶ島温泉(あまぎゆがしまおんせん)・土肥温泉(といおんせん)等があり、宿泊先として毎年多くの観光客の方に利用していただいています。

--現在、伊豆市が抱えている課題について教えてください。
人口減少や高齢化が大きな課題となっています。
また、伊豆市の主な産業は観光であり、それに関わる宿泊業、小売業、飲食業などは、コロナ禍の影響を大きく受けており、コロナ終息後を見据えた対策も喫緊の課題となっています。
--企業誘致や企業支援で取り組んでいることはありますか?
平成30年に、廃園となった幼稚園を改修して伊豆市サテライトオフィスとして整備しました。4つの事務室を設けており、教育や鉄道関連の企業3社が入居しています。現在も入居企業を募集中です。
【伊豆市サテライトオフィスのページはこちら】
自然豊かで、都心からのアクセスが良い伊豆市にサテライトオフィスを開設

次に、伊豆市にサテライトオフィスを設置した、株式会社アースリンク代表取締役 宮下慶太さんにお話を伺います。
--伊豆市にサテライトオフィスを開設したきっかけを教えてください。
7年ほど前に、経営者の友人から伊豆市が企業誘致をしていることを聞いたのがきっかけです。その友人は、既に静岡県内にサテライトオフィスを開設していて、私もサテライトオフィスに興味があったので、伊豆市に話を聞きに行きました。
--サテライトオフィスを開設したいと考えた理由は何ですか?
1つ目は、従業員がリフレッシュできる場所で仕事をすることにより生産性を上げることです。
東京から移住してサテライトオフィスで仕事をするというよりは、もう少し気軽にオフィスの会議室を予約するような感覚で、事前に申請さえすれば社員が好きな時に行けるような利用を想定していました。
2つ目は、PCとインターネット環境があればどこでも仕事ができるという実証実験の場を作りたかったということです。
弊社は、お客様にクラウドサービスを提案・販売しています。弊社がお客様に対して投げかける売り言葉のひとつに「PCとインターネット環境さえあればどこでも仕事をすることができる」というフレーズがあります。しかし「本当にそんなことができるのか」というご指摘をいただくことがありました。
そのため「まずは自分たちが実証実験の場としてサテライトオフィスを活用し、証明しよう」と考えたのが一番の理由です。

--伊豆市にサテライトオフィスを開設しようとした理由は何ですか?
サテライトオフィスを開設する場所を探して、北海道や徳島県などにも足を運びました。それぞれに良さがありましたが、なかなか自分のイメージとは合わない部分がありました。
個人的には、釣りが趣味なこともあり、海の近くが良いと思っていましたが、本社がある東京都多摩市からのアクセスが悪くなってしまうと、従業員に利用してもらえないということも考えられました。
その中で、海が近く、東京から車で1時間半で行ける伊豆市はサテライトオフィスを開設に理想的な場所でした。
--伊豆市の魅力について教えて下さい。
人が少なく、都会の喧騒から離れられることで得られるリラックス効果が大きい点です。
サテライトオフィスの目の前には海水浴が可能な海が広がっていますが、方々から人が集まるほど大きな場所ではないため、夏場でも混雑なく楽しんでいます。
また、毎年社内で企画する釣りイベントはとても盛り上がります。伊豆市は美しい山・川・海に囲まれており、リフレッシュに最適な環境だと肌で感じています。
伊豆市の全面協力のもと、理想のサテライトオフィスを探した

--サテライトオフィスの場所はどのように探しましたか?
サテライトオフィスの場所は、伊豆市の担当者に希望する条件を伝え、いくつかの物件を紹介いただきました。私は海釣りが趣味で、社員と一緒に釣りのイベントを企画したいと考えていたこともあって、川より海に近い立地を希望していました。
伊豆市の方々にはご苦労をかけた部分があったかもしれませんが、いくつかの候補をあげていただいて最終的には現地を見て決定しました。
--行政の支援制度は活用しましたか?
伊豆市の支援制度で、市が空き家を改修し、さらに1年間の家賃補助を受けられる事業があり、そちらを利用させていただきました。古民家の空き家をリフォームしていただき、サテライトオフィスとして使わせていただいています。
思いがけなかった「人材採用」という大きなメリット

--サテライトオフィスを開設したメリットはありましたか?
サテライトオフィスを開設したことで、新たに2名の人材を採用できたことは非常に大きかったですね。
サテライトオフィスの開設が決まったタイミングで、地元の方々へのご挨拶をかねてバーベキュー大会を企画したのですが、参加者の中に「サテライトオフィスで働きたい」と言ってくれた方がいたんです。
当初は、サテライトオフィスに社員を常駐させる予定はなかったのですが、弊社としても非常にうれしいお話だったので採用することを決めました。
そのほかにも、静岡県内に住むIT企業に勤務経験のある方が、ハローワークの求人情報を見て応募してくれました。
サテライトオフィスを開設するときには考えていなかったのですが、2名の正社員の採用につながったことは大きなメリットとなりました。
--サテライトオフィス開設が地方の優秀な人材の確保につながったんですね。サテライトオフィスで仕事をする上で工夫されていることはありますか?
サテライトオフィス内に、スクリーンとプロジェクターを2台ずつ置いて、Zoomで本社と常につないでいます。
いわば、東京の本社の延長線上に伊豆市のサテライトオフィスがあるような演出をしたのです。
お互い仕事をしている様子が見えないと、うまくコミュニケーションが取れない場面も多いと思います。しかし、常に本社とサテライトオフィスをつないだ状態にしておくことで、人が動く様子も見えますし、同じプロジェクトの人がいればスクリーンに向かって話しかければ直接会話もできます。朝礼なども一緒に行うことができるので、サテライトオフィスに一人だとしても寂しさを感じることはありません。
このように、たとえオフィスが離れていようとも、一緒に働いているような環境を整えることができるとわかりました。
この経験があったからこそ、新型コロナウイルスの影響で全社的にリモートワークに切り替わったときも、慌てることなくスムーズに移行できたのだと思います。

--その他にサテライトオフィスを活用して実施していることはありますか?
社員のサテライトオフィス利用促進という側面もありますが、サテライトオフィスにエンジニアを集めて“ハッカソン”などのイベントを開催しました。
ハッカソンとは、ITエンジニアなどが集まってチームを組み、特定のテーマに対してアイデアを出し合うイベントです。限られた時間のなかでサービスを開発し、その成果を競い合います。
社員同士のコミュニケーションの場としても、サテライトオフィスを活用しており、今後もこのようなイベントを実施できればと考えています。
サテライトオフィスを中心に、採用の拠点を増やす選択肢もあり!
--最後に、サテライトオフィス設置を検討している企業へのメッセージをお願いします。
サテライトオフィスの開設を検討されている経営者の方はとても多いと思います。
立地場所の選定には、目的を定めて、その目的を達成するための条件から選定する方法もあるでしょう。
その一方で、私はもう少し気軽に考えてもいいのではないかと思います。
コロナ禍で、特にIT業界はテレワークが当たり前になりました。
今後のことはわかりませんが、コロナが収束したとしても、以前のような働き方に戻ることはないと考えています。
社内でアンケートを実施したのですが、7割超が通勤に大きなストレスを抱えており、私が思っている以上に多いことがわかりました。
以前のように、一箇所に本社を構える必要もなくなってきていますよね。いくつかサテライトオフィスのような拠点をつくって、好きな場所で働くという形で会社を運営することも十分可能となりました。
IT業界をはじめ、これから人手不足になるような業界は日本全国から働き手を探す必要があります。サテライトオフィスを中心に「採用の拠点を増やす」という選択肢もあるのではないでしょうか。
《ライター・小町ヒロキ》